隠れてていいよ

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アニメも始まる「もしドラ」を、今更ながら読んで感じたこと

概要

今更ですが、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」、通称「もしドラ」を読み終えました。本作が爆発的にヒットしたのは、昨年であったと記憶しています。アニメ化も決定し、NHKで今月25日から放送開始です(詳しくは、公式サイトへ)。


もしドラのイメージは、読む前と後では随分と変わりました。もしドラは当初、マネジメントに重きを置いた本だと思っていました。もちろん間違ってはいないのですが、読み終わったときの私の第一声は「ラノベっぽい」でした。もし書評を書くならば、経営論云々ではなく、ラノベっぽさについて沢山書きたい!と強く思ったほどでした。
自分以外がどう思っているか気になったので、書評を幾つかネットで検索しましたが「ライトノベルっぽさ」をメインに展開する記事と、「ドラッカー論」をメインに展開する記事に二分されているように思いました。


本記事では、なぜ私が「ライトノベルっぽい」と思ったのか、その考察を書きたいと思います。本記事の大まかな流れは、以下のようになっています。

  • もしドラライトノベルっぽく感じた。
  • 私の中で、ライトノベルっぽさとはサックリ読めることである。
  • ドラッカーという難しいテーマを扱っているのに、なぜかサックリ読めた。
  • 実はドラッカーをそんなに意識せず読めたからではないだろうか?
  • 意識しなかったからこそ、もしドラの青春ストーリーの部分が強く頭に残ったのではないか?


なお、本記事ではネタばれは極力避けていますので、未読の方でも読んでいただいて大丈夫だと思います。ですが、情報を完全にシャットアウトしたい方は、自己責任でお願い致します。

例えばラノベと比較して

ライトノベルっぽい、という表現が曖昧なので私の考えを書いておきます。

ライトノベルの明確な定義は無いのでしょうが、ライトとついているので、おそらく「軽い」のでしょう。私個人としては、内容が重い軽いというよりは、サックリ短時間で流れるように読める手軽さがライトノベルだと思っています



さて、もしドラはどうだったか。実にサックリ・流れるように読めました。時間にすると約2時間弱だったと思います。ちなみにライトノベルは、いつも1時間から1時間半で読みます。もしドラを読み終えて一番最初に思ったことは、「これ、すっごくライトノベルっぽい」ということでした。ドラッカーについて書いてあるのに、ライトノベルっぽい? 一見、矛盾しているように思えます。

なぜサックリ読めたのか?

なぜサックリ読めたのか考えていました。マネジメントなんていう、小難しい論が展開されているのに、どうして? と。例えば「真摯さとは何か?」と本文で問いかけられたら、思考がそちらへ流れませんか?

また、主人公の口調やト書きの文章が一癖あります。ドラッカーにハマり、考え方がドラッカーになったやつが最初に陥るであろう、あの思考法が繰り広げられるのです。
例えば、適当に開いたページから引用してみましょう。


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら,pp.37

野球部は、そもそも営利団体ではない。取引相手や、お客さんがいるわけではない。もちろん、試合をすればお客さんは見に来るが、自分たちが彼らからお金をもらっているわけではない。お金をもらわないことが、高校球児の大前提だったりするくらいだ。


こんな感じの文章が、そこらかしこにあるわけです。ライトノベルというよりは、経営書や自己啓発本のような内容に近いでしょう。

ドラッカーに抵抗がなかった?

仮説として思いついたのは、自分がドラッカーについてそれほど抵抗がなかったのではないか? ということです。
私は経営書を読むのが特別好きだというわけではありませんが、ドラッカーについては数冊読んでいます。ドラッカーの本の内容は非常に濃く、印象に残ります。もしドラの中で、ドラッカーの著書『マネジメント』が引用されると「あれ? この内容、ドラッカーの別の著書で見たことがあるぞ!」と思うくらいには印象に残っていました。

つまり、今まで一度もドラッカーに触れたことがない人と比べて、考えこまずに読み進められたのではないかと思ったのです。


ドラッカーに頭を使わないとしたら、どこに使うのか。それは青春ストーリーでしょう。青春ストーリーありきで、そこにドラッカーが付属しているイメージです。極端ですが、作者はドラッカーをだしに使い王道的な展開を味付けしているのではないか? と勘ぐってしまう程度には青春ストーリーを意識していました。穿った見方だとは理解していますが…。

なぜドラッカーの書評には経営論が絡んでくるのか?

以上の点を踏まえると、私の感想は以下のようになります。


とある女子高生が、友人のために野球部のマネージャーになり、部の問題を解決し、甲子園を目指す。時には辛いことがあるものの、それを乗り越えて、最終的には準ハッピーエンド。実に分かりやすく、王道的な展開。サックリ読めるのでオススメである。

サックリ読めるとは書いたが、本書はドラッカーの経営論が絡んでくるので、その点は注意されたい。主人公の語りやト書きは、一癖あると言わざるをえない。そのせいもあり、本書は少々小難しい印象を受けるようだ。しかし、経営書を普段から読む人や、ドラッカーの著書に一度でも目を通したことがある人ならば、特に意識せず読み進めることができるだろう。
では、ドラッカーに馴染みのない人はどうすれば良いのか? 安心してもらいたい。ドラッカーの良い入門書となるだろう。というのも、ストーリーの進行と共に、主人公達がドラッカーの経営論を理解しようとするので、一緒になって考えれば、間違い無く理解が深まる。ただ、もしドラを読んだだけでドラッカーを語れるようになるかと言われるとそうではない。あくまで入門書の役割であることを忘れないように。


世間では「ドラッカーに興味のない方にもオススメです!」という書評をよく見かける。間違いではないが、「ドラッカーに詳しい人にもオススメです!」と宣伝する人が増えても良いのではないだろうか、と読了して思う。

読んで損はないので、是非、手にとってみては如何だろうか。

最後に

もしドラは、実にライトノベルっぽい、素晴らしい作品だと私は思います。サクっと読めるので、立ち読み歓迎の大型本屋に行って、サクっと読むのもありかもしれません。アニメの予習にもなりますしね。

また、もしドラに小難しい印象を持っていて今まで読んでいなかった方も、ライトノベルな楽しみ方ができること請け合いですので、是非、読んでみてはいかがでしょうか。損はないと思います。