隠れてていいよ

主にアニメや漫画の感想を書いています

『バーチャルさんはみている』は企画者側の妙な自信を感じる

色んな所から耳にしていたアニメ『バーチャルさんはみている』を見ました。
あまり良い噂を聞いていなかったのでビクビクしていましたが、自分で見ないことには始まらないということで、1話を見ました。

以下は雑感です。

オムニバス形式のアニメは難しい

『バーチャルさんはみている』は、1話の中に複数の短編で構成されるオムニバス形式です。
アニメにおけるオムニバス形式は定義がふんわりしていると思いますが、「1話の中に複数の短編が入るアニメ」という意味でここでは使います。
例えばアマガミという作品では、ヒロインごとに異なるストーリーが描かれるという形ですが、このようなパターンは今回は取り上げません。
同様に、1話ごとに主人公が変わるような『しにがみのバラッド。』のようなものも、今回のパターンとしては取り上げません。

では今回定義するような、1話の中に複数の短編が入るアニメにはどんな物があったのか、自分の記憶を掘り起こしてみると以下の2作品がすぐに思い浮かびました。

『バーチャルさんはみている』を話す前に、少しこの2作品を振り返ってみます。
そんなものいらねーっていう人はちょっと多めにスクロールしてあげてください。

Master of Epic The Animation Age

Master of Epic The Animation Age』通称MOEは、『Master of Epic -The ResonanceAge Universe-』というMMORPGを原作とするアニメで、放送されたのは2007年1月なので12年前の作品です。
公式サイトがまだ消えずに残っていました。
テレビ東京・あにてれ マスター オブ エピック〜The Animation Age〜

巷で大人気のネットワーク・オンライン・ゲーム『マスターオブ エピック』が、遂にアニメ化!!
アニメでは、ネットに広がる仮想空間「ダイアロス島」を舞台に、様々なキャラクターがそれぞれ固有のストーリーを展開!!
戦闘、魔法、友情、愛、そしてナンセンス・ギャグ!?様々なエッセンスを取り入れた魅惑のストーリーが、1回の放送に5~6話登場します!!
従来のストーリー展開を覆す、新感覚アニメバラエティ『マスター オブ エピック ~TheAnimationAge~』。乞うご期待!!

公式サイトのSTORYに上記説明が書かれるように、1話の中で複数話が描かれるという構成で、当時としては相当新しかったというか異色だったなという記憶があります。
長年ブログを続けてきて良かったなと思うことは、リアルタイム視聴時の感想を残していること。確認してみると、ちゃんと全話感想を書いていました。
Master of Epic The Animation Age カテゴリーの記事一覧 - 隠れてていいよ
第1話感想から少し引用すると

淡々と盛り上がりもなくオチもひどい感じで前半の数本は進みます。正直突っ込みどころがない所に面白みを感じるのかもしれない。面白くなくはないのですが。
(略)
と、ショートストーリーを数本という構成なわけですが、変な空気に笑えるのなら多少見る価値はあるかと。つぼに入ればおもしろいかも、なアニメな気がします。

割と辛辣に書いていますが、重要なのは、原作のネットゲームをやっていないと理解しにくいネタが多かったということです。
非常にハイコンテストなストーリー展開なため、すべての短編を楽しむことはできていなかったなと。
短編にもいくつかのお約束短編がありまして、その一つが「ワラゲッチャーV」というカオスな短編。「急に歌うよ」の元祖かもしれない(そんなことはない)。



今でさえこのワラゲが何だったのかちゃんと理解できていないのですが、それでも毎週楽しんでいたことは覚えているのですから面白い。
最終回まで全部見ましたが、結果的には楽しんでいたようです。

前説無し、しかし後説はあり。さて最終回でしたが、個人的には今までで一番面白かったかなぁと。どの話もそれなりに面白かったですし、さらに最終話だけのシリーズ「ワンダフルワールド マスターオブエピック」がシュールすぎて笑いこけてました。流れるクローバーの歌も何か笑える所があり、人形も相まって最高でした。最後のワラゲも無難に良かったですし、いい最終回でした。このアニメもどうなるかと思いましたが、結局かなり楽しんでいたような気もします。ただ、実況の手助けはかなりあったように思えます。

最終話「パーティは終わらない 私たちにウナ丼を!」「恋するアンジェリカ ラブ3」他数本 - 隠れてていいよ

結局アニメを誰に向けて作っているのかというところが多分重要で、本作品は、原作のネトゲをプレイしていない人お断りぐらいの超絶異色だったと思うものの、それでもなんとなく楽しめてしまったのは

