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アニメにおける「前回までのあらすじ」の必要性

ライトノベルにおける「前回までのあらすじ」の必要性 - Togetterまとめ

上記事について、ちょっと旬を外しちゃった感はありますが、せっかく書いたのでアップします。



ライトノベルにあらすじが欲しいかどうかと言われると、あると嬉しいなと思う。シリーズを通して読むこともあるけれども、期間が空くことが多いので。
前巻を軽くパラパラと読み返せば確かに思い出すことは可能ですが、「あれ、前の巻どこ行ったっけ−」となるのが目に見えてしまう。本棚にきっちり整頓されているのならまた別なのかもしれないけれど。その内「あぁ、探すの面倒くさ。もう読み始めよう」となるのがオチで、そして案外読み進められたりもする。だから「あると嬉しいなと思う」ぐらいに思う。
ただ、ホライゾンくらいのストーリーの重厚さがあると、さすがに復習が必要かなと個人的には思います。もうちょっと言うと、ちゃんと復習して読まないと勿体無い、と思ってしまいます。

さて、ではアニメにおけるあらすじはどうだろうと考えました。必要だ、必要ではないという結論を出すつもりはありませんが、いくつかのアニメをサンプルとして、自分なりにだらだら考えてみました。

言及される作品:ドラゴンボール史上最強の弟子ケンイチアイカツラブライブ

アニメにはそもそもあらすじはあった?

歴史を紐解いて、時代を追いながらあらすじについて考えてみる……などということをすると時間が幾らあっても足りないので、それは専門家に任せます。とは言え、ふと昔のアニメを思い出してあらすじというとドラゴンボールZは外せませんね。
ダンダンダンダン!)ダンダンダンダン!) たーららー たららーららー たららーららーーーー  たららーらー らーらっ たーらら たららら ダンダンダンダン!) ダンダンダンダン!) ダンダンダンダン!)


子供ながらに長いなぁと思ってはいたものの、当時はそれほど苦痛に感じていなかったように思います。むしろ「よっし、ドラゴンボール始まったぞ!」とワクワクしたものでした。友達間でも「ドラゴンボールの最初の部分長すぎやろwwww」みたいな話をした記憶はあるのですが、それはメインでははなく、多くは本編の内容について盛り上がっていました。


なぜあらすじが長かったのかについて関係者のウラ話などは知らないのですが、原作をそのままにアニメ化していては原作に追いついてしまうので引き延ばしていた、というのがよく言われる理由かと思います。
あらすじが長いことで有名なフリーザ編のアニメが始まったのは、ドラゴンボールZ - Wikipediaによると1990年2月14日。そして漫画の連載はというと、1990年週刊少年ジャンプ(思い出の週刊少年ジャンプ)さんの情報によると、

1990年の正月号は530万部に達する。その少年ジャンプは毎週送られてくる読者アンケートにより掲載順位を決定しているので、連載漫画の人気度がハッキリ見える。この年の柱となっているのはやはり「ドラゴンボール」。ナメック星のドラゴンボールをめぐり悟飯たちとフリーザ、さらにベジータが加わりいよいよ全面対決というところ。

ということで、アニメ化するにあたってコミックをそのまま映像化していたとすると、直ぐに追いついていただろうことが容易に想像できます。ちなみに現在はドラゴンボール改という名前でデジタルリマスター再編集版が放映されていますが、こちらでは無駄な引き伸ばしなどをする必要がないので、スピーディーに展開させたりオリジナルを入れたりするなどが行われているそうです。
ドラゴンボールZは、原作に追いつかないように、の典型例ですね。


関係無いですが上記「思い出の週刊少年ジャンプ」さんのサイトを見ていて「あぁ、古きよき個人HPだ」と感慨深いものがありました。フレーム、デフォルトのリンク色、NinjaTools、右から左に流れる文字……。


4クールアニメではあらすじが必要なのか?

さて、もう少し最近のアニメで考えてみましょう。
2006年10月から約1年にわたって深夜枠で放送されましたアニメ『史上最強の弟子ケンイチ』。原作は、週刊少年サンデー松江名俊さんが連載しておられます同名の漫画。
この作品は深夜では珍しく4クール1年ものでした。そしてほぼ毎話、前回までのあらすじがあった作品でした。更に言うと、この「前回までのあらすじ」がかなり長かったことでも有名です(少なくとも私の中では)。
結論から言うと、最も長かった回では6分34秒の先週のダイジェストが有りました(ちなみにこれは最大であって、平均はもっと短いです)。見間違いではないですよ、本当に6分34秒です。当時測ったので間違いありません。

ケンイチに関しては毎週リアルタイムで視聴して毎週各話感想を書いていましたので、読み返すと当時のことが手に取るように分かるのですが、どうやら「前回までのあらすじ」が始まったのは第10話からだったようです。

