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『天気の子』 全能感にソワソワしよう

新海誠さんの最新作『天気の子』を、公開初日7月19日に見てきました。
以下は、ネタバレを含みますのでまだ見ていない方は絶対にご覧にならないほうが良いでしょう。
ぜひその目で1回目はネタバレ無しでご覧いただければと。


満足したか?

多分、満足はした気がする。見終わった後、なんとも言えない気持ちになったから。
ワクワクしだしたのは、天野陽菜が消えたところから。

その後主人公である森嶋帆高が、陽菜にもう一度会いたいと思って走り回る一連のシーンがたまらんかった。
あえて言葉を使うと、セカイ系のこそばゆさというかやりきれなさを感じたからだとは思う。
「てめーら、何も知らねーだろ、それなのに勝手にもの言ってんじゃねーよ」というような台詞回しは本当にたまらなくて胸に来る、こそばゆい。

ただ、須賀圭介というキャラクターが居て、少年の暴走とも呼ぶべき行動に待ったをかけようとする。
個人的に今作で一番のエモかったポイントは、帆高が陽菜に合うために廃墟ビルに到着し、登っている途中に圭介に出会うシーン。

お前居るんか、来てくれたんか、そんなに帆高のことを止めようとしてくれたんやなって、どっと想いが溢れ出てきてですね。
圭介も、帆高と同じように東京に出てきて辛い思いをしていた同じような境遇だったから同情したけれど、保身のために一度は帆高をあっさり放り出したわけです。家族を、娘を取ったっていうのはすがすがしくてよかった。淡々と帆高を切る感じがいいね。

なんだけど、やっぱり、このまま帆高がむちゃをし続ければ、必ず捕まってしまい、人生どうしようもなくなってしまうかもしれない、だから止めに来てくれたんだと。そうやって、大人の立場としてちゃんと止めに来てくれたんですよ。

その圭介に対してですね、帆高が拳銃を向けたシーンが最高に、もう最高にたまらなくてですね。
映画館の椅子に座りながらも、少し前傾姿勢になって、手がそわそわして、体がこそばゆいから両手をそわそわさせてですね。思わず心の中で「うわぁっ」って叫んでしまいました。それくらい感情を一気に揺さぶった。

お前、銃向けるんやって、これが、これが自分だけの世界に閉じこもった、俺だけが知っているやつの全能感ってやつなんだって。
普通銃向けないやろ? って、でも「お前らは陽菜のことを何も知らないんだ、俺だけが知っているんだ、それなのにお前らは好き勝手言いやがって」ってこういう気持ちになっていると、こういう全能感丸出しの行動ができる、もうこれが本当に本当にたまらなくてですね。セカイ系っていう言葉で片付けるのは惜しい。この気持ち悪いもやもやとしてでもソワソワして体全体が痒くなるようなこの感じ、たまらん。

個人的には、ここで帆高が本当に銃を撃ってしまって、圭介にあたって死なせてしまうというルートも見たかった、というかそうならなかったので余計ソワソワした、撃たないんだったらこれどうやって収集つけるんやって。多分、撃つルートもあったんじゃないかなって。
結局は撃ちきれんかったわけだけども、ここでルートが分岐したんじゃないかなって、この瞬間ずっと考えてました。

その他

ヒロインの陽菜が、当初高校生と嘘をついていて、その後作中で大学生と偽って、実は中学生だったって分かる一連の流れが様式美すぎるというか、妄想的に捗りすぎて分かってるなって思った。まだ中学生の女の子が、家庭環境も相まって、こんなにも悩んでいるんだなって、そしてそれを晴れにする力によって一時的に開放されて楽になっていく……っていうシチュエーションも最高過ぎると。
Twitterで誰かが、精神的水商売を陽菜にさせている帆高、って表していたけれども、確かに陽菜は晴れにするたびに、救われてはいたんだろうなと。消えるかもしれないという恐怖と戦っていたのは確かかもしれないけど、それ以上に、救われていたんじゃないかなと。

東京は生き辛い、ってそこらかしこに散らしているように、テーマはそんなに明るくないものなんだけど、そんな中でも生きている彼ら彼女らのそのままというか、ストレートな感情表現が本当にたまらなく刺さりましてですね。

結局、新海さんの作品は、大体1回目はぼうっとなってしまうんですよね。だから大体2回目以降を見て腑に落ちることが多い。
なので、そのうち2回目を見に行ってこようと思います。