去る7月14日、
7/14 新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol. 29
Blu-ray BOX発売記念『まなびストレート!』真夜中の文化祭
と題して、イッキ見オールナイトが行われました(詳細情報)。
一般的なオールナイトイベントと同様、トークショー+本編上映という内容で、池袋にある新文芸坐で行われました。
『まなびストレート!』は本当に本当に大好きな作品で、私のアニメ人生を左右したアニメの一つです。そんなアニメでしたから、オールナイトイベントが開催されると聞いて、思い切ってチケットを買ってみて、そして参加してみたのでした。
オールナイトイベントに参加して、本作品に対して沢山言いたいことが出てきました。沢山記事を書きたいのですが、本記事ではトークショーの部分に焦点を当てて書きたいと思います。レポとか言いつつ、私の意見が随所に散りばめられています……。
なお小ネタについてはちょこちょこ追加していくかも。
なお、念の為ですが、本編のネタバレを含みますのでご注意下さい。
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イベントが面白かった理由を書け
トーリ:「つまりコレに、どうしてトークショーが面白かったかを書けって事?」
喜美:「フフフ愚弟、悩むことは無いわ。 アンタの心のなかにある面白かったところを書けばいいのよ」
トーリ:「えートークショーの良かったところー。うーん上手く言葉に出来るかなー」
OP規制についてコメントがあって、上手く言葉に出来ない
2話の完成には1年掛かったのに最終話のコンテは3日で切ったので、上手く言葉に出来ない
夏休み回(未放送話)が本来放送されるべきだった時系列で上映されて、それが抜群で上手く言葉に出来ない
タータンチェックのスカートは作画が大変だからなるべく全身のカットはやめろよといっていたのに結局沢山スカートのカットがあって、上手く言葉に出来ない
点蔵:「――ず、随分とスラスラ出るで御座るな!」
素晴らしいトークショーだった
さて、上映前のトークショーは思わず「時間が足りないよ!!」と叫ばざるをえないものでした。もっと聞きたい、もっと聞きたいよおお、というぐらい沢山いろんな話が聞けました。
私自身こんなに『まなびストレート!』という作品が好きなのにもかかわらず、これまでイベントごとに参加したことがなかったことも、余計に良いトークショーだったと感じたことに寄与したのでしょう。しかしそうは言っても、なるほどと思う部分がありました。
さて、以下つらつらと書いていきます。なお私は前述したようにあまりイベントごとに参加していなかったり、各種資料に目を通し切れていないところがありますので、特に初出の情報でない部分もあると思いますが、ご了承下さい。
オープニングの表現規制について
オールナイトイベントでは、「まなびのオープニングは、表現規制を強いられた」ことが当たり前のように前提として語られていましたが、今一度、簡単に詳細を振り返ってみましょう。以前BPOに取り上げられる、アニメに対する意見とか表現規制問題とか - 隠れてていいよという記事でも書きましたが、改めてまとめてみようと思います。
まなびストレートのOPは修正された
そもそも『まなびストレート!』のオープニングアニメーションがどんなものかというと、まなびを始めとする主人公5人が、自分たちの通っている高校、すなわち聖桜学園の校舎やグラウンドに、スプレーで落書き(スタッフ名など、いわゆるクレジットの内容)をして回るというものです。
ちょっとメランコリーな主題歌に合わせて、主人公たちが躍動感を感じさせながら、走り回ります、スプレーします。あまりよろしくないこととはいえ、動画リンクを貼らせて下さい。
さて、彼女らがスプレーで書いた文字は書いたそばから「消える」演出があります。しかしその「消える」演出は、本放送時は7話から行われたもので、6話まではクレジットが消えませんでした。
なぜ当初の演出から「消える」演出に変わったのか。それは落書きする演出について抗議があったからです。
当時は割と話題になりましたが、放送倫理・番組向上機構、通称BPOに以下のような意見が寄せられたのでした。
