隠れてていいよ

主にアニメや漫画の感想を書いています

アニメから入った人が、これゾン原作を読んでみた

3話放送終了後あたりに買っていた、原作「これはゾンビですか?」1巻を読了しました。レーベルは、富士見ファンタジア文庫です。
超わくわくしていました。アニメに大ハマリしていたので、「絶対に原作も面白いに違いない」「原作からどんな改変が行われているんだろう」「アニメは原作何巻分くらいなのかな」…疑問や期待が沢山あったんです。

というわけで、以後はこれゾン原作1巻のネタばれを含みます。完全シャットアウトしたい方は読み進めないことをオススメします。ただ、そんなにネタばれにはならないかも…と思っています。





RSS購読などで、続きを読む表記が機能しない時の緩衝材)

アニメ化ペースが神すぎる

第6話「そう、私は死を呼ぶもの」で、アニメは一区切りでした。いろんな出来事があって、かなり濃かった6話までの展開。これ、原作読んで愕然としたんですが、1巻に全て収められているんですよ。逆に言うと、原作1巻を6話分で演出したということなんです。

色々と言いたい点があるのですが、まとめると

  • 原作をよくここまで膨らませたなぁ(脚本的にも演出的にも)
  • アニメ化だからこそできた演出が多数ある

の2点です。
こう書くと、原作を馬鹿にしているんじゃないかと思われる人がいるかもしれませんが、そうではないんですよ。私個人の意見としては、アニメと原作はある種「別物」だと感じたくらい違うんですよ。アニメを見てから原作を読んだことも大きく関係していると思います。

原作を膨らませた?

ストーリー構成とか順番とか、それなりに原作を踏襲していると思っていたんです。いや、もちろん大筋は同じです。ですが、演出が違います。大筋はそのままに、それをアニメ視聴者が理解しやすいように、組み替えているんです。分かりにくいので具体例を挙げます。

例えば、ユウの言葉の力の告白シーンがありました。歩が、「俺が全部どうにかするから」とユウに言う、かっこ良いシーンですね。「何でもきやがれってんだ!」と言った次の日には、シロナガがやってきて…という流れです。
原作だとこのシロナガのシーンは、京子ちゃんの病院にお見舞いに行ったあと、単体で唐突にやってくるんですよ。ハルナが「メガロがやってきたぞー」って突然。じゃあ、ユウの告白シーンは?というと、なんと別イベントなんですね。しかもシロナガイベントよりも後。

こういった感じで、各種イベントは別々であったり、順番が前後していたりすることが殆どです。他にも、セラがやってくるタイミングだとか、挙げだしたらキリがありません。これが、私が別物だと感じた最も大きな理由です。

アニメ化だからできる演出

魔装少女への変身はもちろんなんですが、最も顕著なのはバトルシーンだと思います。私、これゾンってそれなりのバトルものだと思っていたんですよ。ラブコメとバトルがうまい具合に作用するタイプの。ですが、原作を読むと、アクションに対する描写って、そんなに多く無いんですよ。バトルイベントの数としてはむしろ原作の方が多いと思うんですが、描写されている時間感覚的には、アニメの方が圧倒的に上です。


でも、どうしてこんなバトル色を強く押し出したんでしょうか。テコ入れならば、エロシーンを増やしたほうが楽でしょうし…。なんて考えていたら、その答えは巻末コメントを読むと少し理解が出来ました。

予防線として言っておきますが、巻末からの解釈はあくまで私の解釈です。ぜひ、ご自分の目でも確認していただいて、感じていただきたいと思います。

原作者の思いがそのままアニメ化したイメージ?

巻末には原作者の木村心一さんのコメントがありますが、これが非常に興味深いのです。

本を出版するに当たり、編集の方に「これゾンのジャンルはなんですか?」と木村さんは聞かれたそうです。というのも、木村さんはプロットという概念がなかったらしく、「じゃあプロット作りのために作品内容を今一度話し合いましょう」、となったそうです。

木村さんは最初、「SFアクション」とお答えになりますが編集の方に怒られます。それは違うだろうと。すると今度は「サスペンスアクションです」とお答えになるのですが、編集に「ラブコメです」と一蹴される。他にも「ホラーアクション」だとか「異能力バトルアクション」だとかお答えになりますが、全てを「ラブコメ」で一蹴されます

その後、作者はこれゾンにおけるアクション・サスペンス・ホラー・モンスター・異能力…等々の内容を全てラブコメに変換して脳内補完されます。つまり、作者本人はアクション等々を書いている(書きたい)のですが、それはいつの間にかラブコメに受け取られていた…というイメージ。



だからこそ、だからこそ、アニメ化された「これはゾンビですか?」という作品は、原作者の思いが高い精度で具現化していると感じました。サスペンス・ホラー・モンスター・異能力…そして何よりアクションバトル!


アニメを見て、それから原作を読んで、そして原作者コメントを読んだら、とても幸せになりました。これゾンは、とても良いアニメ化なんだろうと。アニメ制作スタッフの愛が感じ取れました。これゾンは、スタッフに愛されていそう、と思いました。

ちょっと余談

これゾン1巻の巻末コメントは、原作者だけでなく編集の方のコメントも載っています。その中でとても印象に残った部分があったので、引用します。

(略)
そのとき、私は確信しました。作品を面白いと思う=読者もきっと楽しんでくれると信じるならば、編集(推す側)は萎縮してはいけない。むしろ自由に考えるんだ、そうすることでより楽しい作品を世に送り出すことができるんだと。

これゾンという作品に関わって間もない私が言うのも何ですが、こんな編集さんだからこそ、これゾンという作品が世に出たのかな…と。とても心が温かくなりました。

まとめ

これゾンのアニメを面白いと感じた方は、原作を読んでも楽しめると思います。ゾンビの設定とかメガロの設定とかその他諸々の説明がそれなりにあるので、アニメでよく理解できなかった部分に、合点が行くのではないかと思います。

最近、原作改変・改悪の記事(アニメの原作「改変」とか「改悪」とか)を書いたばかりですが、やはり原作からアニメ化の際の演出の変化等々は興味深いとしか言いようがありません。オリジナルアニメではできない楽しみ方だとも思いました。