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敢えて言う、西尾維新さんの伝説シリーズ最終巻『悲終伝』は後味が悪かった

本記事は、西尾維新さんの伝説シリーズ及び最終巻の悲終伝の結末を含む盛大なネタバレを含みますので、まだ読み終わっていない人や、これからもしかしたら読むかもしれない人は絶対に読まないでください。
後、内容的に「わー面白かったー」というような内容じゃないので、そういうのを楽しみにしている既読者も周り右したほうが良いかもしれません。




(ネタバレ防止のための行間)








いいんですね、読んで良いんですね?
じゃあ、言いますよ。


ひっどい終わり方だよ。辛い。何だよアレは。絶対、西尾維新さん、書き尽くしたとか言ってるけど、書ききってないやろ。マジで。
空々空の少年時代を、一言一句書き漏らしたくなかったというのが本音です って、おい! それが本音じゃん! これが本音やろ。
どう考えても書ききってないやろ、そんなん読み終わったら分かるやろ、舐めんなよ。

かろうじて、最後、地濃鑿との会話を入れたのが抵抗みたいな感じですやん。
西尾維新大辞展で、「お話を書き続けるモチベーションとなるキャラ、キーパーソン」のNo.1として挙げていたのが地濃鑿やったわけで、マジで私は小躍りしてそれを喜んでいたのですよ。
でも、絶対まだ書ききってないでしょ、地濃鑿を、そして空々空との会話を。
意外性というか、考え方がある意味正しいと言うか、倫理観が欠如していると言うか、あんな魅力的な地濃鑿を流石にまだ書ききっていないでしょ。

後書きは、どう考えても恨み節にしか聞こえない。本当はもっと自分の好きなように書きたかったけど、講談社文芸部第三出版部がそれを許さなかったと言っているようにしか聞こえない。
いや、全然違ったら失礼だけど、だけど少なくともこの読後感の後にあの後書きは辛い。

非球伝が発売された時は小躍りしました。その前の巻から1年以上空いていたので。ただそれと同時に、2ヶ月連続刊行で終わりますという告知もなされたわけで、すぐに読めるという嬉しさの反面、マジで終わるの? という怖さもありました。だって、まだまだ魅力的なキャラクターが生きていますし。

だって、非球伝で杵槻鋼矢サイドの魅力的なお話が描かれたから、次は空々サイドの話が描かれて、そして次に杵槻鋼矢サイドと繋がるというところがこの衛星編というかVS地球編クライマックスのカタルシスなわけじゃないですか。
にもかかわらず、杵槻鋼矢さんが出てきたのが、最終巻の全15話のうちの12話の中盤って、なめている。それを見た瞬間、嫌な予感がもちろんしましたよ、これはもうまともにはまとまりきらないなって。足りるわけ無いじゃないですか、ページ数が、文字数が。
しかも今改めて考えてみたら、右左危博士と乗鞍ぺがさ達の話す内容全く描かれてないし、空々と花屋瀟、剣藤犬个との因縁とかさらっと無理やり詰め込まれているし、メランダ王とかもあんなに引っ張っておいてあっさりネタバレしてしかも最後描かれていないし、地球がわざわざ対面した人がいた理由が何かとか、すっごい物語的にも設定的にも美味しいところをさらっと流しているし、牡蠣垣閂とかなんでこのタイミングで出てきたんとか、もうなんていうかこれ以外もとにかくたくさんあるんだけど、全てをご都合主義に一気に最終回よろしくババっと説明して(説明していないものもあるし)、終わってるし……西尾維新さんにここまで裏切られたのは初めてかもしれません。


なんだろう、この想いはどこにぶつければ良いんでしょうか。編集部に意見言うところから始めたら良いんでしょうか。
地球という敵と戦うという、割とこれまで見たことがない設定ですごく好きで、空々空という主人公がすごく好きで感情移入できて(本人は感情が無いのに)、地球の首を絞め殺そうとしたときに剣藤犬个が思い出され絞め殺しきれなかったシーンは結構グッと来たし、よし、これからさらに空々空の内面が、成長が描かれていくんだろうと思っていたところに、これですか。ようやく引っ張ってきた空々空の感情の話を、もっと丁寧に描かなくて良かったんですか?
空々空の少年時代を、一言一句書き漏らしたくなかったというのが本音です ってもう本当に、本当は書きたかったけど、書かせてもらえなかったもしくは書く気がなくなったとしか読めない。伝説シリーズは西尾維新さんにしか書けないのに、それはあまりにも酷ですよ。

最後の数章は殆ど内容が頭に入ってきませんでした。文字を、なんというか無感情にというか、あぁこれは駄目だという気持ちで、でも読まざるを得ないから最後までなんとか読み切りましたけど、辛かったです。行間から、「これじゃない、これじゃないんだ」という気持ちが伝わってきました。漫画の打ち切り最終話を読んでいるときの、あのなんとも言えない悲しさ。あぁ、まとめにはいっている、あぁ、一気にこれまでの伏線を回収しているしかもあっさりと、あぁ時間が進む、あぁ……もう空々空に会えないんだって。

こんなに面白い作品を、こんな感じで終わらせていいんでしょうか、いや駄目でしょう。別に私が書いている作品でもないのですが、これはあまりにも勿体ない。辛い。
こんな形で終わって、そしてもう続きが読めないなんて辛すぎる。これならずっと続刊が発売されないほうが良かった。ずっと既刊を読み返していたほうが幸せだったかもしれない。

辛い、ただただ辛い。
本当はもっと書きたかったんじゃないですか、伝説シリーズを、空々空を。そして地濃鑿を。地濃鑿を最終章のあんな感じで消化させるなんて本当は絶対にやりたくなかったんじゃないですか? あんなすごいキャラを、あんな最終章をまとめる役目として出すなんて、本当は許せなかったんじゃないですか? 彼女のこれまで築き上げてきたキャラクター性をあんな形で消化してよかったんですか?

休んでもいいから、新章とかでも良いから、続きが読みたいです。
こんなブログ、多分読まれていないと思いますが、自分の偽りざる思いです。
あぁ、本当に久しぶりに、こんなに後味が悪い読後感。生きる糧が一つ失われました。