アニメ番組。オープニングでスプレーでそこら中に落書きする演出があるが、こういう演出はやめたほうがいい。なぜならば、これを見た子供は真似をする可能性があるからだ。次に本編の中で、ミゼット型の車に女の子の生徒を荷台に乗せて先生が買い物に行くシーンがあるが、そもそも車の荷台に人を乗せて走行するのは、交通法に違反するはずではないか。ましてや教師がその車を運転して行くというのはとんでもないことだと思う。(同様意見1件)
2007年度1月 視聴者の意見(36歳 男 埼玉)
二次元と現実を区別できてないのはてめぇだろ、と思わず突っ込みそうになりますが、実際に対処せざるを得なくなったのが真相だそうです。「だそうです」、というのは私の知る限りでは、正式に何かしらの文書で告知はされていないからです。ただ、諸々の情報から推察することは可能でした。
ちなみにDVDでは修正後のOPしか収録されていないため、当時の録画を消してしまった私は、ひどく後悔したものでした(今もしていますが)。
7話が放送されたのは2007年の2月中旬頃で、BPOへの苦情が来た日時は同1月15日、またBPOさんの記事の公開は2月に入ってからですから、かなり迅速に対応したんだなぁという感じです。
さて、ちょっと扱いが難しい話題だけに、今回のトークショーではOP規制については語られないんじゃないかなぁと思っていました。しかし予想に反して、ちょろっとではありますが、当時の経緯をufotableの代表取締役である近藤さんが話してくださいました。
- 当時この演出は変えざるを得なくなった。抗議があったから(笑)
- 某テレビ局(筆者注:イベントでは具体的な名前が出てた)に近藤さんを含め3人(筆者注:テクニカルディレクターの平尾さんとプロデューサーの山本さんだった気がするけれど、ちょっと記憶が曖昧)が呼び出されたりした
- テレビっていろいろと面倒くさいですよ(笑)
- 1話の段階で最終話の内容(まなび達が再会して校舎にスプレーで落書きするという内容)は決まっていた
みたいな流れでした。このように、確かにそれほど深いお話があったわけではありませんが、公式の場で規制の話をきちんと聞けたことは、大きな収穫でした。
特にこの規制について、作り手側は辟易していたんだよ、ということを聞けて、私はとてもホッとしてしまいました。
私の中では、今回の近藤さんの発言をもってようやくOP規制についてのわだかまりを捨てることができました。アニメの表現規制についてはもちろんずっと考え続けていますが、こと『まなびストレート!』という作品については、一旦落ち着きました。
日常の何気ないシーン
今回のトークショーでは、「まなびを作っている時は、かなり大変だった」ということをしきりにお話されていました。中でも、テクニカルディレクターの平尾さんの苦労話というか、平尾さんが頑張ってたよね、ということが多く話されていました。
2007年のアニメとしては、いろんな挑戦をした、という事を話されていました。いろんな挑戦とはどういう意味かというと、私の拙い知識で言えば、07年あたりというのはいわゆるデジタルアニメのノウハウがようやく溜まってきたかどうかの分水嶺で、すなわち07年にあれだけ動かすのは凄いことだ、みたいな感じです。トークショーでは例えば、まなびが1話で、橋の上からジャンプして着地する一連のシーンとか、当時としては考えられない演出だ、やってはいけない動きだったよねー(笑)、と笑い話として語られていました。また、今のアニメのクオリティは異常だよねー、と終始お話されていました(アニメ製作のさらに詳しい内容や補足については、誰か詳しい人にお願いします)。2007年前後のアニメ本数の多さにも触れて、あの当時はufoだけでなくアニメ業界全体がヤバかった、と振り返っておられました。
そんな当時の話の中でも印象に残ったのは、「アクションシーンだけでなく、日常の何気ないシーンできっちりと動かした」という部分でした。視聴者はあまり気づいてくれないけど、まなびは細かい部分で相当にこだわっていて、というかそういった細かい点にきちんと力を入れているから、すげーんすよ! という内容でした。当時、あんなにやってた作品はないんじゃないか、と。
特にその中で、2話は何度も推されていました。そうやってトークショーで聞いた後に上映で2話を見たら、確かに動いてるなぁ……と思わざるを得ませんでした。その2話が、なんと完成までに1年かかっているというお話があって、本当に驚きました。同時に、最終話は3日でコンテを切ったという話もあって、あぁ凄まじかったのだなぁと改めて思いました。
