隠れてていいよ

主にアニメや漫画の感想を書いています

true tears BDBOX発売 乃絵派の視点から、もう一度この作品を考える

ついに、true tears Blu-ray Boxが届きました。予約開始前からこのブログでは何度か取り上げていましたが、予約したと公言したのはずっとずっと後だったように思えます。表立って、予約したよ!と言えませんでした。なぜかというと、このtrue tearsという作品を好きだけど納得していなかったからです。感情に訴えた記事はたくさん書きました。まとめはこちらです
本放送時から随分時間も立ち、乃絵しか見えないという当時の考えは捨てられたかと思いましたが、やはりそれは無理でした。BD発売までに6話まで再視聴していましたが、何度見返してもストーリー展開に納得がいかなかった。作品としてはとても面白いはずなのに、どうしても納得がいかなかったんです。
BDBOXが届き、1話から最終話の特別版まで再び見ました。思うことが沢山あって、まとまりきらない部分もあるかと思いますが、BDBOXを買われた方やそれ以外の方にも是非読んでもらいたい、そして色々と考えてもらいたいです。なお、画質や音質などについては、ほとんどと言っていいほど書いていないのでそういった事に興味がある方は別の方の記事を読んでいただいた方が良いと思います。
事前のお断りとしましてですが、私はドラマCDを購入しておりません。またDVDも購入しておりません。true tearsに関するネットのインタビュー記事は概ね読んでいるつもりですが、見逃しているものがあるかもしれません。ネットのtrue tearsに関する記事はあまり読んでいません。同じく、2chの本スレなどもほとんど見ていません。また、重度の乃絵派です。
BDBOX特典映像については見ていません。本編と付属の冊子のみの視聴となります。

BDBOXが届いて

BOX絵は事前に公開されていましたが、届いてみてやはり違和感を感じました。何度か以前の記事でも書きましたが、私は放送終了後に公開される、乃絵の笑顔に非常に違和感を持ってしまいます。そのあたりの感情については、「true tears Blu-ray BOX予約スタート 乃絵派はどうする?」を参考にしてもらえると助かります。
BOX絵は、乃絵・比呂美・愛ちゃんの3人がいるのですがみんな笑顔なんですよね。BOX絵がどういう基準で選ばれるか、作られるかは分かりませんが、何かが違う。おそらくですが、全員笑顔なのが原因なのかと思います。
次に、ディスクです。3巻構成となっておりまして、Disc1は1話から5話、Disc2は6話から10話、11話から13話となっておりまして、それぞれパッケ絵は比呂美、愛ちゃん、乃絵となっております。お気づきの方もおられると思いますが、Disc3のパッケ絵が乃絵であることに悪意を感じます。なぜか。それは、Disc2に収録されている最終話が10話だからです。10話とはなんだったか。それは眞一郎が海岸線を自転車で、一人暮らしを始めようとする比呂美を追いかけるシーンが含まれるお話です。物語としては最高の盛り上がりを見せるシーンですが、私にとっては苦痛しか生まない、胸が張り裂けそうなお話です。そんなお話があった後に、続きを見ようとDisk3のパッケを取り出すとそこには笑顔の乃絵が。書き忘れていましたが、各巻のパッケ絵のキャラクターが一番最初に「テレビを観るときは〜」の下りをしゃべってくれます。なので、今度は再生を始めると乃絵の明るい声が聞こえてきます。10話を終わった時点では少なくともそんなテンションでは、思いではないのに。
このパッケ絵の順番には、殺意を感じざるを得ません。どういう意図をもってこの構成にしたんでしょうか。やはり乃絵は重要なキャラだから1〜3巻の中だったら3巻にしよう、という安易な考えだったんでしょうか。それでは安易すぎます。しかし、安易な理由でないなら、少なくとも上で書いたような事は起こりえないはず…。

再々視聴1〜6話

37型フルハイビジョンがなせる技なのか、PS3が素晴らしいのか、はたまた本放送時の視聴環境が悪かったのか、今まで以上に素晴らしく感じるシーンが多かったように思えました。特に、光が絡むシーン。後ろから光があたり反射するようなシーンは総じて良かったかと思います。
1話から6話までは再々視聴だったので、さらに思うことが出てくるのかどうか分からなかったのですが、実際見始めると思いが沸いてきました。
まず、乃絵はやっぱりかわいいなぁと。本放送時の、初めてこの作品に触れた時の事を思い出しました。期間を開けての3度目以上の視聴は、再び原点に帰らせてくれるのかも、と思いました。
次に、海岸線でのシーンはとても重要なシーンが多く心に残るものが多いということ。今更?と怒られそうですが、意識すると少し作品を面白く見れるかもしれません。
最後に、5話は神回だと思います。神回、という言葉を使うと安っぽく感じるかもしれませんが、ストーリー展開が非常に激しく、心を動かされます。乃絵、眞一郎、比呂美は勿論のこと、愛ちゃんと三代吉、眞一郎の家族、4番と乃絵…と作品を構成する上で重要なシーンがずーっと続きます。

