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フラクタルを100倍楽しむ方法

フラクタルリローデッドとは、ストーリー原案を手がける東浩紀さんが、雑誌「ダ・ヴィンチ」で連載を開始した、フラクタルのノベライズです。舞台は、アニメ「フラクタル」の200年後です。このリローデッドという作品では、アニメでは語りきれないSFの要素、つまりこの物語のシステム・根幹が詳細に描写されています。

ということは当然ながら、アニメから手に入る情報以上の情報が、この作品を読むと手に入るわけです。

さて、本記事では

  • アニメ「フラクタル」をより楽しむために、リローデッドを参考に、世界観だとか設定などを私なりに説明しています。

なので、アニメという一次情報のみで作品を楽しみたい方にとっては、今から書く内容はネタバレとなる可能性が高いです。よく考えた上で、続きを読み進めることをお勧めします。ただし、本屋に行ってダ・ヴィンチを手に取れば得ることができる情報ではあるわけです。


ところで、本文に入る前に一つ訂正しておかないといけないことがあります。フラクタル1話の感想、「フラクタルのワクワク感は異常」で、主人公の名前をクレイと書いていましたが、正しくは「クレイン」でした。お詫び致します。


以上、前置きが長くなりましたが、続きをどうぞ。



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フラクタルリローデッドのあらすじ

フラクタルリローデッドでは、主人公クレインの子孫が、先祖であるクレインが起こした事件、つまり物語の真実を探っていくストーリーとなっています。
この事件のことを、リローデッドでは<大初期化(グレート・イニシャライゼーション)>と呼んでいます。フラクタルシステムついては後述します。

そもそも、リローデッドという言葉の意味は何なのか。同雑誌には東浩紀さんのインタビュー記事があり、その中で氏はこう答えています。

(略)
「キャラクターや最終話までの流れについても責任を持って僕が関わったんですが、できあがったアニメでは、僕の作ったSF設定がかなり見えづらくなっています。細かいSF要素が影を潜めていて、表面上は少年少女向けの冒険ファンタジーになっているんですね。アニメでは見えづらくなったものを、小説版では全部復活させるプランなんです(笑)。つまり、SF設定がリロード(再起動)されるんですよ」

ちなみに、このインタビュー記事では重大だと思われるネタバレが、サラッと幾つもなされています。

フラクタルシステムとドッペル

リローデッドでは、フラクタルシステムの詳細やドッペル(代行人工知能)について、それなりに詳しく書かれています。
さて少しややこしい話になりますが、フラクタルシステムとドッペルは、厳密には別物です。説明していきます。

フラクタルシステムとは、端的に言うと助け合いシステムです。フラクタルシステムの経済というのは、人同士の繋がりがないと成り立たないという前提があるのです。つまり、とにかくみなが友達でたがいに繋がっている社会じゃないと安定しないシステムなのです。
多くの知人(それは家族をも含むだろう)と社交性を持っていなければならないわけで、ドッペルなしには成り立たないシステムだったわけです。

夢のようなフラクタルシステム。このシステムはあの<大初期化>がなければあと二世紀は稼動し続けていたはずだったそうです。

物語のゴール

フラクタルという作品において、<大初期化>は重要なキーワードです。ここまでで、鋭い方は気づかれたと思いますが、この<大初期化>にクレインが関わっているのです。そう、フラクタルシステム崩壊に、クレインが手を貸したのです。

是非ご自分の目でリローデッドを読んで考えてもらいたいのが、アニメ「フラクタル」の結末です。私の現段階での理解を記しておきます。

フラクタルの最後におけるクレインと、AngelBeats!の音無の心情は、やや似ている部分があるのではないかと仮説を立てています。AngelBeats!を観ていない方には恐縮なのですが、少しだけAngelBeats!の最終回について書きます。端的に言うと、音無は奏ラブだったのです。俺と奏が存在すればそれでいい、と言っても過言ではないくらいに固執していたのです。それと同じことが、クレインにも起こりうるということです。つまり、フリュネの事だけを考えた結果フラクタルシステムが崩壊してしまうという結末です。

後味が良いとは言えない結末の予想です。

ドッペルについて

リローデッドを読んでショックを受けた事の一つが、ドッペルについての記述でした。私は、ドッペルとはあくまで仮の姿、つまりアバターだと思っていたのですが、もっとぞんざいだったのです。
人は、ドッペルにお喋りをさせたり勉強をさせたりできます。そして、後からお喋りした内容や勉強した内容の要約を聞くことができます。しかし、要約を聞くという作業さえも、人々は面倒になっていくのです。

分かるでしょうか。つまり本人の意志を介在させる必要がないのです。いや、正確には本人のように振舞うのですから、少し違うかもしれません。ですが、人間関係が希薄であることが分かるでしょう。多くの人間と良い関係を持っていることフラクタルシステムを成り立たせる前提で、そのためにドッペルを導入したのに、いつの間にか人間関係は形式的なモノへとすり替わっていたのです。

この設定を理解した後、ふとクレインの両親のドッペルについて考えるとゾッとするのです。クレインのことを心配する両親は、クレインのことなんか1ミリも気にかけていない可能性があるのです。


ドッペルに関連して。1話の中で、まだ実体だった両親と、クレインが楽しそうに笑っている映像を見ながらフリュネが涙したシーンがありました。その時の感想を以下のように書きました。

(略)
つまり、ビデオに写っていたクレイの笑顔は、両親と触れ合っていた頃の笑顔。今のクレイの笑顔は、そうでない笑顔。その違いに、フリュネは涙するのです。

このシーン、リローデッドではフリュネがこう言います。
「ドッペルではこんなふうに笑えない」

予想が当たったよ、と言いたいのではありません。リローデッドでの、このシーンの描写が素晴らしいということです。是非、読んで欲しいのです。

最後に

ここまで読んでいただいただけでも、アニメ「フラクタル」に何倍も興味が湧いたのではないでしょうか。興味を持たれた方は、是非リローデッドに目を通して欲しいと思います。私が今回記事にした内容の何倍もの情報が記載されていること請け合いです。

さて、記事のバランス的には、「そもそもアニメを理解するためにノベライズまで持ち出す必要があるとか、作品の作り方が間違っている」といった意見を取り上げる必要があるのですが、今回はフラクタル推奨記事ということで割愛させていただきます。

フラクタル、ワクワクしてきましたね。