また細かなところにこだわっている例として、6話「シナモンシュガーレイズド・ハピネス」において、みかんとむつきが海辺を歩くシーンの、みかんが欄干に手をタンタンタン、と当てるシーンを挙げられていました。
2秒と無いシーンで、且つストーリー全体としてものすごく重要なシーンというわけではない。しかし非常に動いていて、綺麗。こういった細かな仕草を丁寧に描いていることが凄いと、あらためて感じました。
グラデーションやスカート
また技術的な話として他に面白かったのは、髪のグラデーションやタータンチェックのスカートの難しさの話でした。
あの独特のグラデーションを自動化するためにはどうしたら良いのかというお話の中で、「線をしゅっと引いたら(笑)、グラデーションになるようにシステム化した」という内容を聞いて、髪のグラデーション一つとっても大変だったことが伺えました。
またタータンチェックのスカートについて、作画や彩色・撮影が大変だから、「あまり全身カットをやらないように」と近藤さんがスタッフ(特に平尾さんだと思いますが)に仰っていたのに、結局、スカートを映すカットを沢山やった(笑)と、苦笑いしながら当時を振り返っておられました。
音楽のタイミング
さらに音楽についても興味深いお話がありました。『まなびストレート!』は劇中のBGMが素晴らしいことに定評がありますが、今回のトークショーではそのBGMのタイミングについてのお話が興味深かったです。
通常、音楽をいつ流すかどうか、といった音楽に関連することは音響監督がやることが多いそうなのですが、『まなびストレート!』においては、もっというとufotableでは、音響監督に任せるのではなく、絵コンテだとか演出の人が全部やる、みたいな伝統みたいなものがあるそうです。『まなびストレート!』では、それを平尾さんがほぼ全てやったそうです。コンテの段階で既に音楽の指示が書いてあったりしたそうです。
モチモチ(笑)
みかんの声を当てていらっしゃる野中藍さんもトークショーに参加されていましたが、その中で「まなび達のあの、モチモチ感がいいですよねー」というコメントから派生したお話が面白かったです。というか、あのプニプニ感を「モチモチ感」と評する野中藍さんが面白くて、会場はかなり盛り上がりました。
モチモチ感に関連して小笠原さんが「当初まなびたちは中学1年生という設定でデザインされていたが、それが段々と変わっていって、最終的には高校生になって……さすがに高校生であれはないだろ、みたいな感じになった(笑)」などとお話されていて、同様に会場は笑いに包まれました。
キャスト陣が豪華
「今思えば、某4人組のアイドル声優さんがモブで出ていらっしゃいましたよねー」という話題がトークショー中に定期的に持ちだされて、その度に会場では笑いが起こっていました。
もちろん4人組とは寿美菜子さん・高垣彩陽さん・戸松遥さん・豊崎愛生さんで結成されたスフィアのことです。また4人だけではなく、学園祭ライブでは茅原実里さんが歌ってくださったりと、今思えば、いろいろと豪華だったよねぇと振り返っていらっしゃいました。
また林原めぐみさんが聖桜学園の学園長の学生時代の声を当てられていたことについて、「主題歌を歌ってもらっていたから、ぜひ本編でも何かしらで関わって欲しかった」という想いのもと、スタッフの方々でお願いをしたそうです。
6.5話について
DVD最終巻に収録されたテレビ未放送話「夏だ! まなびだ! 強化合宿だ!」、通称「6.5話」。本作品は本来6.5話を含めた全13話構成の予定だったのですが、枠(スケジュール)の関係で1話削らざるを得なくなり、6.5話がなくなく放送されなかったのです。
今回のトークショーでは、「6.5話をやれなかったことは本当に後悔している」、というお話がありました。6.5話では「働くこととはどういうことか」という内容を扱っているのですが、それを「作中のちょうど真ん中で今一度、ちゃんと描いておきたかった」、と仰っていました。
私が説明するまでも無いですが、『まなびストレート!』という作品の世界観は少し特殊です。少子化が進み、高校や大学に進学することが当たり前でなくなっていて、むしろ働くことがカッコいい、などと捉えられている世界。作中では「なぜ高校に行くのか」という理由が、大きなテーマとなっています。