再視聴7話〜最終話

7話から最終話は、私にとってはイライラと感動が入り混じる部分です。この作品になぜ納得出来ないかは、この7話から最終話の間に原因がたくさんあるのかなと、再視聴を終えて思います。制作側の意図にまんまとハマっている事は分かっているのですが、比呂美の「眞一郎くんを手に入れるためならば何だってするわ」という思い、そしてその思いをそのまま具現化したかのような描写。おそらくこれに尽きると思います。
BOX収録の冊子には、各ヒロインのインタビューが載っているのですが、乃絵役の高垣彩陽さんの部分から少しだけ引用させていただきますと、乃絵は「観れば観るほど気高く、美しく、素敵で愛しい存在」。キャラクター原案の上田夢人さんのインタビューから少し引用させていただきますと、比呂美は「乃絵とは対照的に、現実的で、いわゆるアニメ的ではない、人間の感情をしっかりと持ったキャラクター」。このお二方のそれぞれのキャラクターへの思いは、かなり分かりやすいのではないかと私は思います。特に後者、比呂美について。「いわゆるアニメ的ではない」という表現は非常に分かりやすい。これだけが理由ではないと思うのですが、比呂美に対してあまり好きではない、嫌いといった感情を持つ方は、この「アニメ的ではない」部分にイラっと来てるのではないかと。批判を承知でいうと、現実のような女の子のような感じ。悪意をそのまま他人に向けることができる比呂美。眞一郎のためなら、眞一郎を自分だけのものにするためなら、何でもしてしまう女の子。私は何度見返しても、むしろ見返せば見返すほどこの比呂美の黒さについていくことが出来ませんでした。じゃあ、ついていくなよっていわれそうですが、物語が比呂美中心に進んで行くんだから無視はできません。

比呂美の涙は不真実の涙

この物語の重要な要素として「涙」が挙げられます。特に、乃絵は「涙が流せない」ことがずっと提示されていました。乃絵はいつ涙を流せるんだろう、というのもこのアニメを見ていく上で考えていかなければならないものでした。乃絵の涙が流されたのは、最終回。眞一郎と別れ、そして春になり、雷轟丸の墓の前で、告白されたときに眞一郎に書いてもらった石文字「のえがすきだ」が無残にもメチャクチャになっているのを見た時でした。
あえて対照的に書いているのだとは分かっているのですが、比呂美の涙は随所で流されます。まさに女の武器、のような使われ方をするシーンもあります。泣いてばかり、という印象が比呂美にあります。true tears、真実の涙というタイトルを冠しているのにも関わらずそこら中で涙を流す比呂美。比呂美は乃絵とは違う、という事は分かっていても、比呂美以外のキャラクターの涙の描かれ方と比べると安っぽく感じました。もちろん、比呂美が涙を流すシーンでも良いシーンはあるのですが、普段から涙を流しているので感情移入しづらいのです。
眞一郎のお父さんは、心が震えた時に泣くんですって、比呂美さん。

4番の意図

再視聴時も何度か書きましたが、もう一度整理を。
4番は乃絵の事が好きで、それは兄弟以上の恋愛感情を持ってしまうほどでした。しかし、その感情が良くないものであるということも自身が一番分かっていたようです。乃絵と距離をおかなければならない。そう思って取った行動の一つが、いわゆる「交換条件」でした。
再視聴時(BD到着前)私は、4番は乃絵を他の誰にも渡したくないから敢えて眞一郎にけしかけるようなことをして、比呂美へ意識を向けさせるようにした、という結論を出しましたが間違っていました。4番は乃絵のことだけを思い、乃絵のことだけを思うからこそ比呂美と付き合い続けることで、乃絵と眞一郎の仲を取り持とうとした。それこそ、比呂美から何度も別れようと言い出されても毎度毎度ごまかすほどに。自分が別れてしまっては、眞一郎が乃絵と別れてしまう。そうすれば乃絵はまた自分と接する時間が多くなってしまう。
なんというジレンマ、なんという4番の愛。私は本放送時、また再視聴時も4番は好きになれなかったのですが、今は4番の愛に感動しています。4番はとても素敵だったと私は思います。ケリのつけ方も綺麗だったと思います。

