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アニメ『神のみぞ知るセカイ』の間延び感を少し考える

神のみぞ知るセカイ 1 (少年サンデーコミックス)

神のみぞ知るセカイ、原作が面白くなってきました。時間があるときにコミックも読み返しているのですがこれまた面白い。
神のみはアニメ→原作と入ったのですが、「面白そう!」という直感に狂いはありませんでした。
アニメから神のみを知った方、原作オススメですよ。今まで読まなかったことを後悔するほど激ハマリするかもしれません。私がそうでした。

関連:「神のみぞ知るセカイ」圧倒的じゃないか我がハクアは:ヤマカム




さてさて神のみは現在2期(厳密には分割2クールの2クール目)が放送されていますが、原作消化スピードが遅いように感じます。
2期の9話(1期から合わせると21話)時点で原作4巻を消費するスピードで、攻略ヒロインから考えるとおそらく原作5巻まで消化する計算です。9話から11話を長瀬先生編に使い、12話は1期と同じく1話もののネタ回をするのでしょう。
ちなみに、原作を忠実に再現したアニメ「史上最強の弟子ケンイチ」は4クールで16巻を消化しました。時間の関係で他アニメを調べる余裕がないですが、だれか以下の記事の漫画版を作ってくれないかしら。



「原作消化スピードが遅い=アニメが間延びしている」とは限りませんが、神のみに関しては「展開が間延びしているなぁ」と感じることがよくあります。Twitterのタイムラインや感想記事を見ていると神のみに対して「もっとサクサクやってほしい」という意見がありますが、毎回ではないものの、私もそう思います。

間延び感に関しては無印(1期)から感じていたことで、特に1期のかのん編劇中歌商法については苦言を呈していました。端的に言うと、3話も使う必要あったの? という話。

関連:


ただし間延び感を覚えつつも1話1話のクオリティは決して低いわけではなく(むしろ高い)、なんだかんだ言って楽しんで見ています。良くも悪くも原作を忠実に再現していると思います。
「面白かったんだけど、もう少しサクサク進んだほうが見やすかったね!」が1期の感想で、2期も同様のスタンスで見ています。


しかし楽しんで見ているからこそ、間延び感について原因を探りたいと思っていました。
単純には3話構成だからとか、尺を取る演出が多いからとかなんですが、それは表面上の理由かなと思います。なぜ3話構成になったのかや、なぜ尺を取る演出がされたのかを考える必要があると思います。


本論に入る前に一言。「間延び感」を考えるにあたっては、原作と比較して考える必要がありました。神のみに関わらず、原作と比較する行為はあまり固執しすぎると純粋にアニメを楽しめなくなるおそれがあります。「できる限りアニメと原作は分けて考えて評価するべきだ」と言う話も聞きます。
ただしそうはいっても、「原作は原作、アニメはアニメ」と完全に割り切ることは私にはできません。
難しい問題ではありますが現段階では、「原作比較することに問題はないけれど、固執しすぎてはいけない」と考えています。そんなスタンスで、本記事では原作比較をしています。


前説が長くなりまして申し訳ありません。以下、本論です。

結論

  • アニメ『神のみぞ知るセカイ』は間延びを感じることがある。
  • 間延び感とはつまりテンポが悪いということであり、1クールでの間延び感は致命的。
  • 間延び構成の原因は、原作者の若木さん・制作者側が、原作『神のみぞ知るセカイ』の世界観や作品性に重点を置きすぎたことだと推測している。

間延びしているように感じますか?

原作者の若木民喜さんが、今年の3月にツイッターでこんなことを呟かれていました。


このつぶやきは当時、思わず公式RTしてしまいました。これに関しては以下の@rikio0505さんのつぶやきが、まさに私の思うところでした。


丁寧に作られていることは確かに分かるのですが、テンポが犠牲になっているように感じることが多々ありました。
なぜ間延びを感じるのか。もちろん原因は「展開が遅い(または、遅く感じる)」ことですが、展開が遅く感じた理由はアニメ的演出に重きが置かれたからだと思います。

「アニメ的演出」

「アニメ的演出」とは具体的には、1期かのん編における「歌」、栞編における「曲と心情のコラボ」などを指しています。例えば漫画では音を出すことができないので音楽を表現することには限界がありますが、アニメでは逆に「音楽」に重点を置くことが可能です。


演出に重きを置いたおかげで、ヒロインの心情や神のみの表現したいことが確かに伝わってきました。だけど、テンポが犠牲になりました。
この点については、原作者の若木さんは自身のブログでこう仰っています。

かのん編は大量の歌と動き、一方、栞編は時間を思いっきり引き延ばして音楽と演出で栞の心を延々と丁寧に追いかけていく・・・尺が長くなったことで原作よりもソリッドさはやや減退したけど、大切なことは、ヒロイン達がストーリー的にもキャラ的にも救われることであって、女の子たちはそれぞれの自分の魅力で自立できたと思う。かのんのラストの歌なんてアニメでしかできない力。

:: 神のみぞ知るセカイ | HoneyDipped :: - 12/21:FLAG124「Loverary」


繰り返しになりますが、「神のみという作品をアニメとして表現するならば?」に重点を置いたことで、原作神のみは昇華されました。しかし、ソリッドさはやや減退し ました。