まなびたちは学園祭の実施という大きなイベントに関わりながら、自分の生き方について考えます。特にみかんについては「自分の生き方」についての内面描写が多いのです。6.5話でも、みかんは「なぜ高校に行っているのだろうか、働くとは何なのか」ということをずっと考えます。
戻りますが、そういう意味で「作中のちょうど真ん中で今一度、ちゃんと描いておきたかった」のだと私は理解しています。
ちなみにBDの収録順は、本来の収録順、すなわち6話、6.5話、7話となっているそうで、上映時もその順番で放映されました。6話においては7話の予告が削られ、6.5話の後に移動していました。こういう細かい部分の修正、好きです。
ところでBDBOXですが、パッケージが金曜日に完成したばかりだそうで、今回のオールナイトイベントではその完成パッケージを拝むことができました。下の画像はAmazonへリンクしています(Notアソシエイト)
正式「まっすぐゴー!」
トークショーも終了、最後に一言ずつコメントをもらっていく場面で、野中藍さんが「ぜひ、みんなでまっすぐゴーやりましょう!」っとおっしゃったことで、会場皆で、野中藍さんの指導のもと、まっすぐゴー!をやりました。
「まっすぐゴー」は、単に腕を前に出すだけではなく、まず両手を上にやり、そして後ろに引いて、最後に前に突き出すんだよ! という正式「まっすぐゴー!」のレクチャーを受けました。
そして皆で「まっ・すぐ・ごおおおお」とやったのでした。最高でした。
ちなみに野中藍さんがコメントを求められたのは最後ではなく、その後に平尾さんと近藤さんがまだコメントを残していたために超絶微妙な空気になり、野中藍さんが「これって最後にやるべきでしたかね(笑)」的コメントをされて、会場は大爆笑でした。
その他細かなネタ
- 「一揆! 一揆!のシーンは今考えるとやばかったよね(笑) よくできたもんだ」
- 小笠原さん、登場時の自己紹介で藤田咲さんのモノマネ
- 全体で300人弱のお客さん、女性は10人から20人くらい。「女性のファンの方が多くて、嬉しい!」
- BDBOX発売にあたって野中藍さんと堀江由衣さんが二人でインタビューを受けたが、「あの時はあんなことがあったねー」と、まるで同窓会のような雰囲気があった。
- 生徒手帳やバイクといった小物などにはこだわっていた。小笠原さん「新制服の回で、新しい生徒手帳についてもデザインしているんですが、もろiPhone。先取りしてるから!」
- 映画館に人がたくさん入るっていうのはいいことだ! ufo cinemaも中々満杯にならない
- 文化祭音源はメジャーの有名ドコロのバンドが当てている
- ufotable cafe は現在FateZeroフェアで女性客が圧倒的に多い。まなびブースを一部設けたら、男性も来てくれるかしら
終わりに
ノートにメモしたりしていなかったので記憶を辿り辿りのレポでしたが、いかがだったでしょうか。ちょっと自分の意見を差しこみすぎましたが、それもまた良しということで……。
今回はトークショーをメインとした記事ということで内容にはあまり触れませんでしたが、別記事で1本は上げたいと考えています。
『まなびストレート!』は、本当に素晴らしい作品だと、今回見返して、改めて思いました。こんな素晴らしいアニメをリアルタイムで視聴できたことに感謝したいし、こんな素晴らしいアニメに出会えてよかったと心から思います。こんなアニメに出会えてしまったら、アニメを見ることをやめることなんてできませんよ。
さて、BDBOXは2012年7月25日発売。まなびが好きだった人も、今回オールナイトイベントで興味を持った方も、そしてまだ見たことがない人も……高画質でぜひ、この作品に触れてみてほしいです。
なお、ufotableの該当店舗またはWEB SHOPで購入すると、ジャケットにならなかったイラストのA4ポスター6枚セットがもらえます。Amazonなんかと比較すると価格は高めになっちゃいますが、興味のある方はぜひ(リンク)。
なお本ブログでは『まなびストレート!』に関連して、幾つか記事を書いています。執筆した記事のまとめは、以下リンクから。
また、ちょっと停滞気味の『まなびストレート!』企画に関連しては、以下の2つをぜひご覧ください。