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ロウきゅーぶ! 原作を読んだら更にハマった! アニメと原作の照らし合わせ

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ロウきゅーぶに完全にハマりました。

元々3話まで見てハマり気味だったのですが、原作1巻を読んだことで完璧にハマってしまいました。

本記事では主に、ロウきゅーぶ! 原作1巻読了後のアニメに対する思いを書き連ねています。その性質上、原作1巻(アニメの3話まで)のネタばれを含みます。なお4話の核心をつくようなネタばれはしていないつもりですが、保証はできかねますのでご自身でご判断くださいませ。

なお、長文になっているので以下の簡単な目次を参考にしていただければと思います。

簡単な目次

アニメは原作の重要ポイントを外さない
アニメではストーリーがサクサク進められているのにも関わらず、描く必要のある心情等をきっちり描いています。このことについて具体例を上げて説明しています。
スポ根とロリについて
原作はかなりスポ根寄りだけれど、アニメはロリ寄りになっている点について、具体例を上げながら考察しています。
原作とアニメの心理描写等々の違い
原作1巻を読んだ私が、アニメを見返してみて「なるほどっ」と唸ったシーンについて個別に幾つか解説しています。例えばフリースロー10本イベント、真帆の抱きつきシーン、智花の心情。
スタッフの愛を感じるシーン
2つの例を上げ、制作側が如何に愛を注いでいるかを解説しています。






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原作の重要ポイントを外さない。

アニメは、原作1巻を丁寧に映像化していると感じました。なぜなら、物語の重要ポイントを外さないからです。端的に言うと原作ファンに「このシーンを無視するのかよ!」と思わせないストーリー作りです。これは原作付きアニメを語る際には必ずと言っていいほど持ち出される話ですね。

1巻で特に重要な部分を私なりにまとめました。

  • 智花は一度バスケ部をやめている。だけどバスケを続けたいと強く思っている。
  • もし試合に負けたらバスケを二度とやらないつもり。自分がバスケを続けることで今の仲間との空間を壊したくない(仲間愛)。
  • 昴は口では強がっているが、本音では「バスケを忘れられない」。自分の気持に正面から向き合えないが、智花と接しているうちに、その思いが爆発する。昴の心情変化(バスケ愛)。
  • 真帆、紗季、愛莉、ひなたの4人と智花の関係。真帆をキッカケに女子バスケ部が作られることになったという事実。
  • 上に関連して、智花一人がバスケの経験者という、一見奇妙なバスケ部の意味。バスケに興味のなかった4人が、何故バスケ部に所属して智花を助けようとしているのか。
  • ミホ姉(昴の叔母)の、破天荒に見えて女バスや昴のことをちゃんと心配している綺麗な心。

細かい部分はまだまだありますが、これらについてアニメでは上手く表現されていると思います。


この「上手く」というのがポイントで、つまり厳密に再現しているとは限らないのです。極論、ゴールが合っているならばその過程が多少違っていても問題がないということです。
原作の心理描写をダラダラとアニメ化していたら、幾ら尺があっても足りません。必然、ストーリーに支障を来さぬよう且つ理解してもらえるような構成が必要になります。
少し具体的に考えてみましょう。

昴と智花の遭遇イベント

例えばアニメ2話『小さな少女の願い』において、ママさんバレーをやっていたために自主練ができず帰宅していた智花が、昴に偶然出会うシーンがあります。その後、昴の自宅に呼ばれ物語は一気に動き出すことになるという重要なイベントシーンなのですが、原作では智花に出会う筋道が違います。
原作ではママさんバレーの臨時コーチを務めることになったミホ姉に弁当を届けることになった昴が、朝練しようとやってきた智花に偶然出会うという流れです。フリースローイベントは、智花に出会う前日に起こっています。

仮に原作通りに話を進めるとするならば、

  • フリースローイベント及び自己のフォームとの葛藤(以下の前日)
  • ミホ姉にお弁当を持っていくかどうかを決める母とのやりとり
  • 届けた先での、ミホ姉とのやりとり
  • 必至に届けに来てしまった気持ち、つまり女バスのことが気にかかっている自分の気持ちとの葛藤

