PVを見る限り俺TUEEE感の匂いがするため、気楽に見れる作品になりそうという意味でチョイス。 主人公は真面目系っぽいので、ラッキースケベではなく天然ジゴロ系だと想定されます。ヒロイン含めた女の子が可愛い予感なので、ベタでもいいので顔を赤らめさせるシーンが沢山あれば良いなと思います。 なんだかんだ、最終話までちゃんと見ることになるだろうと思います。
2020年見なかったアニメ - 隠れてていいよ
最近書きました、見ていないアニメに関する記事内で本アニメについて上記のように評していました。
面白そうだなぁといつか見たいと思っていたのですが、なんとなしに昨日1話を見たらめちゃくちゃ面白くてですね、気づいたら今日見終わっていました。
熱が冷めないうちに感想を残しておこうと思い記事を書きました。
本記事では、アニメのネタバレを含みますので、その点ご留意いただければと思います。
なお原作は未読で、アニメのみ視聴した状態です。
物語を進める装置としての魔王
俺TUEEEというか、ただの強い魔王でした。事情により2000年前の魔王が現在に転生してくるところから物語が始まるので、次世代の魔王を育成しようとしている現在では強くて当たり前という世界観なのでした。
ですので、だいたい力でねじ伏せて解決することが可能です。
これだけだとただ無双する物語なのですが、本作品のポイントは、2000年前になぜ魔王が転生することとなったのか、というところにあるのは視聴された方なら御存知の通り。
真の平和を望んでいた魔王が転生後に見たのは、確かに平和ではあったものの、何かしらの良からぬ企みにより改変された都合の良い平和でした。
話の主軸は、魔王がこの都合の良い平和の矛盾を解明していくところにあります。
ですので最終的なゴールは、アニメ化された部分までで言うと「魔王が、歴史を改変した黒幕に気づき、倒す」となるわけです。
もちろん、このゴールに向かって物語が肉付けされていくことは一般的な物語と同じで変わりません。
ですが、この作品のすごいところは可能な限り無駄なものを削ぎ落としてストーリーを進めようとするところです。
ざっくりとしたストーリーの流れは以下なのですが、無駄なものが削ぎ落とされています。
- 魔王、転生して入学試験を受ける、そこでヒロインのミーシャと出会う(ヒロインのミーシャが、運命を帰る魔王と出会う)
- ミーシャの生い立ちの鍵を握るサーシャの登場(即オチ2コマ)、そしてミーシャ問題の解決
- 剣が得意な転校生の登場、勇者学院が舞台となる歴史改変の謎の解明
普通、物語の骨子をベースに細かなシーンが肉付けされていくため、普通のアニメだったらミーシャ問題の解決くらいまでで1クール使っていたでしょう。
なお肉付けとは具体的には、物語・世界観の説明であるとか、キャラクターの掘り下げであるとか、キャラクターのサービスシーンであるとかそういうものです。
それらが本作品に全く無いわけではありませんが、あっても1シーンでサクッと進むのです。
結果として、「あれ、全然説明無いけどどういうことや」っていうことがたくさん出てくるのですが、有無を言わせずストーリーを進行させることで感じさせないようにしているのです。
例えば第1話で登場するミーシャは、とても魔力が強く、魔王もすぐに認めるほどのすごい人物です。
ただしバックグラウンドにほぼ説明がないため、突然魔王と親しくなったように感じ、なぜヒロインポジに収まったのかは想像でしか感じられません。
魔王は魔王で「何だお前ら、そんなことも知らんのか」と淡々と事実を説明して粉砕していくので、ふーんそうなのかって流してしまいそうな気になるんです。
例えば2話で登場するサーシャは、即落ち2コマよろしくこの2話内でツンからデレます。初登場であそこまで見下していたくせに、終わり頃にはキスまでするとかどういうことって話ですよ、ここまでのスピード感ある展開は久々に見ました。もちろん魔王が、コンプレックスである魔眼に対してきちんと向き合ってくれたからという強い理由があるのですが、その理由の説明のために描かれる表現や話の展開がストレート過ぎるのです。
