ふと、最新12巻まで読了しました。
作者は、つるまいかだ、さん。連載は月刊アフタヌーン。
この表紙を見たときの第一印象は、ペア? とかでやるのかな、なんていう素朴な疑問でした。
12巻まで読了していますが、1巻の内容を中心に少し語ってみようと思います。
フィギュアスケートの知識はほぼゼロで読みましたが、そんな自分でも楽しめました。
涙が出そうになる
年を重ねるごとに青春というキーワードが辛くそして眩しく見えるのですが、本作品も、ずっとそんな力強さに引っ張られて泣きそうになるような感じでした。
結束いのりは、成長していくわけじゃないですか。
感情豊かですが、揺れ幅が大きくて、でもその感情の豊かさは武器となっていく。
自己肯定感が低く、司に褒められるだけでカアーッっとなり、ちょっとできないだけで世界が終わったようになる初期の感じも好きなんですが、いろんなことができるようになる実感を伴ってきて、段々と自信に変わっていくさまが快感です。

(漫画『メダリスト』第1巻pp49 より引用)
スケーティングに挑戦して失敗したときの「じっ… 」と見つめるコマがめちゃくちゃ好きなんですよね。
プレッシャーに弱かったり失敗を恐れたりするのは自信がないから、逆に自信がついてくればどんどん伸びていくだろう……そう感じた最初のイベントはバッジテストだったと思います。
客観的に判断される資格は、何かを身に着けるときのモチベーションとして重要なものなんだなと改めて思いました。
私は幼少の頃に習字教室に習わせてもらっていましたが、続けられていた理由の一つは級位・段位を上げていくことだったように思います。
見える形で結果を実感できることは、子どもながらにモチベーション維持・向上に繋がっていたんだろうと今になって思います。
初級の合格結果を受け取ったいのりが、「にこーーっ」って笑うコマがあります。何気ないコマなんですが、子どもながらのそんな気持ちがとてつもなく丁寧に描かれているなと感じられ、好きなコマです。
狼嵜光の神秘性
できなかったら死ぬぐらいの、とにかくできるようになりたい気持ちが強いことがいのりの強さや成長の秘訣として挙げられると思いますが、それを際立たせるために登場するのが狼嵜光(かみさきひかる)でした。
登場当初は圧倒的天才の役割、後半は共に成長していく一人の悩める少女という役割。
このように感じたのは、狼嵜光の神秘性が巻を進むにつれて失われていくのを感じたからです。
1巻で描かれる、超絶スーパーアルティメット天才である狼嵜光ちゃん! 的なイメージが強すぎたこともあります。
巻を進むに連れ、狼嵜光が抱えていた問題が掘り下げられていっただけと捉えるのか、神秘性が失われていったと捉えるのかは人によるとは思います。
物語の大局的な視点で考えると、いのりの実力が上がるにつれて「全くできなかったことができるようになる! それも圧倒的成長速度で!」という快感テンプレートが徐々に強度を失っていくなかで、狼嵜光という少女が最も変化を描きやすかったキャラクターとして再抽出されたのではという考え方はあります。光の描き方を変えることで物語としての強度を保てるようにした、という考え方です。
とはいえ本作品は、まだ通してはほとんど読み返していないので考察は的はずれかもしれません。
何度も読み返すことで狼嵜光への理解を深めていきたいと思います。
狼嵜光の無邪気さ
と、ごちゃごちゃ書いているんですが、つまり1巻の狼嵜光がめっちゃ好きなんですよ。
無邪気さと天才性と神秘性みたいな、それらが混じり合ったような描き方がめちゃくちゃ好きなんです。

1巻で最も好きな狼嵜光は、上記のページ前後する一連のいのりとのシーンです。
上記ページの4コマ目のぎょっとする光の絵柄が可愛いのは当然なんですが、全体を通して心の動きが移り変わっていく表現が素晴らしいと思うのです。
狼嵜光は自分でもスケートが上手いことを自覚していると思っていて、そんな自分を称賛する人はたくさんいても、追いつこうとする人は殆どいなかったことが推察されます。
そんな状況でいのりが、まずスピードに追いつこうとしてくることにめちゃくちゃ嬉しさを感じているわけです。
すごいですよね、嬉しさが表現されているんですよ。年が近い女の子が自分に追いつこうとしただけで、ですよ。
つまり光は自分と自分以外では大人と子どもの構図で、自分は見守る側であり比べるものではないという自覚があるのでしょう。自覚があるから振る舞いにも出るわけで。
そんな自分の常識を破ろうとしてくる子がいるんだから、そりゃうれしくなる。ナイスいのりちゃん。
更にスピードを上げても追いつかれた光は、じゃあこれもできますか? となんとジャンプを行うわけです。
驚きから嬉しさに、そして好奇心へと感情がシフトするさまがきれいに表現されていて、めちゃくちゃ好きなシーンなんです。
実は光は、いのりと一緒に滑り始めてから、いのりのことをずっと後ろに見ているんです。
一緒に滑って上げようという保護者的な気持ちはもちろんのこと、物理的な目線もです。
私は大人なんだよ、だから子どもを見守るのは当たり前なんだよという意味での目線から、私に追いついてこれるのか? と、挑戦者へ向けたアスリートの目線に変わっていくのが快感です。
心地よすぎてやばいです。
この記事を書くために何度も読み返しているのですが、変な笑いが出るぐらいにすごいです。
本当に美しい流れです。

(漫画『メダリスト』第1巻pp118-119 より引用)
終わりに
本作品は何度も読み返したいと思いますので、また2巻以降についても記事を書けたらと思っています。アニメも放送しているとのことなので見てみようと思います。
よい作品に出会えて幸せです。
