「僕の妹は漢字が読める」試し読みしてみた、革新的すぎる内容に言葉が出ない
先鋭的すぎてこの感動をうまく言い表せない とりあえず読んでみてほしい URL
ライトノベル『僕の妹は漢字が読める』との出会いは、@numenunuさんの上記ツイートでした。以下に、簡単な情報を。
なおHJ文庫では、毎月刊行される作品の試し読みをすることができます。
『僕の妹は漢字が読める』の試し読みページは以下のリンクです。
本作品は、発売前にネットでワッと盛り上がったように思います。私も発売前に立ち読みをしたのですが、これは買わないといかん! という気持ちにさせられたことを覚えています。
関連:Togetter - 「HJ文庫から出る『僕の妹は漢字が読める』への大勢の期待感 #kanji_yomeru」
発売後しばらくは本作品に関する記事を幾つか目にしましたが、以下の記事は特に笑えるものでした。
山本弘のSF秘密基地BLOG:『僕の妹は漢字が読める』の感想がひどい件
この記事は、ラノベ『僕の妹は漢字が読める』がマジキチ これがラノベの最先端だ! - ゴールデンタイムズというブログ記事に寄せられた脊髄反射的なコメントに対して、山本弘さんが全力で突っ込むところが笑いどころ。
>地の文が酷いw
>ラノベってこんなレベルばっかりなの?>設定以上に文章がひどい
>これでプロの作家を名乗れるんだから、ラノベはマジキチ……あのさあ。
山本弘のSF秘密基地BLOG:『僕の妹は漢字が読める』の感想がひどい件
君ら、一ページ目に書かれている設定、ちゃんと読んだ?
これは漢字の読み書きができない主人公が書いたハチャメチャな文章を、現代の読者に向けて「意訳」したっていう設定なんだよ。それで文章が上手かったら、逆におかしいだろう。
「我輩」の一人称のパートを読めば分かるように、作者はちゃんとした日本語を書ける人なのだ。わざと下手な文章にしているのである。
この記事が面白かったのもあり、早く読まないと! と思っていたのですが結局9月に入ってからの読了となりました。
試し読みでの笑撃
初めてこの作品を試し読みした時、衝撃…いや笑撃を受けたように思います。
『僕の妹は漢字が読める』,pp5.
本書は二十三世紀に発行された「かんじよむ いもうと」(イモセ・ギン著)を改題、意訳したものです。
訳出するにあたり、原文を逐語的に訳すのではなく、二十一世紀の読者にも読みやすい文章となるよう工夫を施しました。
開始1ページでこんな記述があったものですから、何やらおかしいぞ…とワクワクせざるを得ませんでした。
さらにはこんな記述も。
『僕の妹は漢字が読める』,pp7.
表紙に書いてある漢字は読めなかったが、添えられているふりがなでどんな本かわかった。近代文学の原文版だ。漢字がたくさん使われている昔の小説だ。
そう、本作品の設定では普通の人は漢字が読めません。つまり以下のようです。
『僕の妹は漢字が読める』,pp8.