開始早々は先週のダイジェスト。ダイジェストしたのは初めてかな。作画の方はひどい時に比べればまし。ただよくはない。時々崩れすぎなシーンも多々あります。それと動く部分がひどすぎるw ケンイチが横に移動するシーンなんかは笑える。

第十撃 「走れケンイチ!ボクサーの弱点」 - 隠れてていいよ


そして6分34秒はどうやら第11話だったようです。

先週からAパート最初に前回のダイジェストが入っているのですが、今回はなんとAパートのほとんどをダイジェストで占めるという暴挙に。あまりに長すぎて笑いが止まらなかった。しかもダイジェスト後もAパートが続く続く。長いAパートはダイジェストを含めるとおよそ14分45秒(ちなみにダイジェストは6分34秒ほど)。製作が間に合わなかったというのが最も考えられる原因かもしれない。美羽の影での戦いは演出だったと信じる。

次回予告を見る限り作画はよさそうなので次回は期待できそうです。間違っても半分以上Aパートを使うようなダイジェストはやめてくださいね?

第十一撃 「裏切りの拳 武田の悲しき過去」 - 隠れてていいよ


ケンイチとドラゴンボールを比較すると、4クール(以上)の作品、少年誌原作などの共通点はあるわけですが、ケンイチは原作ストックが充分であったという違いはあります。アニメのケンイチは4クールで原作16巻分を消化しましたが、放送開始の2006年10月時点でコミックス第22巻が発売されておりました。
アニメストーリーのオリジナルは確かほぼ皆無だったはずで、いわゆる「原作通り」に話が構成されていました。

ではなぜケンイチでは前回のダイジェストが挟まれたのでしょうか。
個人的には、前回のあらすじは既定路線だったのだと思います。1年4クールでケンイチのストーリーをどこまでやるか考えた場合に、きりが良いのは原作16巻で完結するラグナレク編だと思います。この次の編をやり始めるとまず4クールでは収まりません。
また結果論ではありますが、ケンイチは原作のストーリーがしっかりしているためわざわざオリジナルストーリーを挟む必要がなかったというのもあるのかもしれません。つまりまとめると、

  • 4クールでオリジナルストーリーを挟まずやろうとすると16巻までが切りが良い
  • しかし何も考えず話を進めすぎると16巻を尺的に超えてしまう
  • だから各話の最初にダイジェストを挟んだ

ということになります。
ただまぁもう少し正直なところを申し上げると、ケンイチは総じて作画が怪しかったです。そしてダイジェストはもちろん先週の映像がそのまま使われておりました。なので、苦しい現場を助けるためのダイジェストであった、のかもしれません。
いずれにしてもケンイチの長いダイジェストは、個人的には全然許せるものであり、なぜかといえばそれはストーリーがとても面白かったからだと私は思っています。ドラゴンボールZのあらすじとは少し毛色が違いますね。



4クールものの作品であればあるほど、見続けていないと置いて行かれてしまうという事実もあると思います。「途中から見始めたけど分からんわ」と言って退場していく視聴者を沢山見てきました。じゃあそういう視聴者に対して各話ダイジェストが本当に意味があるのかというと、これまでのストーリーを全て理解させる、という意味では無いと思います。だってアニメって、と言うかアニメにかぎらず作品というのは、そんな単純ではないじゃないですか。1分程度で作品のこれまでを全部理解しようなんてのはできないと思うのですよね。
また日常系など1話完結のものでない限り基本的に話は続きものなわけで、特にアニメに関しては「1話から順番に見ていくこと」がある種の常識というかお作法というか、流れみたいになっている節があると思っていて、であるならばなおさら各話に対してダイジェストを入れることは、初見だとか、途中から見始めた人用ではない、のかもしれません。総集編とか、ニコニコで1クール目を一挙放送するとかそういうことをするほうが意味があると思います。
では主に誰に向けてのダイジェストなのかと考えてみる。ケンイチやドラゴンボールのように制作側の都合であることが多いのだとは思いますが、それ以外の理由もきっとあるはずです。ここではラブライブアイカツを例に出して、少し考えてみたいと思います。

前回の◯◯!!

どの作品が元祖なのかは存じ上げませんが、いわゆる「前回までのあらすじ」の様式美として認識されているものとして最近だとラブライブは外せないかなと思います。いわゆる「前回のラブライブ!」というやつです。

【ニコニコ動画】前回のラブライブ!をまとめてみた


毎話の冒頭に、前回何をやったのかが端的にまとめられて流される。果たしてこれは誰に向けてどういう意図を持って作られているのでしょうか。もしかしたら製作者側から答えが出ているのかもしれませんが、とりあえず私は知らないので考えてみます。

先程も述べたように、4クールものにおける「前回までのあらすじ」は、途中から見始めた視聴者、しばらく見ていなかった視聴者に対して視聴を促すかというとそれほど効果が無いような気がします。では1クールものならどうでしょうか。

