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映画『君たちはどう生きるか』 初見感想

宮崎駿監督のアニメ映画最新作『君たちはどう生きるか』が2023年7月14日から公開されています。
公開初日には見に行けませんでしたが、翌日15日に見てきましたので初見感想を残しておきたいと思います。


なお本記事にはネタバレが含まれますので、未視聴の方はお気をつけいただければと思います。

君たちはどう生きるか

一度見ただけでは、結論じみたものを出せませんでした。考えさせることが多すぎるので、まとまりきらないのが正直なところです。
感じたことをそのまま書く感じになりますが、よければお付き合いください。


さてジブリ映画に限らず、普段映画を見に行くときは事前情報を一切シャットアウトして行くのですが、本作品は公式が情報を出していないため何もしなくても情報は入ってきませんでした。
特徴的な鳥の絵だけが頭に残り続けていて、本当に内容が想像できなくて、はてなの状態で見始めました。


冒頭、舞台が日本であり、戦争中の背景と分かったときは少しだけ疲れそうになりました。
というのも、時代背景的に明るい話題が振りまかれることがないんだと分かってしまったからです。
家が裕福だろうが無かろうが、戦争という避けられぬものが横たわっているので。

主人公の眞人は、母親が入院している病院が炎に包まれるのを目の前にして何もできなかった自分を数年経っても悔いていました。

明示的に描かれるので印象に残っている人も多いと思いますが、父親の再婚相手である女性のお腹にはすでに新しい命が宿っていることが分かるシーンは、分かっていても辛いシーンで、眞人が母親のことを忘れるどころか夢に見て今でも涙を流してしまうほどだということが分かります。

間接的なNTRシーンであり、人によっては興奮するシーンでもあります。こういうシチュエーションをちゃんと挟んでくるところが宮崎駿さんらしい気もします。

意識的なのか無意識的なのか眞人は感情を出さず良い子を演じようとしていますが、一方で自分のテリトリーに入ってきてほしくない故なのか自分自身で石で頭を傷つける自傷行為も行います。
このあたりのシーンでは、眞人がどういう人間なのかを必死に理解しようとしながら見ていました。

構ってほしいわけではなさそうだし、新しい母親を受け入れる気はまだ無さそう。とにかく心を殺して今を生き続ける、そういったものかなと思っていました。
一方でアオサギから実の母親のことを話題に出されると取り乱し、弓矢まで自作してなんとかしてやろうと行動する気概も見えました。
火事で亡くなった母親に対して何もできなかった自分を後悔する気持ちをどこかに向けたくて、行動しているように見えました。


その後、塔から別世界へと誘われた先で、眞人はナツコを探し出し元の世界へ連れ戻すことを強く願い始めます。
実の母親の幼き頃の姿をした人物と出会い、料理の味に涙することもありましたが、それは一瞬で、新しい母親を受け入れようとする強い力が見えました。

なぜ眞人が新しい母親を受け入れようと思ったのかの答えを考えるのが、とても難しかったです。
眞人がナツコを当初受け入れなかったことと同じように、ナツコも眞人が受け入れてくれないことを悲しく思っており、それを感じ取った眞人が気を使ったようにも見えますが、実際のところは、眞人が実の母親と同じ結末にしたくなかったのではと推察しています。

元の世界へ一緒に帰る、今度こそは自分の力で連れ戻すのだという強い思いが途中から見て取れたからです。
事あるごとに「連れ戻さなければ!」と口にしていたことが印象に残っています。

眞人は、実の母親への想いが吹っ切れたわけではないと思います。でも同時に、自分の力で同じ過ちを繰り返さないように行動ができた成功体験もできたと思います。
これは、実の母親とキリコさんが元の世界に戻ろうとする際に、行かせたくないという気持ちは持っていたものの「あなたを産みたい」旨のことを言った母親に対してそのまま行かせたことからも感じました。あっさりなほどに。

心情は詳細に語られず、口から出た感情のこもっていない言葉で説明されるので、理解が本当に難しい。
口に出した言葉は偽りで、真意を探ってみなさいと言われているようで、全編通してそれを言われているような気がしました。

表現

絵や表現が綺麗であることは全編通して感じたことですが、特に印象に残っているのは、異世界にて飛び石を渡るシーンでした。

このシーンを見た時本当に贅沢だなと思いました。
眞人や実の母親、将軍などそれぞれが石を渡るのですが、渡り方を特徴的に描いているのが贅沢過ぎます。

ここを渡るシーンそのものはさほど重要ではないと思っているので、全員分を描く必要なんて無かったと思います。
にも関わらず、渡るときの歩幅や性格も反映してなのか、とてつもなく丁寧に描かれており今でも頭の中で思い出せます。

本来描かずとも問題がない機微を尺を取ってでも描くのは、贅沢だと感じてしまいます。
こういうところに、表現したい何か、譲れないなにかを強く感じることが自分はできました。

終わりに

あちらの世界の概念、死生の捉え方……考察しがいのあるものはたくさんあります。
ただ、自分は一度見ただけでは、考察に値するまでの考えを至らせることができませんでした。

それは何度も述べているように、考えさせられることを最初から最後まで強いられていたからだと思います。
初めて読むファンタジー本の設定を一つ一つ理解しながら読み進めるのは時間がかかるけれども、映画は自分のペースでは読めないのでどんどん分からないことだけが頭の隅にスタックしていく感じ。

もう一度見れば理解が深まるところは多そうなのですが、果たしてもう一度見に行くだけの気力が出るかは自分と応相談です。