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隠れてていいよ

主にアニメや漫画の感想を書いています

そうだ、岩舟行こう――『秒速5センチメートル』第一話「桜花抄」聖地巡礼

アニメを見ようと思ったけれど見る気にならず、かと言って何もせず一日を過ごすと「また何もしなかった」とさらなるネガティブスパイラルに入ることは確定だった。
なので。





「そうだ、岩舟行こう」

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秒速5センチメートル 第一話「桜花抄」聖地巡礼




さて、本作品では主人公である遠野貴樹くんは、「豪徳寺小田急線)→新宿(埼京線)→大宮(宇都宮線)→小山(両毛線)→岩舟」という乗り継ぎで明里に会いに行ったようです(参考:岩舟 〜秒速5センチメートル〜)。
全く同じルートを辿るのもありかなぁと思ったのですが、さすがにわざわざ豪徳寺からというのは面倒だったので適度にショートカットして「都内のどこか→小山→岩舟」のルートで行って来ました。都内からだと大体2時間前後で行けちゃうんですよ。


ガタンガタンと揺られ、小山駅に着きました。
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この景色は実は小山駅なんですよね。
この小山駅は、本編では雪模様の中で次の列車を待つ貴樹の描写が印象的なわけなんですが「小山駅だ」と作中で意識したことがあまりなかったので、実際に駅について景色を見て「あぁ、確かにここが舞台だ」と再認識したのでした。
そして、こちら。

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立ち食いそばやさんが普通に存在していることに感動。あるっていうことは知っていたのですが、実際見ると感慨深い。作中とは季節が真反対ですので情緒は無いかもしれませんが。



ここから両毛線の車両に揺られて20分で岩舟に到着します。

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今回の聖地巡礼には、以下の本をお伴にしました(非AA)。
秒速5センチメートル one more side

桜花抄の途中で止まっていたので、これを機会に読み進めようとしました。
この本では、桜花抄において明里視点で多くが語られます。映画では、岩舟に向かうまでは貴樹の描写しかありませんが、本では反対に明里視点でしか語られません。まるでそれは、映画と答え合わせをしているようでとてもとても感じるところがありました。

作中で岩舟という場所は、貴樹から見て「遠い場所」であるという描写がされます。貴樹がまだ中学生で、世の中の、世界の広さというものを理解できていないということが伝わる描写が多かったように思います。また雪のせいで電車が遅れ、実際に6時間以上も掛かっているわけですから、視聴者としては岩舟はどこか「遠い場所」として受け止めるところがあると思います。

ただ、自分の足で電車に揺られて岩舟に着いてみて感じたのは、案外に近いということでした。岩舟というまるで聞いたことがない地名、そんな場所は別次元の場所で、一体どうやって行くんだろうと思っていたのに、わずか数回の乗り換えで、都内からだと2時間ちょっともあれば充分に着いてしまう場所だということを――近い場所なんだなと感じざるを得ませんでした。
岩舟に到着した瞬間、そのことを想って、悲しいような嬉しいようなよくわからない気持ちになりました。悲しいというのは、「現実」に接してしまったからです。作中では岩舟は、前述したように「遠い場所」のモチーフとして、また高校から貴樹が引っ越す予定の鹿児島は種子島の「遠さ」を意識させる場所でありとてもとても神聖な「遠い」場所であったはずなのに、簡単に到着してしまったことに悲しくなってしまいました。
ただし反対に、嬉しくもありました。こんないい所に、ちょっと電車に乗れば、来れてしまうこと。何かを忘れたい時に、ちょっと電車に揺られれば、岩舟という自分を受け入れてくれる場所が存在するということ、そのことにとても嬉しくなりました。


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作中では駅舎には駅員さんがいる描写がありますが、いつ改装されたのかは定かではありませんが現在は無人駅になっていました。地方の駅にはよくある、電子マネーをタッチできる小さな機械が置いてありました。券売機も、作中よりもこざっぱりした、シンプルなものが置かれていました(駅舎の写真は、人が結構いたので撮れていません)。


最近は聖地巡礼ありきの作品が多く、その地に到着するとすぐに巡礼ノートがあったり、アニメキャラクターが迎えてくれたりします。またそうでなくても、昔の作品でも巡礼ノートやポスターが迎えてくれることがあります。しかし、岩舟駅においては駅舎ではそういうことはありませんでした。
私は常々聖地巡礼について色々と考えているのですが、その中でも「一般には聖地だとは思わない場所であっても、そこは人によっては充分に聖地になりうる」というものあります。鷲宮、大洗、秩父白川郷……上げれば切りがありませんが、そういった「すでに観光地としての下地がある場所」というのは、聖地であり観光地であります。聖地巡礼と言いつつ、やっていることは実は観光地巡りだったりすることが結構私の中ではあります。もちろん作品がなかったら行こうと思わなかったかもしれないし、もちろんちゃんと作品に浸って、「あぁ、良いなぁ」と惚けるくらいには楽しむのですが、やはりそれは下地があるからこその部分もあるわけです。
それとは別に、作中でキャラクターたちが立ち寄っただけでそこが聖地となることもあります。これは「大きな括りとしては観光地があって、その中の一部」という意味合いと、そうでない場合があります。前者は例えば白川郷における白川クリーンセンターがあります。ここは、ひぐらしのなく頃にという作品の主人公である前原圭一の自宅のモデルとなった場所なのですが、クリーンセンターと書いてある通り(下水?)処理場だったりします。普通に考えて観光地ではないですが、ひぐらしファンにとっては聖地なわけです。かくいう私も必死にこのクリーンセンターを探していました。
では、パパのいうことを聞きなさい! という作品内で登場した、東京は立川にあるビッグエコーというカラオケ屋は聖地でしょうか。まさかここを観光地だという人は少ないと思いますが、しかし聖地かどうかで言えば聖地にだってなりえます。モデルにした場所があったとしても、そこを聖地にしようと思ってやったわけではないと思います(もちろんパパ聞きに限らず、作品の舞台が地域に根ざしているのなら、そこは聖地になりうるという前提はあるとしても)。

