アイカツとの出会いは今からちょうど1年前、アニメの放送が開始された時期だった。
アイドル活動、略してアイカツ。親友のあおいに誘われて、アイドル養成の名門校「スターライト学園」に編入した、星宮いちご。トップアイドルである神崎美月を目指して、アイドルとしての様々なことを学びつつ、上を目指していくという微笑ましい内容。女児向け夕方アニメ。
見ている者全てに勇気と元気を与えてくれると言っても過言ではないアニメで、特にヒロインである星宮いちごは、近年稀に見る「力強い」ヒロインである。自分が思う自分をきちんと心に持っていて、時に迷いながらも、正しいと思ったことを正しいと信じて進むことができる、そんな強い女の子である。プリキュアシリーズが物理的に戦う女の子という革命を起こしたのだとしたら、アイカツは実現力・行動力に革命を起こした女の子向けアニメだと言えるかもしれない。
それは、彼女が時折力強く発する「アイ!カツ!アイ!カツ!アイ!カツ!アイ!カツ!」という言葉にもあらわれている。
そんな星宮いちごちゃんに、私がハマらないわけがなかった。否、ハマることは必然だったとすら思える。第一話を見た時の衝撃は今でも忘れられない。特に、アニメが開始してすぐに流れる「私の熱いアイドル活動、アイカツ! 始まります! えへへっ」って導入、あれを見た瞬間、雷に打たれたような衝撃が走った。詳細は、アニメ『アイカツ!』のヒロイン、星宮いちごちゃんが可愛すぎてマジ天使すぎて死にたいという記事に譲るが、まさに衝撃であった。
アニメ開始の10秒ほどで、「私の熱いアイドル活動、アイカツ! 始まります! えへへっ」って導入やってくれるんですが、これがあまりに可愛すぎて何度も何度も再生をしてはその度に萌え転がっています。何度再生して何度見ても、可愛さは衰えず、それどころか「永遠に見ていたい」と思った。
目の大きさと体全体のバランス、デフォルメ加減、服装、話し方(声含む)、そして「えへへっ」のタイミングと眩しい笑顔……これをマジ天使と言わずしてどうするのか。
本作品の原作とも言えるもの、それは冒頭にも紹介したようにトレーディングカードアーケードゲーム筐体・データカードダスだ。お金を入れたらカードを1枚もらえて、そのカードを使ってアイドルをコーデできたりして、そして音楽ゲームをやって得点とか稼いで、いろいろやって……というやつだ。
私はこれまで、実際に筐体をプレイしたことがなかった。
私はアニメを見たら、その原作に手を出すということをこれまでもたくさんやってきた。所持している漫画約900冊のうち、実に9割ほどはアニメ→原作というルートを辿ったものだ。ラノベも同様だ。
つまり、由緒正しくメディアミックス戦略に乗せられて……いや楽しんでいるということである。しかしよく考えてみると、アニメ→筐体という流れは踏んだことがなかった。
様々な理由があったと思う。単純には、「なんで女児向けのアーケードゲームをプレイするんだろう」というものだったと思う。恥ずかしさが邪魔していたのか、プライドが邪魔していたのかは定かではないが、ある種「普通の人の感覚」を持ち合わせていたのかもしれない。しかし女児向けそのものには全く抵抗はなかった。小さい頃にセーラームーンとか、姫ちゃんのリボンとかそういう系を見ていたのはもちろん、深夜アニメをチェックするようになってからも、ふしぎ星のふたご姫なんかにもハマったりしていた。
つまり、「女児向けアニメに抵抗がないこと」と「筐体に手を出す」ということは全く別のことだと推察される。
では改めて「なぜ筐体に手を出さなかったのか」を考えてみると、それは単純な「羞恥心」だったのかもしれない。アーケード筐体が設置されている箇所というのは、私達が「ゲームセンター」と聞いて思い浮かべる箇所よりも、幾分と年齢が低いお子様が遊ぶ場所に設置されていることが多い。そりゃ主要客層は女児なのであるから、「家族で買い物に行く」ルートに設置されていると考えるのた普通だ。京都だと実際、イオンモールやダイエー、イトーヨーカドー、平和堂などに設定されていることが多いようだ。ファミリー向け室内園地といえばピンとくるだろうか(ピンと来ない方は、「モーリーファンタジー」とかで画像検索してみてほしい)。またヨドバシカメラやエディオンといった家電量販店に設定されているケースもある。
そういう場所というのは、まさに女児スペースなのである。女児のみが占拠することを許された聖域であり、女児以外が入れるとすれば、お父さんお母さん、面倒見のいいお兄ちゃんお姉ちゃんなのである。もちろん、そこに「いい年したおっさん」とか「スーツを着た社会人」が入ってもいいはずだ。いいはずなのだが、そこは「世間体」とか「周りの目」とか、そういったものが邪魔するのだ。かくして、女児スペースは守られてきたのだ……。
しかし、昨今、「アイカツおじさん」という言葉を耳にするようになった。身も蓋もない言い方をすれば、上述したような、本来は女児スペースに入らないような「おじさん」達が、筐体でアイカツを楽しむようになったということである。
この話を聞いて私は、もやしもんのパリ編(ワイン編)に登場する、マリーのお父さんの言葉を思い出していた。
「アイカツおじさん……前から思っていたんだ。甘くて濃厚でとても面白そうなアイカツ筐体をなぜ女児以外が楽しめないんだろうって。アイカツおじさんか。やっていいんだ、こんなこと」
そう、我々は単に「やってなかった」だけなのだ。タブーであると勝手に勘違いして、行動していなかっただけなのだ。アニメのいちごちゃんを見てみなさい。自分を信じて前に進み続けている。あんないちごちゃんをみたら、そりゃ、やりたくもなる。いや、やらねばならないと思うのが普通だ。だから、アイカツおじさんが登場したのは必然だったのかもしれない。
とは言っても、私はなかなか踏ん切りが付かなかった。本当にやっていいんだろうか、と。でも、考えてみた。アイカツは確かに人気があって、アニメも2年目に突入していい感じだけれど、永遠には続かないということを。つまり、もし今やらなかったら、筐体が撤去されてしまった後は、二度とプレイすることができないのだという事実に気づいてしまった。自分の目で、手で、体で体験することは、今しかできないのである。
いつやるか?
…………
それは、崖を登るように辛いことかもしれない。
下を見れば、地獄なのかもしれない。
強風で飛ばされそうになるかもしれない。
でも、決して諦めてはいけない
やるなら今だ!!
「明日へ向かって、MOVE ON NOW!」
次回、「アイカツおじさんへの道 ― 実地調査編 ―」。お楽しみに。