実は1クールだと意味があるのかもしれない、と瞬間的には思いました。というかこれを書きながら考えているのですが。
あくまで例えばですが。「どうもネットで◯◯というアニメが流行っているらしい。今から見始めてみるか」となった人が3話を見たとします。すると「前回の○◯」と題して1分弱でストーリーの説明がなされるとします。「うーん、最初から見ないとわからないな」となります。そこで1話を見るとします。次に2話を見ます。すると2話における「前回の◯◯」が理解できます。そして3話を見返すと、3話の「前回の○◯」が、初めて見たときよりも格段に理解ができます。そしてその瞬間、この「前回の◯◯」に対してこの視聴者は好意的になる可能性が高いと思います。すると、この視聴者は3話以降も見続けるようになるのかもしれません。そして頼んでもいないのに「この作品は前回の◯◯が特徴的なアニメだよ。様式美だよ」って言ってくれるかもしれません。

とまぁ、これは極論というか思考実験すぎるわけですが、でもですよ、昨今の1クール量産体制において「特徴的であること」と、「視聴者に少しでも優しい配慮」は格段の強みになるかは分かりませんが、僅かでも好意を抱かせることには成功すると思います。

ラブライブの「前回のラブライブ!」がどのような意図を持って行われたかは分かりませんが、少なくとも様式美を生み出したことは間違いなくて、それは作品愛につながってきていると思うのです。
前回のあらすじはやはり、本当にあらすじを確認したい、という層に向けて行われているようには思いません……いや、本当にそうでしょうか。

アイカツ2年目から行われた「これまでのアイカツ!

現在人気爆発中のアニメ『アイカツ!』。放送は2年目に突入しても飛ぶ鳥を撃ち落とす勢いで驀進中。
2年目からは、毎話必ずではありませんが「これまでのアイカツ!」と題して開始30秒ほどで「これまでの」流れが、これまでの映像を流しながら、ヒロインであるいちごちゃんから説明されます。この明示的な「前回のあらすじ」は1年目にはありませんでした(もちろん簡単な説明はありましたが、「あらすじ」と明示的にはありませんでした)。なぜ2年目からなのでしょうか。

答えは分かりませんが、アイカツの人気が留まるところを知らず、もっともっと新規の取り込みを行おうとしたのではないか、とは考えられます。
アイカツは筐体があります。いわゆるDCDです。女児たちはアニメも見ますが筐体で遊びます。カードを集めて、コーデして……。女児の間ではどのアイドルが好きかで派閥ができるほど、現在のアイカツ人気はすさまじいらしいです。また新弾が登場すると、いち早くプレミアムレアを手に入れることが一種のステータスとなるそうで、カードショップに出向いて親が子供に買ってあげるということもあるそうです。そうしないと、「あれ、あの子の家、プレミアムカードも用意できないような家なんだ」と言われることもあるそうです(とある情報筋によると、です)。
社会現象、というのは言い過ぎかもしれませんが、実際に業績にも影響をあたえるほどの力を持ったコンテンツになっているのも事実です。
バンダイナムコHD、14年3月期は増収・減益…アイマスやガンダムなどソーシャルゲーム好調、「アイカツ!」は年商130億円規模に | Social Game Info

であるならば、2年目からもアイカツに投資するのは当然で、アニメも「はじめてさん」を意識するのは当然かと思います。


2年目から見始めた女の子たちにとっては、いちごちゃん達の立ち位置はよくわからないわけで、それを最初の数十秒で簡単に説明してもらえたら「ふんふん、なるほどねぇ」となることは容易に想像できます。最悪、女児はともかくとしても一緒に見ている親御さんは理解できるでしょうから、お子さんから「ねぇねぇ、いちごちゃんって誰?」って聞かれてもきっとバッチリしっかり答えられるに違いありません。違いありません……よね? ぜひ、星宮いちごちゃんの可愛さをバッチリしっかり伝えてあげてくださいね。1年目のストーリーの流れを軽く説明して、なぜいちごちゃんは力強いのか、なぜ留学したのか、なぜ帰ってきたのか……しっかりバッチリ教えてあげてくださいね!
つまりある程度のムーブメントが出来ている作品は視聴者が自分から見ようとしてくれるので、その場合には前回のあらすじは非常に意味を持つと思います。アイカツの2年目のあらすじは、「流行っているから今から見ようとしている層」にバッチリハマっているものだと思います。


少しだけまとめる

アニメにおける「前回のあらすじ」は簡単に型にはめて考えられるようなものではないと思います。なんのしがらみもないアニメ製作など無いはずなので、ストーリーのあらすじ一つとっても様々の要素が絡み合っているに違いありません。ただ、

  • 原作に追いつかないように
  • 原作ストック十分だから
  • 様式美。アニメへの愛
  • 新規ユーザーへの配慮

などで大まかには分けられるのかもしれませんね。


とまぁ、なんかうだうだ考えてましたが、アニメは見て感じればいいと思うので、とにかく皆さんアイカツ見ましょう!


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