原作を最大限尊重しすぎた

つまりアニメ『神のみ』に間延び感を感じる原因は、「原作『神のみぞ知るセカイ』の世界観や作品性を尊重した結果、テンポが犠牲になったから」だと思います。言い方を変えると、「アニメという媒体の中で『どうやれば原作の神のみを昇華させられるか』に重点を置き過ぎて、その結果テンポが犠牲になった」ということです。
だから、1話1話のクオリティがとても高くてもアニメ全体として見ると間延び感を感じた、ということです。

何が原因で、尺を取る演出が押されたのか

間延び展開は誰の、何の影響が強かったのかのでしょうか。Twitterでつぶやきながら考えていると、@rikio0505さんからこんなリプライをいただきました。


私は直接オトナアニメを見ていないので文脈が分かりませんが、少なくとも原作者の若木さんがそれなりにアニメに関わっていたことが伺えます。

遡って2010年12月21日の作者のブログで以下のような内容があります。

特に、序盤においての尺の問題はすごくあって。アニメ2話構成だと少しはみ出し、3話構成だとかなり余る、という序盤の原作の攻略の中途半端な長さ。普通なら切って2話構成にするところだけど、倉田さんは3話構成にしてきた。最初の打ち合わせで「何とかハクアを出せないかなぁ・・・」と言うプロデューサー松田さんの希望ははかなく消えた。

:: 神のみぞ知るセカイ | HoneyDipped :: - 12/21:FLAG124「Loverary」


当初は、プロデューサーはできる限り早い展開、シリーズ構成の倉田英之さんは2話構成、若木さんは3話構成を希望していたというお話。

客観的事実を集めた結論で恐縮ですが、「事前に若木さんと、倉田さん含めた制作者側で話し合いが行われ、若木さんの意向を最大限尊重した結果、倉田さんが3話構成及び全体の構成を決定した」ということでしょう。
誰の意向がどこまで強かったのか、そういった情報ソースをご存じの方がいらっしゃいましたら、教えていだけると幸いです。

「原作愛=素晴らしいアニメ」?

ところで若木さんのブログ「HoneyDipped」では、若木さんのアニメに対する考え方や思いが沢山書かれています。幾つか挙げてみます。
なお原作者のブログなので原作のネタバレが多少あります。

引用はしませんが、どの内容も若木さんの作品愛が強く感じられます。


これらを総合して考えると若木さんは単純に「もっとゆっくりが良い」と言っているのではなく、「神のみという作品を最大限アニメで表現するにはどうしたら良いか」を考えていたと思われます。それって素晴らしいことじゃないの? もちろんそう思います。
ですが、「原作愛=素晴らしいアニメ」、この等式は必ずしも成り立つのでしょうか?
少なくとも、原作作品を昇華させることに重きを置きすぎて視聴者を置き去りにすることは本末転倒だと思います。難しい問題ですが。

原作を忠実以上に再現=面白いとは限らない?

神のみのアニメ化で改めて感じたことは、原作を忠実に再現してアニメ化しても面白くなるとは限らないということです。
神のみは原作を忠実に、いやそれ以上に再現しようとしています。それはとても良いことなのだと思いますが、今回はそれが悪い方向に働き、間延びを感じる人が出てきたのかなと思います。


漫画とアニメでは話の展開のさせ方・キャラの立て方などが違うことは、漫画にそれほど詳しくない私でも理解できます。若木さんはブログで、以下のような事を述べています。

ストーリーも女の子の魅力も桂馬がフィルターすることによって成立しているのが、神のみという世界。しかし、桂馬というベタとメタを行き交うキャラクターを、アニメ制作システムで描くのは難しいなぁ・・・と企画が始まって実感した。
(略)
この状況であんまり尺を切っていくと、テンポはいいが、特に神のみの場合は、ストレートな話になりすぎてしまう。エルシィと違って「点」でなく「線」でキャラを立てていく攻略女子も、単なるゲストキャラクターから出てこられなくなる・・・。

:: 神のみぞ知るセカイ | HoneyDipped :: - 12/21:FLAG124「Loverary」


昨今の深夜アニメは、2クールないしは1クールの枠内でストーリーに起伏を作る必要があるため、間延び感は致命的と思います。
「毎週の引きがうまいアニメは面白い」という言葉がありますが、これは「毎週ワクワクさせてくれる」を言い換えたものだと私は思います。アニメにドップリ浸かっていられる状態、これこそがアニメを最大限に楽しんでいるときだと思うのです。そしてこの状態は、間延び感とは程遠いと思います。

まとめ

間延び感は、「原作を最大限尊重しすぎた」、これに尽きるのかなと思います。原作改変・改悪の話にも繋がる難しい問題だと思います。
ただ最初にも述べましたが、あまり一つのことにこだわり過ぎるとその視点からしかアニメを見れなくなるので、出来る限り広い目を持つよう心がけたいと思います。


こんなに間延び感について書きましたが、決してつまらないわけではなく、楽しんで見ています。ギャルゲー神と呼ばれる桂馬が、独特の視点・考え方で私たちをあっと言わせ、次々と女の子を攻略していくさまには快感を覚えます。


神にーさま、カッコイー
A Whole New World God Only Knows 神のみぞ知るセカイII/OPテーマ