例えば物語全体を通して、主人公が誰も扱えないような魔法を扱ったり先生の間違いを正したりしたとき、普通なら「オレ何かやっちゃいました」な持ち上げテンプレが行われることが多いですが、それがほぼありません。あったとしても、嫌悪感を感じない一瞬でサラッと流されます。魔王が完璧すぎるがゆえに嫌味もありません。
具体例をあげればきりがないのですが、こういった工夫が随所に散りばめられていることで圧倒的にストーリーの進行が早いです、しかも納得度が高くです。
個人的には、このレベルの進行の早さがアニメには求められると思います。飽きさせるどころか、次を早くどんどん見たい、本のページを次々捲りたいという欲求に抗えない……そんな気持ちにさせてくれるのです。
これは本当に画期的だと思っていて、つまり圧倒的な力を持つ魔王というものの存在を物語を進めるための装置としてうまく利用しているということだと思います。
作者はこの歴史的な物語を書きたいという欲求がまずあって、そこに魔王という絶対的なキャラクターを配置していったのではと推察してしまうほどには。
見方によっては説明もなくただ単に俺TUEEEするだけの作品じゃんと思われると思うのですが、ぜんぜん違うと声を大にして言いたいです。
歌を歌うよ
さて他にも色々書きたいことがあるのですが書き出すと長くなるので、もう1点だけ触れておきます。それは歌、なんです。いや、これは触れずにはいられないでしょう。
作中、配下からの応援する力でパワーアップすることができるアスクという魔法が登場しますが、魔王がそれを行使する際「さぁ、俺を応援しろ!」と親衛隊、ファンクラブの女の子たちに命令します。
すると女の子は、おそらく自作だと思われる魔王を称える歌を歌って応援するんです。急に歌うよ、ですよ。
乾いた笑いではなくシュールなギャグとして成立しているところが素晴らしいのです。普通こういったシーンは寒くなりがちなんですが、めちゃくちゃ真面目に描写されてしまうことによってシリアスな笑いへと昇華されるんです。
しかもすごいところはですね、この歌のシーン3回もあるんです(確か3回、違ったらすいません)。そして最後の1回はなんと最終回にぶっこんできたんです、しかもラスボス的な敵を倒すシーンでですよ。
「歌え! 哀れな亡霊に、レクイエムを聞かせてやれ!」という号令のもと魔法アスクを発動。さらっと歌うシーンが流されるのかなーって思ったら、めっちゃしっとりとしたイントロが始まるんです。
この瞬間笑いが無意識に出ました。
そしてファンクラブの皆様方がめっちゃ歌い出すんです、真剣に。ストレートな歌詞がたまらなくてですね、シリアスな笑いの極致です。
歌い終わるまで本当に腹を抱えて笑い続けてました、そして同時にこれを成立させてしまうこれまでの物語の描き方に脱帽しました。
加えてですね、魔王がこの魔法を、ラスボスを倒す重要なシーンで使っているのも見逃せない点なのです。
魔王のファンクラブの皆さまの、魔王を愛するという気持ちを強く強く信じているんです。だから、こんな場面でもアスクを使って歌えと魔王は言うんです。哀れな亡霊に聞かせてやれと。愛の尊さを。
最終話のサブタイトルが『世界が愛に満ちるように』となっているのは偶然ではありません。
魔王の名言のオンパレードの中、BGMでひたすら流れ続ける歌。もうね、たまりませんよ。この数年ガッツリとアニメを見ていなかった私でも分かります、この最終回は近年まれに見る最終回だと思います。
終わりに
他にも色々書きたいことがあるのですが、一旦このあたりで。久々に素晴らしい作品に出会えました。これだからアニメはやめられませんし、できればリアルタイムで見たかったという後悔も少しあります。
原作も時間があれば読んでみたいですし、このアニメの構成が原作をどの程度リスペクトしているのか、はたまた構成を変えているのかも考察してみたいです。
アマゾンプライムビデオで現在無料公開中なので、興味のある方はぜひご覧になってみてください。