「囚われのマリオネット」に続いて、ニーゴのキーストーリー「満たされないペイルカラー」を読みました。
25時、ナイトコードで。 カテゴリーの記事一覧 - 隠れてていいよ
本ストーリーは東雲絵名の掘り下げストーリー。やっときたか、という感じ。
ニーゴのストーリーはまふゆメインで描かれているように見えて、まふゆ以外のメンバーの問題も根深いことが分かっていましたが、まずは絵名についてキーストーリーで描かれました。
両親が才能をもつがゆえに残酷さを知っていて子供に茨の道を歩ませたくない、という構図は見ていて辛くなる話も多いので比較的解決の兆しが見える本作は少しだけほっとしました。
とくによかったのは絵名の問題の解決への道筋が、ニーゴのメンバーだけではなく家族内からももたらされたことでした。
彰人と父親とのやり取りは、とくに心打つものがありました。
絵名の父親は本当に不器用な人ですよね。
本人は「父親」として絵名に接することができていると思っているのに、実際はプロの画家として指導するような形になってしまっている。
それを、彰人に指摘されてはじめて気づいているんです。父親が掛ける言葉は、そうじゃねーだろうと。
でもよ、今の絵名がほしいのは、
もっと単純な言葉なんじゃねえのか
絵名は、親父と一緒で、絵が好きなんだよ。
好きなことで才能がないっていわれたら、傷つくのは当然だろ
画家としてじゃなく父親として――
もっと単純に……あいつの絵を見てやれよ
リンからは「誰かに認めてもらえないと、キミの絵は存在しないの?」といわれますがそんな難しい話じゃなくて、一番身近な「家族」に自分の絵を見てもらいたい、まずはそれなんですよね。
常に父親から監視されているような中で、成果も出ず、暗中模索する絵名は相当に辛かったのだと思います。
ただ、絵名にとって現実の辛さを忘れられるSNS、そしてニーゴという居場所があったことは救いだったのだとは思います。
本当に辛いときは目の前にあるものだけに囚われてしんまい、なくなったらすべてが終わる自分も終わる……そういう思考になりやすいのは自分も経験があります。
こういった精神状態のときは問題を自分の中に抱え込みやすく、心が負けちゃうことが当たり前にあるんです。
だから、辛さが全部なくなるわけではないけれども、助けを求められる場所が別の場所にあったということは、とても良いことだったと思います。
ニーゴのみんな、セカイのみんな
家族だけではなくニーゴのメンバーもミクやリンももちろん、絵名に取っては心強い存在だったでしょう。
たった一言でも、自分の絵を好きだと言ってもらえることがどれだけ幸せでしょうか。
ミクは本当に優しいなぁと思います。
しんどいときって、一人になりたいけどなりたくない、ただただ近くで寄り添ってもらえるだけでいい、そういう気分のときもあります。
ニーゴのセカイのミクは顔の表情こそ乏しいものの、セカイにやってくるものに対して慈愛の天使かと思うような対応をしています。
相手のことを深く強く考えて行動しようとする、その点がずば抜けていると思っていて毎回唸らされます。まふゆのときから一貫しています。
もし、あの歌を聴いて何か感じたなら、
奏達に会いに行ってほしい
なんだかんだ、歌が解決の力になる流れも好きです。
胸キュンシーン
『――私も行く必要、ある?』
まふゆの、間違っていないけどドライな行動理念が好き。寄り添うって難しい。
吐露
誰かに認めてもらわないと描き続けられない自分が、大嫌い……!
自分の一番さらけ出したくないところを伝えられる、その一点を持ってしても絵名は強い。
同時に、さらけ出せるよい仲間に恵まれたと思う。
絵名ならきっとこの先も強く生きていけると思う。
絵名の絵が好き
そんなんじゃないって!
お父さんとか、絵名のいう『誰か』は認めてくれないのかも
しれないけど、少なくともボクは、絵名の絵が好きだよ
「絵名のいう『誰か』」という表現がとても好き。
瑞希の言葉は一見きれいごとのように聞こえることもあるけれども、そうじゃないと思います。
瑞希の過去は全部描かれたわけじゃないですが、瑞希も現在進行系で同じような問題に悩んでいると推察しています。
そういう見えにくいバックグラウンドも感じつつ、瑞希のセリフを読み解いていくと、とても感じ入る素敵な言葉だと思います。
惚れる
絵名、認める人が必要ならわたしが認める
もしかしたら本ストーリーで、奏のこのセリフが一番好きかもしれないです。
「認める人が必要ならわたしが認める」こと自体が重要ではなく、奏には、そしてニーゴには絵名が必要なんだと強く訴えていることが、心の底から感じられるのです。
奏は、発する言葉ひとつひとつに強い気持ちが人一倍込められているように感じます。
惚れる part2
誰かに認められたいなら、
認められるまで描けばいいじゃない
どうせ私達は、作り続けなきゃいけないんだから
それはそうかも知れないけれど……と絵名も思うものの、最後のまふゆの言葉が背中を押したように思う。
絵名は「ごちゃごちゃ考えすぎていた」というふうにいうけれども、なんというか、会話をする中でそのごちゃごちゃが優しく融解していった感じ。
瑞希、奏、そしてまふゆの言葉が絵名の背中を後押しする、素敵なシーンです。
描き下ろし楽曲の素晴らしさ
『限りなく灰色へ』
作詞:すりぃ
作曲:すりぃ
人並みの感想ですが、描き下ろし楽曲として最高すぎます。
歌詞ももちろんいいのですが、曲調そしてMVの灰色からカラーへの演出が憎い。泣きそうになりますね。
灰色、色をモチーフにしているためこのような変化を与える演出は「よくある」演出なのかもしれないですけど、絵名をはじめとしたキャラクターやキーストーリーのバックグラウンドが加味されて、涙がでそうになるんですよね。
緩やかだけども動きがあるダンスも好きだし、最後のキラッと光る瞬間も好きだったり。
なんだろう、プロセカに限らず楽曲ってそれ単体でも好きなものがたくさんあるのは事実なんですけど、主題歌のように、その作品ゆえの内容が反映されたものだとより感情移入できてしまうというか。
プロセカの、描き下ろし楽曲を入れ込むストーリー作りのやり方が、めっちゃ好きです。