という流れをクリアする必要がありますが、これを映像化すると非常に尺を取られてしまうでしょう。特にフォームと女バスの葛藤部分は心情描写が絶対に必要なため、難しい。
ではこの部分をアニメはどう処理したのかというと、フリースロー10本イベントと智花遭遇イベントを同日にすることで解決しました。
時間軸的には、午前中にミホ姉が昴の家に訪ねてくることでミホ姉が女バスと昴の事をとても気にかけていることが達成され、さらにフリースローイベントも午前中に行うことで、昴の葛藤を描くことに成功します。
河原で智花と遭遇したときには、概ねイベントが消化できているというわけです。


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昴の葛藤を描いた後に智花と遭遇させれば良いのであって、どこで遭遇するかは大きな問題ではありません。アニメ化するにあたって上手く原作を構成しなおしたなぁと強く感じました。


繰り返しになりますが、極論、ゴールがあっていればその過程が多少違っていても問題がないということです。描かなければいけない本質を間違わなければ、イベント順序が変更されようとイベント自体が削除されようとそれほど大きな問題ではないわけです。


絶対に外せない昴の葛藤を、尺を削減しつつ綺麗にまとめたことは、あっぱれです。

スポ根とロリコン

このように挙げればキリがないのですが、原作の重要部分を上手く抽出して再構成していることが分かります。
逆に、重要な部分はきっちり描いているからこそ、描かれていない部分を考えることでアピールしたい製作者の意図が見え隠れします。

原作と比較してそれほど描かれていない部分、それはスポ根です。

ロリアニメの方が、そりゃ話題性がある

原作と比較して明らかに分量が少ない部分、それは「ちゃんと練習している」という描写です。
スポ根は成長物語なわけですから、そういう意味ではアニメでも成長は見て取れます。だけど、きつい練習描写が少ないために、「こんなに一気に上手くなれるかよww」といった気持ちが視聴者に生まれやすいのです。
では何の理由もなく練習描写を減らすのかというと、そうではありません。きつい練習描写の代わりにアニメでは、原作にはないサービスシーンを足したり、また原作の可愛い描写を長くしています。例えばシャワーシーン、ドーナツを食べるシーン、メイド姿からスパッツ・ブルマに着替えるシーンは原作にはありません。またミホ姉登場シーンでは、原作ミホ姉を1.5倍くらい(見た目も言動も)幼く描いている気がします。

つまり、ロリ押しなんです。スポ根描写は意図的に減らされているのです。
原作付きとはいえ多くのアニメが放送される中で注目されるためには、「小学生の可愛い女の子」という設定は非常に魅力的です。事実「小学生は最高だぜ!」に代表されるように、例え原作のスポ根部分を削ることになってもロリアニメとして注目される結果になっています。

スポ根をロリコン

ところでアニメ3話では、智花が昴に電話するシーンがあります。緊張のあまり声がうわずってしまう、智花が超可愛いシーンなのですが、実はこのシーンは原作にありません。
厳密には二人が話し合うシーンはあるものの、原作では智花が昴の部屋に来て作戦会議をする、というシーンなのです。だから「風呂」というワードに敏感に反応する二人のシーンはないのです。
ここでポイントなのは原作の作戦会議イベントは、智花が昴の部屋に来るというドキドキベントではない、ということなのです。もちろん行間からは「二人きり」という意味は伝わってくるのですが、それでも本来は重要な作戦会議(スポ根)シーンなのです。
スポ根シーンを女の子が可愛いシーンにすり替えているわけです。


このように、単純にスポ根描写を削るだけでなく上手くロリ描写へと構成しなおしている点も素晴らしいのです。

ロウきゅーぶ! はスポ根作品

ロウきゅーぶは熱い作品です。まごうことなきスポ根作品です。
@iwriさん曰く、



は、間違いありませんでした。

@iwriさんがなぜ「謎作品」と仰ったのかといえば一見「ロリ作品」に見えるからです。下の原作表紙画像を見てスポ根作品だと思う人は少数派でしょう。


ロウきゅーぶ! (電撃文庫)
ロウきゅーぶ!   