愛ちゃんと三代吉の恋

本放送時、この二人はいらない子たち、本編には関わらない残念な子たち、といった位置づけがなされることが多かったような気がしますが、もう一度最初から最後まで見返してみると、この二人の恋が見ていて一番楽しかったのかもしれません。
私も最初は、この二人の恋の行方をわざわざ描くのは蛇足なんじゃないだろうか、と考えていました。しかし、この二人が描かれたからこそ、眞一郎・比呂美・乃絵の3人の恋の行方が映えたのかなと今では思います。二人の恋は見ていて安心できる、心温まるものがありました。

BDBOX付属冊子について

この冊子には、インタビューとして

  • 西村純二監督と永谷敬行プロデューサー対談インタビュー
  • 岡田麿里シリーズ構成へのインタビュー
  • 関口可奈味キャラクターデザインへのインタビュー
  • 上田夢人キャラクター原案へのインタビュー
  • eufonius(オープニングテーマ)へのインタビュー
  • 菊池宣広(P.A.WORKS専務)へのインタビュー
  • 各ヒロインの声優さんへのインタビュー

が掲載されています。
私が一番好感を持てたインタビューは、上田夢人さんへのインタビュー、次点で各ヒロインの声優さんへのインタビューです。なぜか。それは質問内容です。
個人的に最も知りたいのは、製作者側が各キャラクターにどのような気持ちを抱いていたのか、どのくらい興味があったのか、どのあたりに魅力を感じていたのか、といったものでした。演出が云々も確かに面白いのですが、もっと細かい部分、なぜそのキャラクターがそういった言動をとるに至ったのか(なぜこのストーリー展開になったのか)にとても興味があります。
上田夢人さんへのインタビューでは質問項目に、石動乃絵・湯浅比呂美・安藤愛子・仲上眞一郎・野伏三代吉の「魅力的だと思う部分を教えてください」というものがあります。キャラクター原案にこの質問項目があって、なぜシリーズ構成にこの質問がないのか。はっきりいいまして、監督・プロデューサー・シリーズ構成etcの生い立ちの話を聞いても楽しくないです。
今回のインタビューは、「true tearsへ至る道〜The Way To tru tears〜」と題するだけあって、各人物の生い立ちについて触れている部分が多かったように思えます。つまり、過去でこういった作品に関わったおかげで本作品ではこんな事ができましたといったものです。
先程も書きましたが、確かにそれも楽しいです。しかし、私はもっと作品の奥深く、特にキャラクターについてもっと掘り下げて書かれているものだと思っていたので、今回の冊子に関しては不満でした。

幼なじみフラグの強大さ

これは本放送時の感想で何度か書いていますが、幼なじみフラグは強大です。作中で乃絵も言っていますが、乃絵は眞一郎の事を何も知らないんです。だから知りたい、と眞一郎に言うシーンがあります。では眞一郎と比呂美はどうでしょうか。忘れるわけないじゃない、と比呂美が言う小さい頃のお祭りの事。また、ひとつ屋根の下で暮らしていた事実。それに加えて比呂美の眞一郎への思い。これだけ揃っているヒロインに勝てる女の子なんてそうそういやしない。主人公がヘタレで無い限り。

眞一郎の優柔不断さ

今作をややこしくしているのが眞一郎の優柔不断さ。本編では自身もそれに気づき「おぎゃーおぎゃー」言っておるのですが、ここまで話がややこしくなったのは間違いなく眞一郎のせい。このアニメで一番納得が行かない、嫌いなキャラクターは比呂美なのですが、次点で眞一郎です。散々振り回して振り回して傷つけて。乃絵は、自分のせいで周りを傷つけてしまうと嘆くのですが、それは眞一郎、お前だ。

製作者側の思惑にまんまとハマっている

本放送時も、再視聴時も、そして今回も。こういった感想を書く次点でもう製作者側の思惑にまんまとハマってしまっていることは自覚しています。製作者側が作ったキャラクターなのですから。しかし、それを承知で言わせてもらうと、やはり私はこのBDBOXを買うべきでは無かったかもしれません。DVDを買わなかったように、ストーリー展開に納得出来なかったものを果たして買う必要があったのか。
確かに、こういった感想を書くことが出来ますし、作品への理解をより深めることが出来ます。しかし、何万回見ても私は比呂美の事を理解できる気がしません。そんなアニメを永久保存したいという気持ちは一体なんなのでしょうか。それは、間違いなく良い作品だと自分が認めているからだと思います。
過去の記事でも何度も書きましたが、「ストーリーの展開に納得が行かない=良作でない」ではないんですよね。true tearsという作品は間違いなく良作です。

まとめ

心が震えたときに、眞一郎のお父さんは涙を流すのだそうです。私は、true tearsを見てゾクゾクもしましたし感動もしましたが、何故か涙が流れませんでした。