追記有り-20110831
バカとテストと召喚獣にっ!、5〜7話まで3週使って合宿編が放送されましたが、正直な所、少しだれていました。
キャラクターがドバーッと出てきてイベントを起こすタイプの話はストーリーが中々進まないため、間延びしてしまい少し退屈でした。
私は原作を読んでいないので、合宿編について既読組がどのように感じているのか分かりません。ただ、アニメだけ見ている自分としては合宿編に3話を消費する必要があったのかは疑問です(間延び的な意味で)。もちろん、3話4話がABパート短編で構成されていたせいで、余計に間延びしているように感じたことは否めません。
バカテス2期について私は、各キャラを掘り下げる個人編や過去編がツボにハマっています。この記事の後半で取り上げますが、8話には心動かされました。
じゃあ、毎回個人編をやればいいのかと言われれば、それは違うと思います。なぜなら、普段のバカテスのワイワイする空気・下地があるからこそ、個人編過去編が映えると思うからです。日常回で各キャラの特徴を掴んだり、自分の好きなキャラができたり…こういう積み重ねが個人編に繋がります。重要です。
ただ、「それは1期で済んだことだろう」と言われたら中々反論できないのですね。
このあたり、2期という難しさがあるのかなぁと思います。2期は誰に向けて作るべきなのか。1期視聴を前提に? それとも未見を優先?
ここからは7話までを軽く振り返りながら、どういう意図でストーリーが構成されているのかを考えた後、8話の美波を掘り下げる流れとなります。
とりあえず8話の感想を! という方は、ぐりぐりスクロールしてやってください。
各話、誰向け?
1話・2話
1話・2話は、キャラクターの紹介など無く何事もなかったように水着回が始まりました。1期未視聴組にとっては、置いてきぼり感があったかもしれません。だけどそこは、ギャグとエロで乗り切った(水着と浴衣)。1期を視聴していない人も、主要であろうキャラの特徴を、何となくは感じ取れた…はず。
3話
3話は一転、キャラ掘り下げ回と過去回でした。Aパートは秀吉・優子、Bパートは主に美波。
3話は明らかに、1期を視聴していたほうが楽しめる内容です。なぜなら、秀吉や美波のバックグラウンドを知っていないと感情移入しきれないストーリーだからです。特に、Bパートの美波は顕著だと思います。
もちろん十分に感情移入ができなくても、楽しい内容であったことは付け加えておきます。
4話
4話はどうか。Aパートは脱衣トランプ、Bパートは召喚獣による本音暴露大会。
この4話は他の話と比べて、シチュエーション萌えに特化していると思います。つまり各キャラに深く感情移入できなくても、「カードゲームで脱衣していく」「秘密を暴露される」というシチュエーションを楽しむことができるということです……辛いか。
この本音暴露大会は椅子からひっくり返りそうになるくらいニヤニヤしていましたが、1期未視聴組がどの程度感情移入できていたのかが気になります。
関連:バカテス4話の召喚獣が可愛すぎてニヤニヤが止まらない
5話〜7話
そして5話〜7話の合宿編。これは圧倒的にワイワイガヤガヤ、つまり本来の(?)バカテスのノリを楽しむものでした。そこに個別キャラの深掘りは無く、イベントを楽しむ、という言葉が似合う内容でした。
この合宿編については、
- 多くのキャラクターを登場させて3話分動かすことで、未視聴組にキャラの特徴を知ってもらいたかった
- 原作組が期待していたイベントを消化したかった
などの解釈を考えていますが、今ひとつ、ピンと来ません。
5話〜7話という中盤に合宿編を挟んできた意図がイマイチつかめないのです。1クールで中だるみしやすいこの時期、テコ入れ回を入れても良かったのではないか…と。
ただ逆に、個人編過去編がテコ入れだ! という考え方もできなくはないかなと思います。日常回をベースに、過去編個人編をスパイスとして放り込んでいくという考え方です。
8話
美波の過去編でした。詳しくは後述します。
こうやって振り返ると、若干迷走している節はあるのかなと。1期の視聴組に特化するなら、過去編や掘り下げ回の割合がもっと増えても良いと思います。また、未視聴組に配慮するなら説明調な話を1話2話に持って来るべきだったと思います。
どっちつかずな構成になっているのではないか、という結論です。個別個別では面白い! だけど全体としてみると物足りない! というのが、今の素直な気持ちです。