ロウきゅーぶ!〈2〉 (電撃文庫)
ロウきゅーぶ!〈2〉

ロウきゅーぶ!〈3〉 (電撃文庫)
ロウきゅーぶ!〈3〉

ロウきゅーぶ!〈4〉 (電撃文庫)
ロウきゅーぶ!〈4〉




またロウきゅーぶ! はスポ根アニメ!という記事に頂いたid:k23095さんからのコメント、

記事の前半に書いてあるとおりだと思います、スポ根作品です。
小説は感動できる人には感動できるほどの良作だと思います。

小説の方が心情が分かりやすいですし、私は1巻で涙が出てきました。


も、事実でした。
特に、小説の方が心情が分かりやすいですし
原作を読んでからアニメを見直すことで様々な発見がありました。


ここからは、原作を読んでからアニメを見た際に気づいた、主に心情についてのシーンを幾つかピックアップしてみます。

原作とアニメの心理描写等々の違い

フリースロー10本勝負

フリースローのシーン、アニメでは昴の心情が「言葉として」殆ど描かれません。せいぜい「内面に」とか「俺の理想は…」のみです。しかし原作では、昴の熱い想いがドバドバーっと書かれています

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ロウきゅーぶ!,pp144.

「三本目成功でーす!」
またダメ。ベストなイメージと像が重ならない。
だが、今回は収穫有りだ。
思うようなシュートが打てない理由は分かった。フリースローだという固定観念に縛られていたのがいけないのだ。セットシュートでは届かない。
目指すべき理想は、地に足を置いたセットシュートではなく、自ら宙を捉えに羽ばたくジャンプシュート。
次こそ肩を並べてやる。構えは先ほどと同じ。だが今度は踏み込みを強め、飛ぶ!


その中の一節を引用したものですが、アニメとは情報量が違います。もちろんアニメからも昴の葛藤を読み取ることができるのですが、5ページ程度の原作の描写に全くかないません。
さらには、原作には明確に記述されているある心理描写が、アニメだけでは読み取りにくいこと山のごとしです。
そもそもこのフリースローシーンは、昴が自分のもやもやにケリをつけるシーンです。昴が何度も何度も智花のシュートシーンに心奪われた描写がありましたが、それに対する答えがこのイベントです。
ある心理描写とは、以下の部分です。

ロウきゅーぶ!,pp147.

自分の理想だと思い込み追いかけたものの正体は、そこにあった。
像が重なるはずもなかった。俺は、あの子じゃ――智花じゃない。


フリースローを通して自分のフォームの違和感に気づく昴。そう、智花のシュートフォームを真似して(理想として)シュートを放っても、自分の理想のフォームには届かなかったのです!
何と素晴らしいシーンか。引用した上の2行は、物凄い感情がコメられている心情描写なのですよ!
アニメだけでこの昴の心情を読み解けた人は凄いし、もしアニメで分からなかった人は是非原作を読んでみて欲しい。凄く熱いです。


アニメで昴の心情を分かりやすく描写しなかったのは、スポ根に寄り過ぎてしまうからだと思います。あくまで昴の心情は、表面的な描写に止め、視聴者に想像させようという意図が見えます。
この意図については、以下のシーンでも分かります。

真帆が昴に背中から抱きついたシーン

アニメ1話、練習メニューについて智花と昴が話し合っているシーンで、真帆が昴の背中に抱きつく場面があります。


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アニメでは昴が顔を赤くして少し恥ずかしそうにしている描写なのですが、原作では以下のように心情が書かれています。


ロウきゅーぶ!,pp107.