僕たちがふだん使う現代文では漢字を一切使わない。漢字は近代文――十九世紀後半から二十一世紀後半まで使用された――を最期に、役目を終えた。
こんな吹っ飛んだ設定なわけです。
なお本記事では、あらすじをダラダラ書くことはやめておきます。
ここまでで興味をもった方は、是非一度立ち読みしてみてください。ご自身で目を通すほうが、独特の空気を理解しやすいかと思います。
本作品は特設ページも作られているようですので、そちらにもリンクを貼っておきます(こちらのリンク先からも立ち読み可能です)。
「僕の妹は漢字が読める」特設ページ
では本記事は何を書くのか。逐一内容に言及していくのも楽しいかもしれませんが、今回は作品内の「ある点」について感じたことを掘り下げようと思います。
ここからは本作品のネタバレ(というほどでもないかもしれません)を含みますので、お気をつけ下さい。
(RSS購読などで、続きを読む表記が機能しない時の緩衝材)
こんな作品だったのか
本作品を立ち読みした時は、まさかタイムスリップものとは思いもよりませんでした。つまり何を期待していたのかというと、一章のようにひたすらオオダイラ先生の高尚な文章が綴られる、もしくは主人公が高尚な文章を綴るのだと思っていたのです(あながち間違ってはいませんが)。
ただ、いい意味で期待は裏切られて嬉しかったのです。特にオオダイラ先生の性転換に出会えたことは、このためだけに本作を読んでよかったと思えるぐらいに良かったです。これはかなり個人的な話ですが、男性が小さな女の子になるシチュエーションが大好きなんです。
ここからは本作品を絡めながら、性転換について掘り下げます。「アブノーマルすぎる!」と感じたら直ぐに逃げましょう。
男の子→女の子
オオダイラ先生が小さな女の子に変身するシーンを読んだ瞬間、『ふたば☆ちゃんねる』というシリーズ作品を思い出しました。画像掲示板のふたばではなく、同人サークル『夢見奏』さんが作っておられるR-18なゲームシリーズです。
このシリーズ作品は、不思議な力で男の子が女の子に変身してしまうというのがコンセプトです。いわゆる、TSF(transgender fiction、異性への性転換)を扱った作品です。
参考:TSF - Wikipedia
さて『僕の妹は漢字が読める』では、オオダイラ先生という70歳の老紳士が、見た目10歳の金髪ツインテールなロリっ子に変身します。先ほど紹介した『ふたば☆ちゃんねる』シリーズでも、さすがに老人は変身しません(シリーズ通して確かそうだったはず…)。
私は当初「さすがに70歳の老紳士がロリっ子になっても萌えないだろうなぁ…」と思っていました。しかしですね、その気持ちはもろくも崩れ去りました。
性転換シチュのどこにフェティシズムを感じるのか
性転換シチュのどこに萌えるのか、幾つか考えてみます。
変身前後の心情変化
変身前後における、キャラクターの心の変化は分かりやすいでしょうか。男の時に何か悩みを抱えていたり考えていたことがあって、だけどそれが女の子になって考え方が変わったり再び悩んだり…といった心情変化に萌える。
感情移入による倒錯感
キャラクターに感情移入することで倒錯感を味わうこともできるでしょう。「今まで男の子だった自分が、小さな女の子になった。女の子の状態で男の子に恋をしたらどんな気持ちなんだろう」といった、完全にキャラに入り込むことで性的倒錯に陥るタイプです。
メタ的な倒錯感
「おい、変身前は男なんだぞ。それなのに変身後の女の子に萌えている自分は大丈夫か? でも可愛いのは事実なんだよ…」と感じている自分に倒錯するタイプも考えられます。
おそらくは、上記3つのタイプ以上のものが複雑に絡み合って、フェティシズムを感じさせるのだと思います。
性転換シチュに一家言ある方、ご意見お待ちしております。
性転換について考えるきっかけを作ってくれてありがとう
では今回、私がオオダイラ先生に感じた萌えはなんだったのか。
おそらくは上述した3つ目、「元々は老人なのに、変身後のロリっ子に萌えてしまっている自分」に倒錯していたのだと思います。
「老人→ロリっ子」というシチュエーションに、予想以上に興奮してしまったのです。中身は変態老紳士、見た目は金髪ロリっ子…ありがちなシチュエーションかもしれませんが、しかし、萌えるのです。
ただ残念ながら、性転換シチュを生かしたシーンは殆どありませんでした。この部分については、おそらく刊行されるであろう2巻に期待したいと思います。もちろん、妄想で幾らでも補完することが可能でしたが。
終わりに
『僕の妹は漢字が読める』の内容から、大きくそれてしまいました。なお本作品は性転換をメインに扱った作品ではないので、そこだけは勘違いなさらないようお願いします。
最初にも述べましたが一章の立ち読みができますので、何かビビっときた人は、読んで損はないかと思います。
中々に先鋭的な作品でした。