で、長々と書いたのですが、今回岩舟に着いてみて、自分にとって岩舟は聖地だろうか、と問うてみたのです。その答えは聖地でした。私にとって岩舟は、秒速5センチメートルという作品と切っても切れない場所です。上で紹介した写真を撮っている時、その場にいる時、本当に幸せを感じました。作品と一緒だ、今自分は作品内に入り込んだようだ……と。
その場所に行って、自分の側に作品を引っ張ってこれるかどうかというのは、私にとって結構重要だったりします。その意味で、岩舟は間違いなく作品がおりてきました。

では岩舟が観光地かどうかというと、もちろん観光地なんだとは思います。しかし私達が「観光地」と聞いて思い浮かべるような観光地ではありませんでした(岩舟の人ごめんなさい)。しかし私にとっては、後述しますが、岩舟山に登っていい景色を見れたりして、とてもいい場所で、また行きたいと思った場所でした。

私が聖地巡礼ありきのアニメ化に少し懐疑的な理由は、初めからそこが聖地であると明言されることが気に食わないからです。でもそんなこと言い出したらどこも舞台にできないじゃん、とも思うわけです。
ただ、どこかの地域を舞台とした作品が昨今多い中でも、P.A.WORKSさんの作品についてはそれほど嫌悪感を私は持たなかったりします。でも人によっては、P.A.WORKS作品は鼻につくのでしょう。この違いは何かって言うと、もう作品からその匂いを感じ取るかどうかとか、そういう「感じ方」のレベルになっているんだと私は思うんですよ。地元の活性化とか考えたら、そこまで目くじら立て無くてもいいじゃないと思う人がいる一方で、私のように聖地化前提のアニメ作品は、視聴者が舞台に引きづられ過ぎないだろうかという懸念を持つ人までいるわけです(参考:聖地化前提のアニメ作品は、視聴者が舞台に引きづられ過ぎないだろうかという懸念 - Togetter)。

一体、正しい聖地化前提アニメって何なんだろうか、と最近考えてしまうのです。もう全然分かんないけど考え続けたいとは思ってます。正解なんて無いんだろうけれど。



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さて、岩舟に来て何もせず帰るというのも味気なかったので、岩舟山に登って来ました。山頂?には高勝寺というお寺がありました。しっかし、高勝寺に着くまでの階段が結構あってですね、息も切れ切れでした。

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お、入り口が見えてきた。


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マジかよ……



登る登る登る登る。下を見る。







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途中、展望台を発見。
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やっぱり良い景色っていうのは何物にも変えられないと私は思うんですよね。いい景色を見るたびに思います。








この日、岩舟付近は昨今の猛暑の例に漏れず非常に暑かったのですが、夕方頃にゲリラ豪雨というか、局地的な大雨に見舞われました。高勝寺について、お参りをして下山中にドバシャーンと来て、途中発見していた小屋というか休憩所みたいなところに逃げ込みました。

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私は結構雨が好きなので、雷が鳴り出した頃からワクワクしていました。そして案の定雨が振ってくれてウキウキしていました。休憩所で雨に降られながら、秒速5センチメートルの書籍を取り出して、雷の音と雨の音を聞きながら誰にも邪魔されずに本を読む……もう至福すぎて、生きててよかったなぁって思いました。

下山中に雨に降られてしまい濡れながら休憩所に駆け込んだわけですが、その最中、降ってくる雨が地面の枯葉とかをバッシバシと弾けさすわけです。また、木が生い茂っているところとそうでないところがあったので、同じ大雨でも体に当たる雨の量が全然違ったりしたわけです。フォレスト・ガンプという映画があるのですが、その映画の中で主人公がベトナムに従軍しているときに「いろんな雨があった」と語るシーンがあります。ちょっと詳細は忘れちゃいましたが、叩きつけるような雨、横殴りの雨、下からの雨……と様々の雨の描写があったわけなんですが、なぜかこの時その描写を思い出して笑ってしまいました。


雨宿り中、最近立て続けに言の葉の庭を見ていたのもあって、いろんな雨があるんだなぁと改めて感じていました。降り始め、土砂降り状態、少し晴れている、雷を伴う……全然違うんですよね。

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狐の嫁入り




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雨も上がり、湯気が立ち上っている様子。



雨も止んで、下山して、そして帰宅しました。

終わりに

私が聖地巡礼に行くと、毎度のことながら巡礼が主なのか観光が主なのかわからなくなるのですが、今回はさらにわからなくなりました。多分やっていることは観光な気もするんですが、違うような気もする。一人になりにいったのかもしれないし、そうでないかもしれない。

ただまぁ、行ってよかったなぁと思ったのでした。岩舟、いいところです。


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