さて、ここまではネガティブに作品を評してきましたが、個人編・過去編に魅力を感じるのは確かで、実際、印象にも残っています。3話4話はもちろんのこと、本記事で取り上げる8話には本当に感動しました。
というわけでここからは、8話について掘り下げています。
ここから8話の内容
美波の可愛さが異常
2期が誰推しなのかわかりません。誰推しなんて無いのかもしれません。だけど私がこんなにも美波を可愛いと思うのだから、きっと美波推しに違いありません。
8話は心が震えました。
美波は言葉が分からない
これを起点に、全てがつながっている。演出も、ストーリーの内容も素晴らしかった。そして、言葉が分からないことが起点なら、終点は
ウチという一人称
にほかなりません。
8話全体を通して、「美波は言葉が分からない」を表現する感情の演出手法に引きこまれました。
フィルム調の演出と、その意味
まず、美波の家族間の会話。映像がフィルム調となり、基本的に声はなく、BGMと字幕だけで会話が表現されます。
この演出がいきなりアバンタイトルでなされると、ググっと惹きつけられました。そうだ、美波はドイツ語ネイティブだったんだ…という事実をまざまざと突きつけられたからです。否が応でも、8話がシリアスになると感じざるを得ませんでした。
この家族間の会話演出は何度か登場します。そして登場するたびに心が痛みました。なぜなら、美波の心情が強調されるからです。つまり、本当は言葉が分からず日本の学校には馴染めないと感じているのに、家族には心配をかけまいと気丈に振る舞う美波が描かれるのです。本音は心の声で、建前は字幕と笑顔で。
本音と建前、2つの相反する気持ちが同時に描かれるほどつらいことはない。
ストーリーの語られ方、言葉の意味が理解できないという演出
Aパートの始まりは美波の心の声から始まります。そう、8話は美波視点で話が進むのです。そしてそれは、美波が嬉しいと感じた部分だけでなく、辛い・悲しい・しんどい…という気持ちまでストレートに私たちに伝わってしまうことを意味しています。
さて、Aパートからずっと「言葉が分からない」ことの話が続きます。明久たち以外の生徒の遠まわしな悪意の演出、そして美波が徐々に孤立していく様が胸にチクチクきました。
帰国子女に興味があるだけで、美波に興味がない生徒たち。漢字を間違えても誰も指摘しない。人間関係だけでなく、授業すら苦痛。しかも家では「学校は楽しいか?」と聞かれる。頼れる人がどんどんと居なくなる。
そんな辛い気持ちが爆発したのは、Bパートの明久との会話のシーンです。ここでは、美波の「言葉が分からない」という演出に気合いが入っていました。
明久が話す言葉にノイズが乗り、映像は歪み、理解出来ない言葉がコウモリのように群れて美波の眼前を黒に埋め尽くす。美波が肌で感じていた辛さを、視聴者にもそのまま感じさせるような演出でした。これでもかと感情移入させられました。
バカな明久
物語はいよいよクライマックスへ。美波に感情移入し、美波と共にこれでもかと沈んでいる視聴者が、カタルシスを感じる部分です。
簡潔に顛末を記すと以下のようです。
明久は美波と友だちになりたいと思っていた。最初は日本語で話していたけれど、どうやら美波には通じにくいらしい。じゃあ、伝えたい日本語をドイツ語で伝えればいい。だけど明久はバカだから、ドイツ語ではなくフランス語を調べてしまった。当然、フランス語を美波は理解できない。だけど、ふとしたことがきっかけで、明久の伝えたかったことに気づく。
確かに、確かに単純ではあります。だけど、だけども、美波が辞書を片手に明久の言葉の真意を理解していくシーン。一つ一つの単語を翻訳するたびに、誤解という鎖が壊れていく演出。そして最後に分かる、明久の伝えたかった言葉。
私と友達になってくれませんか
Could you become my friend
全てのピースが繋がっていく。
アニメを見ていて、久々に涙が出ました。
明久はバカだけど、優しい。登校初日の美波への接し方を見ているだけでも分かります。ずっと真摯に接し続けている。美波にぶち切れられても、声をかけ続けています。もちろん最高の笑顔で。
そんな明久の素直な気持ち、ずっと辛かった美波の気持ち、そして鎖が外れていく演出に代表される感情の過剰演出…これらは私の琴線に触れました。素晴らしいの一言です。
物語の締めくくりでは、なぜ美波が「ウチ」という一人称を使うのかが明かされる。
勘違いから生まれたドラマ(美波の勘違い)が、勘違いを無くすためのドラマ(明久に誤解されないように一人称を「ウチ」にした)で閉じられる…。
