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漫画『宝石の国』5巻 初見感想 対比される構図に鳥肌が立った

いつもながらタイトルのとおりではありますが、漫画『宝石の国』の5巻を読了しましたので、初めて読んだ気持ちを書き残しておきたいと思います。
5巻までのネタバレを含みますので、その点ご注意ください。

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徐々に徐々に

月人と会話をすることは、そう簡単ではなかったというのが5巻の感想です。
4巻の終わりからすると、5巻ではもっとスピーディーに月人と意思疎通をし始めると思っていました。

実際にはその反対で、フォスが月人と関わっていく様子が丁寧に描かれており、いい意味で安心しました。
徐々に真実に近づこうともがいているフォスの姿が印象的で、アンタークチサイトの呪縛はゴーストによって徐々に解かれているようにも見えました。

フォスの仕事探し

5巻の個人的なハイライトは、いよいよフォスがシンシャに対して仕事を見つけたと宣言したことでした。
とても尊いシーンです。

フォスは、シンシャのために仕事を探していました。それはずっと変わっていません。
でも、自分はどんなに犠牲になっても良い、シンシャのために探し続けたい・探し求めたいと思っていたように思います。

それがなんと、言葉を選ばず言えばフォスは、自分の願いを叶えるために手伝えとシンシャに言い放ったのです。
誰かを巻き込めるわけがないよな、と考えた矢先浮かんだのは、シンシャの仕事探しのことでした。

第三十六話「新しい仕事」は、シンシャのための仕事探しが大きく前進した回で、とても素敵な回です。
「君としかできない仕事だ」という殺し文句が即刺さると思ったらまさかの「楽しいは?」と聞き返すシンシャ。
シンシャは、フォスの告白(自分解釈)を一言一句全部覚えていたのです。

「楽しい」仕事が良かったのか、楽しいという言葉が抜けていることに対して指摘したのか……いや違うんですよ、ここは噛み締めているんですよねシンシャは。
ようやく約束を果たしてくれようとしているフォスに対して、とにかく感情が溢れ出ているんですよね。
だからついつい言ってしまう、「おまえ そう言ったろ」って。

そしてフォスは言う。ずっと側にいてほしいと。告白からついにプロポーズになりました。
シンシャが揺さぶるように指摘しても、「やっぱり必要だ」とフォスに無意識に言われる始末。
この二段階構成の告白もといプロポーズは何度読み返しても凄い。

「君としかできない」で感情を揺さぶられ「僕には君が必要だ」でとどめを刺される。
フォスが当初の告白をしてから中々答えをくれないことにもやもやしていたであろうシンシャ、その感情がようやく報われるときが来たのです。

同じ構図

でも、やはり想いは上手く伝わらないし伝えられない。

最後、シンシャがフォスに組みたいと思いを伝えたセリフは、きっとフォスには届いていません。
それは、フォスが最初にシンシャに「仕事を見つける」と告白したときの「月に行くなんて言うなよ! なあ!」というあのシーンと全く同じ構図というか対比された構図だと思っています。
この構図とは、物語の構成的な意味があると同時に、コマ的にも同じ構図なんです。

フォスの告白シーン(1巻pp70,71より引用)
フォスのプロポーズシーン(5巻pp182,183より引用)


フォスが最初に告白するシーンでは、以前別の記事でも書いたようにシンシャは徐々に離れていくのです。
最後に「なあ!」と声をかける頃にはずいぶんと距離が離れているのです。

それが今度の5巻ではどうか。
徐々にシンシャがフォスに歩み寄ろうとするのですが、逆にフォスの距離が離れていって、「ただ 組むだけなら 別に……」と声をかけるシーンではフォスはずいぶんと距離が離れているのです。
ぽつんと遠くに描かれる様は、フォスとシンシャを入れ替えた形で全く同じです。
そしてシンシャの顔の向きが1巻では右から左に流れていくのと比較し、5巻では左から右に流れていくような構図になっていて、余計に対比されていることがよく分かります。

5巻のこのシーンを読んだ瞬間に、本当に無意識的に1巻の告白シーンが目に浮かび、絶対に構図が同じだと思って確認したらやはり同じでした。
素晴らしすぎて、本来の意味でも感動の意味でも鳥肌が立ちました。

結局想いは伝わらないんだよこの二人は、ほんとに。お互い不器用過ぎる。それを綺麗に綺麗に描いたページなんです。
どう感じて、どう想っていて、どううまく伝えられないのか、これを漫画という形で描く時にどんな表現をするのか。
感情を揺さぶられる漫画は、この描き方が半端じゃなく上手いという印象があります。

宝石の国という漫画は人物の感情の機微を描くのがとてつもなく上手いとずっと思っていて、これまでも何度も何度も感動させられてきたのですが、
上記で紹介したシーンは特に心打たれました。これまでの二人の関係性の積み重ねが生み出した奇跡のようなシーンだと思います。


終わりに

5巻は色々書きたいこと、考えたいことがてんこ盛りなのですがまずはフォスとシンシャのことを書き記したかったので。
やっぱり自分はシンシャが好きなのかもしれないと改めて感じました。
というか、5巻面白すぎます。それ以外の巻が面白くないなんてことを言うつもりは1ミリもないし思っていないのですが、
しかし1巻を読んだ時と同じぐらいの衝撃を5巻では受けました。