隙を突くように突然首筋に腕らしきものが回され、誰かが背中へおぶさってくる感覚に脊椎が逆エビに固まる。…
うーん、小学生相手に細かいこと気にしすぎなのか、俺。真帆の行動を基準にするとそんな気もしてくるが、この子が幼すぎるだけ、という可能性も大いにあるので非常に判断しかねる。
……悩ましい。距離感が一向に掴めない。


ほんの一言、昴の心の声で「距離感が掴めない…」なんて言わせればよいだけなのに、昴が顔を赤くさせるだけ。視聴者に想像させようという意図が見えます。

智花の微細な心情

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この画像は、アニメ2話で昴が今後のコーチを引き受けるのを断った後に智花が3日目の残り時間のコーチを頼むシーン。もうコーチを引き受けてもらえないという絶望の中、今日一日だけでもお願いしますと、智花が笑顔で頼むのです。
アニメでは智花の笑顔でシーンが切り替わりますが、原作では「……わかった」という昴の返事が心情描写を付随して書かれています。アニメでは意図的に昴の心情を描いてないわけです。
アニメだけでも昴の心情を想像することは可能ですから、厳密にはストーリー上カットされたわけではありません。しかし智花のカットで切ることで、視聴者に智花寄りの感情を持たせたかったのでしょう。「智花、可愛そう…」と。



まとめ

制作者側はロリを強調することで視聴者を惹きつけたいと思っている、そのために昴の心情描写に関してはできる限り排除し視聴者に想像させる構成にした。出来る限り女の子を主体に描くことに重きを置いたわけです。
スポ根描写や昴の掘り下げが浅くなり「スポ根アニメ」としての色は薄くなりました。ただし完全にスポ根が消え去ったわけではないので、「ロリスポ根」という評価をつくりだすことに成功したように思います。
多分にロリ寄りですが。

細かい気の配られたシーン

挙げだすときりがないのですが、後2つほど原作とアニメの照らし合わせをさせてください。


真帆と紗季はライバル同士

原作を読んでいなくても、アニメだけで二人の関係性は概ね見えてきます。二人はお互い口うるさくしているのだけれどそれが競いあう形になっていて、良いコンビであるということです。
所々に二人が言い合うシーンが挟まれているので印象に残っている方も多いでしょう。中でも、以下のシーンはとても分かりやすかったと思います。

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紗季「そんなことない、私だって」

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真帆「ほうら、私のほうがやわらかーい」



実は、原作1巻では二人が柔軟するシーンがありません。つまり、二人の関係性を強調するために挟まれたオリジナルシーンと思われます。

ストーリーをサクサク進めることを優先しているために、各キャラクターの掘り下げを犠牲にしている節があるロウきゅーぶですが、細かいところでフォローされています。スタッフの愛を感じます。



紗季がアイガードを触るシーン

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この画像は2話において、女子バスケットボール部ができる経緯を智花が話すシーンです。
紗季の入部に関してアニメでは「真帆が上手く説得してくれて」というセリフで終わります。しかし原作では、真帆が紗季に度付きアイガードを買ってあげて「もう作ったから、責任とって入部しろ!」旨のことをいうのです。なんとまぁ、ほっこりするエピソードでしょうか。
このエピソードを挟むのは尺の関係で難しかったのでしょう、しかし完全に省くのではなく、上画像のように紗季にアイガードを触らせる絵を挟むことで達成しているのです。
原作既読者にとっては非常にニヤッとできるシーンなわけです。こういった細かい所まで気を配っているのを見て、制作者側の愛だなぁ、と強く感じるのでした。

最後に

アニメではストーリをサクサク進ませることに重点を置いているせいかスポ根部分が見えにくいのですが、ロウきゅーぶは間違いなくスポ根作品ですし、熱い作品ですもちろん、小学生も最高です。
また原作を読んでからアニメを見ると、本記事のように新たな発見が沢山見つかるので益々作品を楽しめること請け合いです。
アニメも面白いし原作も面白い、両方見れば更に楽しめる、よいアニメ化だと思います。
アニメを見て気になった方には、原作をおすすめいたします!