隠れてていいよ

主にアニメや漫画の感想を書いています

今期アニメのベスト演技賞は『偽物語』の三木眞一郎さんと白石涼子さん

今期はモーパイやアクエリオンEVOLといった2クールものが幾つもあるので、まだまだ「今期アニメ」と括るのは早計かもしれませんが、しかし素晴らしい物は仕方がないので、書きたい。



タイトルに挙げたお二方が出演しているアニメ、それは『偽物語』です。
お二人が演じているキャラクターは、本作品にただ出演しているだけでなく、主軸となった2つの話、「かれんビー」と「つきひフェニックス」における「悪役」ポジションに居ます。

なぜベスト演技賞なのかというと、「かっこいい悪役」を素晴らしく演じきっておられるからです。三木眞一郎さんは「貝木泥舟」というキャラクターを、白石涼子さんは「影縫余弦」というキャラクターを。本当に底が見えない「貝木泥舟」、圧倒的な暴力でねじ伏せる「影縫余弦」。
人物として完全にキャラが立っている、いや、キャラが現実に存在するかのような圧倒的な存在感、雰囲気、空気。
この二人の一挙手一投足の動作――喋り方、会話の持って行き方、思考の流れ、立ち振舞い――全てが印象に残る、強い力を発しているんです。

本作品の主人公である阿良々木暦戦場ヶ原ひたぎと同等、いやそれ以上に強い存在感を持つ、凄いキャラクターたちです。


さて、「ベスト演技賞」などと書くと「声優とか全然興味ないから」と突っぱねる方もいらっしゃるでしょう。しかしそうではないんです。
どういうことか。それは私が、アニメを見ている時は、声優の名前は殆ど意識せず見ているということです。
ダメ絶対音感とか、特徴的な声をお持ちの声優さんという話ではなく、アニメの視聴においては、声優さんではなく、キャラクターに没入できることが素晴らしいことなのではないか、と思うのです。
つまり先に「キャラクター」があって、その後に「声優さん」が続く、ようなイメージ。

もちろん全ての人や作品に言えることではありません。例えば特定の声優さんを応援しておられる人にとっては、「◯◯さんが演じているキャラクター」となるでしょう。実際、私もそういう声優さんはいます。

しかしそうは言っても、やはり基本は「キャラクターがあって、そして声優さん」だろうと私は感じています。異論はあるでしょうけれど。


さて、そういう意味で、今回紹介した「貝木泥舟」と「影縫余弦」というキャラクターは、「貝木泥舟」と「影縫余弦」という個が、完全に成立しているんです。それぐらい、キャラクターが際立って立っているんです。そしてその感覚、すなわちキャラ立ちを支えているのが三木眞一郎さんと白石涼子さんというお二人のの声優さんであり、演技が素晴らしい、ということが言いたいのです。
貝木泥舟」と「影縫余弦」、この二人ならいくらでも画面を眺めていられる、そのぐらい私はハマってしまいました。

偽物語』全体を通して

さて、偽物語の作品についても触れておきます。上で述べた話と少し関連しています。


偽物語』という作品は、「何も考えずにただ見ているだけで楽しいアニメ」を体現していると思います。以前、その気持ちは、どうしようもなく偽物なのだとという記事でも触れましたが、「伏線が張ってあるといった深い部分もあるのだけれど、しかしそれを思いっきり深く理解してなくても楽しめる」、というのがミソだと思います。例えば、貝木泥舟影縫余弦といったキャラクターのやり取りを見ているだけで楽しい、というのも一つです。

それは内容が無いとも言えるのではないか、と仰る人もいるでしょうが、裏を返せばいろいろな楽しみ方が出来ることでもあるのです。新房・シャフト演出を映像的に楽しんでもいい、繰り広げられる会話劇を心地よく聞いても良い……しかし深くストーリーに入り込み、物語シリーズを読み解こうと<してもいい>。


偽物語』という作品を、ただただエロい作品だと感じるのもいいし、月火ちゃん可愛いなぁと思っていてもいいし、「キメ顔の嬢ちゃん」という言い回しがツボに入っていてもいいんです。どんな見方にしても、肩肘張らず、素直に見れる、そういう作品だと思うんです。

というわけで偽物語は、ただただ何も考えずに楽しんで見るという話で言えば全く文句のつけようがない。「皆が何気なくテレビをつけたら何気なくやっていて、何気なく見れるアニメ」というジャンルとしてはもう完璧なのではないかと思う。ジブリの「ような」アニメだけが、誰もが見れるアニメではない。

その気持ちは、どうしようもなく偽物なのだと

ちょっと持ち上げ過ぎじゃない? とか言われそうですが、実際、今期で一番見返した作品なんですよね。強いられるどころか積極的に幾らでも見たくなる作品というのは、とてもとても貴重だと思います。
今期では、そんな作品が私の中では『偽物語』でした。

終わりに

現在、原作『化物語』[上]を読んでいるのですが、こちらも私の肌に合うようで、楽しく読んでいます。アニメを見た方には、原作もお勧めします。

化物語』[上]は約440ページの二段組で、1ページの文字数は23文字×18行×2=828文字ですから、単純計算828×440ページ=約36万字となります。もちろん改行や会話文等々で、実際にもっと文字数は少ないです。しかし何より、文章のテンポが非常に面白く、たんたんたん、とリズムよく読むことができます。サクサク読めます。アニメ『化物語』を視聴された方ならなおさらでしょう。

このあたりのテンポみたいなものが、西尾維新さんの特徴的な文体なのかなぁ……と、西尾維新さんの活字での初めての作品が『化物語』な自分が申しております。