  • 1話の中に多いときには10話も短編を入れるなどカオス
  • 元ネタを知らなくても、カオスな感じを楽しめる短編が多い(中の人いじり、ワラゲッチャーVなど)

という要素があったからなのかなと。

ショートDEアニメ魂

ショートDEアニメ魂は、アニメ作品というよりは、様々の短編インディーズアニメを紹介するアニメ枠だった気がします。
例によって、全話感想を書いていました。
ショートDEアニメ魂 カテゴリーの記事一覧 - 隠れてていいよ

このアニメも、1話では相当に辛辣に書いていました。

これはきつい。SUNではカレイドスターが放送されている裏でKBSしか映らない私は何が悲しいのかこの番組を見てましたが、中々にきつい。何がきついっていうとインディーズ作品が流されるのですが、見るのが非常に苦痛。まぁ言えばflashアニメなんですよね(3作品目以降は違いますが)。
(略)
2作品目、「「花山院ですが何か?」第1話 〜ぬるぽっ!」すでにタイトルからあれなんですが、中身もかなり2chネタ多し。絵はそんなに嫌いではないのですが…。そしてここで唐突にクリエイターインタビューが入るのですが、正直いらない。
(略)
こんな感じの30分なのですが、正直見る価値があるかどうかと言われればないです。実況をやっていてもかなりきついのに来週からは録画で見る事になると思うので非常にきつい。切る可能性は大です。

切る可能性は大とか言いつつ全話見ちゃっているところがツンデレっぽい。でも、その後感想を読んでも割と辛辣。アニメ作品だけでなく、製作者インタビューが流されることも多く、当時は相当辟易していたことが感想から分かります。
猫ラーメン」「大根刑事」シリーズは気に入っていた模様。この2作品と「花山院ですが何か」はすごく覚えています。

SUNでやっていたカレイドスターを見れず、泣く泣くショートDEアニメ魂を見続けられたのは、間違いなく2chで実況しながら見ていたからです。

視聴者との距離感

繰り返しになるのですが、アニメの内容が視聴者との距離をどのように置きたいのかが重要だと思っていて、MOEは突き放しつつも見れるもんならついてきてみろという挑戦状を叩きつけていた感じ。あの悪ノリはそうとしか思えない。
ショートDEアニメ魂は、多分視聴者を突き放していたように思う。どちらかというと、創り手側に寄り添っていたのではと思う。インディーズアニメの製作者側のインタビューを30分枠に入れてくるあたりもそれが伺える。今思えば実験的な枠だったのかなと思う。

では、『バーチャルさんはみている』はどうなのか。1話しか見ていないけれども、企画者が満足するアニメのように感じるところはあった。もしくは、バーチャルYouTuberを知っている人だけが楽しめるような作品。

キャラクター説明的なことは多少は行われているけれども、基本はハイコンテキストな内輪ネタが続く。バーチャルYouTuberはハイコンテキストではない! と言われるとそうかも知れないのだけど。ちなみに私は、ゲーム部プロジェクトの風見涼くんは知っていたので「きゃー、涼くーん」って心の中で叫んでおきました。

『バーチャルさんはみている』は、つまり全員が本人役なので、その本人がどんな人なのかを知らないと楽しみづらいというところが難しいところなのだと思う。
芸能人が全然わからないので、テレビがつまらなく感じるような。好きな女優が出てるからドラマ見てみよう、みたいな。

例えばオリジナルアニメーションは誰もが初見なわけですが、なんとか作品に視聴者を引き込もうとする試行錯誤が見られます。オリジナル作品は先が見えない分、つまらないと思われたら切られてしまう。
対して『バーチャルさんはみている』は、ほら面白いでしょほらほら見てみ、っていう上から目線感を感じた。内輪ネタというのはその最たるもの。

この作品には、企画者側の妙な自信を感じる。それが個人的にはちょっと気に食わない。このアニメ飽和時代に、なかなかすごいアニメをぶっこんできたものだと思う。
バラエティ番組のように捉えるべきなのかもしれない。

とはいえ、ニコニコ動画では第1話の再生数が1月21日時点で約68万再生と悪くない。2話も公開から4日で約27万再生。
自分の感性なんて常に正しいなんてことはないので、老害にならないように、気を引き締めて今後も『バーチャルさんはみている』を見守っていきたい。

終わりに

若い感性を保っていきたい。