隠れてていいよ

主にアニメや漫画の感想を書いています

「僕にはアニメを語る資格がない」

「最近アニメを見ようとする意思が弱い気がするんだ」
「意思が弱いってどういう意味だい?」
「アニメに対する情熱が薄れたわけじゃないんだ。以前よりも『見なければ』という思いが強いとさえ思う。気持ちは先行するんだけど、でも実際に見ようとする気になれないんだ」
「見る気にならないって……いや、見たらいいんじゃない?」
「そう言われるだろうことはもちろん分かっていたよ。でも、そういう問題じゃないんだ。なんていうかこう、見てしまうともう逃れられなくなる恐怖というか、もし今見ても本当に見続けられるだろうかという恐怖というか、なんというか雁字搦めになるんじゃないかという怖さがあるんだ」
「理解できないな」
「なんていうか、なまじこれまでアニメにずっと接してきたことは関係していると思ってるんだ。つまり、アニメに対しては中途半端ということができなくなっているんだ。これはこれ、それはそれという割り切りができなくなってるんだよ」
「なるほどな。確かにお前はアニメに対しては貪欲だったもんな。でも、それって強迫観念っていうか、ちょっと自分を責めすぎじゃないのか?」
「うーん……。最近怖いんだ。アニメに対してきちんと接することができなくなってきている自分は、これから大丈夫なんだろうかって。何が大丈夫かって言われると説明しづらいんだけど、こうなんていうか、どんどんアニメを語る資格をなくしている感覚にとらわれるんだ」
「アニメを語る資格、ねぇ。ところでさ、アニメを語るにはなにか資格とかいるんだっけ?」
「いや、そんなものはいらないよ。好きなモノは好きだといえばいいし、嫌いなものは嫌いだって言えばいい。きちんと自分の言葉で、それが例え拙いものであったとしても誰にも邪魔されてはいけないものだし、そしてそれには価値がある」
「ん? 矛盾しているだろうそれは」
「確かに矛盾しているのかもしれない。だけど、その矛盾を矛盾だと思いたくなくなるぐらいには、アニメに対してアウトプットする恐怖が上回ってしまっているんだ」
「……」
「……」


「言葉は愛だ」
「……え?」
「言葉は愛だ」
「……」
「アウトプットするのが怖いだって? それってさ、逆に言えばアウトプットしたいことは沢山あるってことじゃないのか。もし本当にアニメを語る資格がないと思っているんだったら、書こうとすらも思わないんじゃないか。きちんと言葉にしようと、そういう姿勢を取ろうともしないんじゃないのか」
「……」
「君にはアニメを語る資格がある」
「……」
「好きの反対は無関心だなんてよく言ったものだけど、この言葉は正しいと思うんだよ。本当に好きだったものは、好きなものは、そんなに簡単には捨てられないし、興味を持たなくならないよ。それはお前を見ていれば分かるよ」
「……」
「君にはアニメを語る資格がある」

FIN.




Thank you for this wonderful Manga
だれも幸せにならないアニメの話 | 磯貝祐司 [pixiv] http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=38020243