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西尾維新さんの伝説シリーズ最新『悲録伝』を読み終わって、生きる意味を再確認

ネタバレ感想はまた別に書くとして、まずは読み終わったこの瞬間の気持ちを伝えたいです。
「伝説シリーズを読みたいので死ねない」
また生きねばならぬ理由が一つできました。



悲録伝 (講談社ノベルス)
(リンクは非AA)


以前にも伝説シリーズについて記事を書きました。
西尾維新最新「伝説シリーズ」 ぶっ飛んだストーリーと主人公「空々空」の在り方
主人公「空々空」が変わっていること、そしが私の心を打つのだということを書いていました。

主人公空々空は、感情があるが感情はない。怒りや悲しみに対して無頓着である、という表現は近いようで少し違う。「何かを悲しいと思っている自分を演じている」ということを自覚しながら無自覚に演じている、それが空々空です。彼は自分が「悲しめないこと」を知っており、それを自覚しながらも努めて平静であろうとする、普通であろうとする、しかもそれを無自覚的に行っている。

自覚しながら無自覚に演じている、という表現は矛盾があるように聞こえるかもしれませんが、彼を表すのにこれほど的確な言葉は無いと私は思う。彼は自分が無自覚的なことにすら気づいていて、それを無自覚的に演じているのです。

伝説シリーズは第一作目『悲鳴伝』に始まり最新『悲録伝』で6冊目となりました。先に紹介した記事では装丁の写真を載せておりますが、非常に厚い本で、最新作はおそらく20万字強の文字数です(23文字×18行×2段組 約500ページ)。もちろん太さだけではなく物語も骨太です。
主人公「空々空」(そらからくう)が何を思い生きるのか、何を考え行動して決断するのか、を見ているだけでゾクゾクものです。

第一作目『悲鳴伝』のWikipediaよりあらすじを引用させていただきます。

2012年10月25日、午前7時32分。『大いなる悲鳴』と呼ばれる謎の災害によって、人類の3分の1が死滅した世界。

半年後の2013年5月27日、飢皿木診療所を訪れた少年、空々空は、自分が何事にも心を動かされない人間であることに苦悩していた。しかし、この問診によって素質を見出された空々は『地球撲滅軍』を名乗る謎の組織に勧誘される。その内容は「人類を滅ぼそうとする悪しき地球と闘うヒーローになってほしい」というものであった……。

本作の設定の面白い点は、敵が地球だということです。荒唐無稽な設定に聞こえ、一体どこまでが真面目な設定なのだろうと思わず突っ込みたくなるのですが、これがもう笑えるぐらいに主人公空々空のために用意されたのではないかと思うくらいにバッチグーに合っているのです。
この設定下に置かれてこそ、この空々空という不思議なキャラクターの良さが際立つんです。主人公を含めた周りに死が身近にあること、数々の苦渋の決断を幾度と無く迫られる機会があることも特徴で、しかしどこか深刻さからはかけ離れたような語り口で進んでいくそのストーリーは、読むものを惹きつける力を持っています。私はもう完全に虜になっています。


というわけで、分厚いですし軽くもないストーリーなのですが、もしお手に取る機会があれば読んでいただきたいシリーズでございます。私にとっては、生きる意味を与えてくれた作品でありました。これだからコンテンツというのは素晴らしい。人を救います。



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