最初から最後まで、言うこと無しです。
過剰演出はefっぽい
鎖が破壊されていくシーンはもちろんの事ですが、8話全体を通しての感情の過剰演出は『ef』シリーズを彷彿とさせました。残念ながらefの演出について語れるほど知識がないのですが、感覚的に「efっぽい」と感じる部分がたくさんありました。
例えば8話との関連で言うと、efのオープニングでは、鎖に縛られている(しかし後に解放される)描写があったように思いますし、また、メールを全て読み上げる狂気のシーン(文字が画面を覆い尽くす)があったり…と思いだせばきりがないほど感情を過剰演出した演出があったと思います。
via ef - a tale of memories. 最終話と今までのOPとの違いを比較 アニメすく〜る
via ef-a tale of memories.第7話「I...」 - 特撮の軌跡
もし8話の演出について、efと絡めて考察されている記事があれば教えていただけると嬉しいです。
追記-20110831
本記事に、匿名で以下のようなコメント(情報)をいただきました。情報ありがとうございます。
はじめまして。私も8話の放送を見た後にefシリーズを彷彿させられたので色々と調べてみました。
某作画スレでは「坂本 隆」=「宮崎 修治」ではないかと考察されてました。コンテ・演出・作監を一人でやり、原画まで手伝ってますので、その可能性は高いかと。
アニメ@wiki - 宮崎修治やef - a fairy tale of the two. - Wikipediaによると、宮崎修治さんは1期『ef - a tale of memories. 』において6話・11話の絵コンテ・演出・作画監督を、ef2期において5話11話の絵コンテ・演出・作画監督、10話においては武内宣之さん・板村智幸さんと共に絵コンテを担当されています。
知識がないため、なぜ「坂本 隆」=「宮崎 修治」となるのかのロジックを理解できないのは残念ですが、一つの情報としてとても貴重なことには変わりありません。
情報ありがとうございました。
終わりに
前半はネガティブな評となりましたが、最初にも述べたとおり、個別個別には大満足なんです。3話4話及び8話が収録されるBDに関しては、真面目に購入を検討しています。
まだ放送されていない地域もあると思いますが、是非8話は見逃さないでほしいです。
付録:8話のスタッフ
8話に敬意を評して、スタッフをメモしました。参考になればと思います。
- 脚本
- 高山カツヒコ
- 絵コンテ 演出
- 坂本 隆
- 総作画監督
- 大島美和
- 作画監督
- 坂本 隆
牛島 希 - 原画
- 坂本 隆 牛島 希 井上美香
水崎健太 小沢和則
野田めぐみ 斉藤良成 - 第2原画
- 平田和也 千葉山夏恵 吉本知恵
内海愛子 山本亮友 - 動画チェック
- 中島美幸
- 動画
- SILVER LINK.
- 岩部珠枝 米倉孝規 大槻南雄
澤入裕樹 高橋悠太 大内大和
富田祐輔 林 洋子 日向寺郁昌
佐藤香織 山本無以 吉川昌之
村上靖紘 原口 渉 森林 恵
BEEP Triple A - 色彩補佐 色指定/検査
- 斉藤麻記(ドリームフォース)
- 仕上げ
- SILVER LINK.
平井麻美 山崎俊哉
林 由稀 山口真奈美
田中周作 重冨英里
BEEP - 特効
- 村上宣隆 入佐芽詠美
- 美術
- スタジオちゅーりっぷ
- 美術担当
- 一柳尚才
- 背景
- 菊名 香 加藤三郎 井上絵里
相川みどり 新田彩乃 杉浦礼華
有田茂夫 小川ひとみ 椋本由里
兼子 裕 - 撮影
- 旭プロダクション
児玉純也 藤坂めぐみ 古屋和人
五明真利 上條智也 大久保益野恵
高橋賢司 柳田貴志 石山智之
大久保潤一 渡邉有正 作間達也
渡辺 瞳 佐々木睦美 籠屋大志
高橋祐介 安井正論 - 撮影監督補佐
- 森谷若奈 元木洋介 羽田 巧
- 撮影協力
- SILVER LINK.
浅野宏彰 柏原 進 新谷優子
瀬川孟彦 小島丈茂 - 3DCGIディレクター
- 真田竹志
- 3DCGI
- 中島 豊 鈴木知美
佐々木俊宏 - デジタルワークス
- SILVER LINK.
浅野宏彰 柏原 進
新谷優子 - タイトルロゴデザイン
- 中西康祐
- プラグイン協力
- 渡辺賢吾
- フォント協力
- フォントワークス
白船
文字おこし作業…テキスト媒体で各話のクレジットを提供してほしいです(切実)。
1クールの全てのアニメのクレジットを写経したら悟りが開けるかもしれん…。