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映画『すずめの戸締まり』感想 人生のターニングポイントに新海誠さんの作品がある

2022年11月11日、公開初日に『すずめの戸締まり』を見てきました。
ネタバレがありますので、未視聴の方はお気をつけてください。

感想

見終わった後の気持ちは、なんとも言えない感じで、相変わらずふわふわさせてくれるなと思いました。
新海誠さんの新作の映画を初回に見に行くときは、自分の中で人生のターニングポイントを迎えていることが多かったなと思い起こすのですが、詳細は書けないものの今回もそんな感じでの面持ちで見ていました。

だから、見ている最中は、そういった自分の人生のことを別軸で考えてしまうのですが、逆にそうやって別軸で考えられるほど作品が強度を持っていると毎回思うのです。

新海誠さんの作品に限らず、良いコンテンツを見ている時というのは、それを楽しんだり悲しんだりしていると同時に別のことを考えられるのです。

そして、でも本編を見ていないわけではなく、めっちゃ見ているわけです。必要以上に感情移入もしちゃいます。
今回一番ゾワッとしたのは、主人公の地元宮城で、実家跡近くの扉を発見したシーン。あー、そりゃあるよなぁって思ってたと思うんですけど、やっぱりあるんだなって、しかも佇んでいたのではなく横に倒れていたというのが最高にエモい。言葉にしにくいのですが、あああああ、って心の中で叫んでしましました。

今回一番心に来たのは、親代わりで育ててくれたおばさんが本音を吐露してしまうシーン。そして、吐露した後に、そう思っていることと同時にそうじゃない、と言ったこと。世の中綺麗事だけじゃない、だけど言いたいことはみんなある、そしてそれをずっと言えずに抱え込んでいてしんどい思いをして、長い時間をムダにすることもある。そんな気持ちが、わずか1分にも満たなかったと思いますが、その中のセリフに、やり取りに凝縮されていて、心を打たれました。
嫌なこと言っているなとかそういう感情とかが先行するのではなく、まずは、あぁ、辛かったよなぁっていう気持ちになってしまいました。このあたり、自分がまだ社会人になる前の頃では絶対に感じえなかった感情なのではという気持ちがします。

ストーリー

日本そして、地震という災害を「閉じ師」と呼ばれる役割で言語化したのが本作品でした。
冒頭、船が家の上にあるという描写がありました。
この描写を見て、以前よりはショックを受けない自分を見て、良くも悪くも感情を抑え込めるようになったのかもなと思いました。

2011年12月にコミックマーケット81が開催され、そこで私はサークル参加をしました。文章系同人誌を頒布し、その中で「未来少年コナン 十九話「大津波」」というトピックを書きました。

未来少年コナンの該当話では、船が丘の上にある、という描写があります。これは津波という恐ろしさを表す描写で、「作品の中で見た描写」が現実でも起き得るんだということに当時ショックを受けました。

そういう原体験があったので、今回船のシーンが映った時に一瞬胸がドキッとしました。しかし、感情はうまく押さえられました。
良くも悪くも、自分の中で津波というもの、地震という災害が風化していたのかもしれません。ずっと考えているとしんどいので、どこかで区切りをつけてあえて蓋をする、ということをしていたと思いますが、今回否が応でも災害、地震津波のことを思い出さなければならず、しんどかったのですが、しかし作品としてこのテーマが扱われても、自分の中で向き合えるんだなと改めて感じさせられました。

テーマが災害で、地震で、宮城が地元なのだから、これは明確に意図を持って選ばれたものではあるのですが、あくまでストーリーの中の一つの要素であるという捉え方もできなくはありません。
主人公にとっての重要な場所が宮城であって、そこで発生した災害が地震であって津波であった、そういう装置として使われただけ、という考え方です。
もちろんそんなことはないのですが、そういう考え方もできるように上手くストーリーがラップされていたように私は感じました。
もちろん、実在した災害に対して感情が動かないわけがありません。色々考えさせられました。
同時に、この作品は別に宮城の災害のことを忘れないでほしい、という思いで作られたわけではないのではないか、という気もしました。本当かは分かりません。もしかしたらすでに答え合わせされているかもわかりませんが、自分はとりあえずそう思った、ということです。

つまり何が言いたかったかというと、とても物語に入り込めたということです。冒頭と矛盾していることを言っているかもしれませんが、作品に入り込むことができました。

ボーイミーツガール

は、もう自分には辛いのかなぁと思っていたのですが、それはストーリーの強さに上手く丸め込まれたなぁという気もしました。もし、ただイチャイチャするだけの作品なら自分はもう無理だったのですが、草太さんはほとんど椅子だったので、そういう意味でも鈴芽の物語だということをきちんと理解できた気がします。
でも椅子にキスをしたのは許さんぞ、と思いながら見ていました。良いですね、ああいう直接的ではない描写。

そういえば、椅子に馴染んできたぞって草太が言うシーンは多分一番笑ったシーンかもしれません。馴染んでいいのかあんた! ってみんな総ツッコミしたでしょう。良いシーンでした。

終わりに

実はまだまだ書きたいことはあるのかもしれないのですが、まずは新鮮な自分の気持ちを書きました。
2回目見に行くかはまだ分かりませんが、多分見に行く気がします。
爽快感があるというよりは、じっと考えさせられる新海誠さん作品でした。


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