隠れてていいよ

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『さくら荘のペットな彼女』3話 よほど誠実に生きていたのはましろだったのだ

3話がとてもとても面白かった。


はっきり言ってですね、3話でここまできっちり心情描写を書いてくるとは思っていなかった。だって、まだ3話ですよ。確かに「シリアス調」を見せることはこの作品において重要っぽいっていうのは分かっていましたが、ちゃんと3話で問題定義できるって言うことが素晴らしいの一言。2話までのましろの言動はすべてこの3話をやるための伏線だったんじゃないかと思うほどです。

ましろはましろなりに考えている

ラブホでのシーンはとんでもなく良かったですね。何度も何度も繰り返して再生してしまいました。

「待て待て、分かってんのかこの状況。ラブホに、男と女だぞ」
「分かってるわ。今日はここに泊まるのよ。」
「おまえな、全然わかってないだろ。いいか、椎名、おまえはもっとよく考えて行動しろ。こんな場所に男と来て何かあったらどうする気だよ」
「意味ないわ」
「あ?」
「考えても。私は取材に来たもの。これは書くために必要なことよ。だから私はここへ来たの。」
「へ…?」
「空太は。空太はどうしてここにいるの?」
「どうしてって……」
「忙しいって言ってたのに。猫の飼い主、見つかったの?」
「見つかってない。」
「なら、どうして? わかってないのは、空太の方ね。 さよなら」

アニメ『さくら荘のペットな彼女』第3話「近すぎて遠い…」より


自分のために行動していたのは空太ではなくましろだったのだ。自分のために行動していなかったのは空太だったのだ。よほど誠実に生きていたのはましろだったのだ。
もう凄い。こういった背景、考え方、各キャラクターの心情が僅かの会話で伝わってくるのだ。セリフ一つ一つに重みがあるし、演出も良かった。BGM、効果的に使われる回想…。


お互いの顔のアップが続いたと思ったら引きからの全身、また様々の角度からの表情描写。


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そして最後、「さよなら」という、空太にとんでもないダメージを与える一言のシーン。これは鏡に向かってカメラが向けられたカットであるが、ここも凝っていた。
ましろと空太は向き合っており、ましろが鏡を背にしている。そして「さよなら」を言ってましろが去ると、下を向いた空太が鏡に映される。



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ましろが去り、

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ベッドの上にはましろが書いた絵が。背後には空太が。
先ほどの会話がそのまま表現されている。

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「意味ないわ」
「あ?」
「考えても。私は取材に来たもの。これは書くために必要なことよ。だから私はここへ来たの。」
「へ…?」
「空太は。空太はどうしてここにいるの?」
「どうしてって……」
「忙しいって言ってたのに。猫の飼い主、見つかったの?」
「見つかってない。」
「なら、どうして? わかってないのは、空太の方ね。 さよなら」

アニメ『さくら荘のペットな彼女』第3話「近すぎて遠い…」より


この一連のシーンは繰り返し見る価値があります。綺麗ですよー、同時に辛くなります。心を抉るシーンの何と震えることか。


さらに細かなところを一点書きますと、空太(CV:松岡禎丞)の「見つかっていない」の演技が素晴らしいです。何が素晴らしいって、「冷静に答えているんだけど震えている」という感じがとてつもなく伝わってきます。
空太はましろとの受け答えで本当に本当に、本当にショックを受けているのです。「忙しいって言ってたのに。猫の飼い主、見つかったの?」という質問は、質問だけ見れば普通なんだけど、この文脈でのこの質問はきつい質問なのです。
この質問に対して答える空太の心情、この心情が「見つかってない。」に全て、絶妙に込められている。

繰り返しになりますが、この一連のシーンは素晴らしいの一言です。


自分の夢を人に相談できますか?

もう一つ、3話で感情を動かされたシーンがあります。それは、空太が、ゲームクリエイターになるという夢を改めて捉え、行動をしようとしたシーン。「どうすればクリエイターになれるのか」と、チャット上で赤坂龍之介(引きこもりプログラマー)に聞こうとするシーンです。

このシーンで空太は、赤坂龍之介に質問しようとします。「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」、と。そしてキーボードで画面上に「ゲームクリエイターになるには」までタイプするのですが、ごく僅かの時間を置いて、バックスペースで消して、そして「いや、やっぱりいい」とタイプして確定させる。
ゲームクリエイターになるには」の続きはもちろん「どうすればいい?」が補完されるのだろう。しかし空太は「〜なるには」までしかタイプできなかった。



この葛藤にあまりに感情移入してしまい、泣きそうになりました。「自分の夢に対して他人に聞くことの、意見をもらうことの恥ずかしさ・プライド」と、「チャット上で、自分が何かを言おうとした時に、タイプしている最中でやっぱり発言することをやめるためにバックスペースで消して当たり障りないことをタイプする」こと。この2つが重なって、いろんなものがフラッシュバックして泣きそうになりました。なんかもう、自分にもそういうことが数えきれないほどあったなぁと。



前述したラブホシーンも含めて、心情描写が素晴らしい回でした。

終わりに

さて定番になりましたが、素晴らしいと感じた回のスタッフさん、主に原画までを文字起こしして終わりたいと思います。

よければ以前書いた、『さくら荘のペットな彼女』 頭のおかしさを売りにするようなキャラ付けをあなたはどう思いますか?もどうぞ。タイトルは少し釣りですので安心してお読みいただけます。

アニメ『さくら荘のペットな彼女』第3話「近すぎて遠い…」

脚本
鴨志田 一
絵コンテ
神戸守
演出
高島大輔
作画監督
橋口隼人  小林 亮
糸井 恵  児玉 亮
舘崎 大
総作画監督
藤井昌宏
原画
森藤希子  渡部弘子
満田 一   久原陽子
竹本未希  矢吹智美
洞内 梢   村井咲代子
新号 靖   中西加奈世
牛ノ濱由惟 亀井 嶺
加藤美紀  重国浩子
高橋香織  川島 宏
たないあやこ 久保山陽子
井上可奈子 三室健太
松木泰憲  坂元利光
坪井大樹  藤田麻貴
冷水由紀絵 糸井 恵
第二原画
廣田 茜  八重樫洋平
河野仁美  津々 尭
TNK
マンガ協力
菅野マナミ
絵画協力
河合真維