隠れてていいよ

主にアニメや漫画の感想を書いています

坂柳有栖はスタートラインに立つことができたのか――ライトノベル『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編11』初見感想

4ヶ月ぶりに最新刊が発売されました、ライトノベルようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編』の初見感想を書いておきたいと思います。

過去記事:ようこそ実力至上主義の教室へ カテゴリーの記事一覧 - 隠れてていいよ


後書きで作者の衣笠先生がおっしゃっていたように、普段よりはまったりしたイベントが多い内容でした。
一部がバチバチにやりあっていたり悩んでいたりすることは変わりないのですが、退学者という概念がある以上は、それがない状態は平和といえるでしょう。

よう実の傾向として、本格的な退学者戦争が行われる前段階は凪の状態となり、その後また大荒れになるというものがあります。今回の11巻もそれだったと捉えることが正しい解釈なのかなと自分では思っております。

11巻のポイントは間違いなく、坂柳と龍園の直接対決への布石にあるでしょう。とくに坂柳の復活がないと真剣勝負にならなかったので、綾小路が意図的かどうかはわかりませんが介入し改善させたことで、勝負のテーブルに付くことができる状態になりました。

何巻か忘れてしまいましたが、坂柳と綾小路の直接対決がゲームを通してではあるものの描かれた際に、若干の残念さを感じたので今後描かれる坂柳と龍園の直接対決には不安がないといえば嘘になります。
若干の残念さとは、あまりにも直接的すぎたというか、坂柳の想いがあまりにストレートに描かれすぎていたことと綾小路上げが露骨すぎたことにありました。

綾小路清隆という存在は規格外すぎて、扱いを間違えると一瞬でバランスが崩れてしまいます。これは作品内のストーリーではなく、メタ的な、我々読者が感じるバランスの方です。
結局我々はどこか、綾小路が圧倒的な力で他社をねじ伏せる展開を望んでいると思うのですが、綾小路の実力が一定数知れ渡ってきている今の状況だと、以前のように力の一端を見せるだけでは足りなくなってきているのです。
すなわち、龍園との初バトルで見せた綾小路の実力やその一連のシーンのあまりの爽快さに今でも読み返したくなるときがありますが、一方で今同じことをやってもつまらないのです。

というような心配を私は勝手にしているので、ここ最近の新刊ではそういう視点で読んでおり直近の感想でもタイトルにいれるぐらいでした。
thun2.hatenablog.jp

勝つのは龍園か?

二人の契約が、いずれかの退学者を出す内容である以上はいずれかが去るのでしょうが、負けるのは坂柳なのだろうという予感があります。
坂柳が当初から、作品内でもメタ的視点でも評価をある意味では落としていることに対し、龍園の評価は私視点では下がっていません。

龍園は実は強さや残忍さと同時に弱さも描かれているキャラクターで、それをキャラクター本人が自覚してそれすら克服してやろうと考えているところがおもしろいのです。
一方坂柳も自身の弱さをある程度自覚しているものの、ひとりの人間として御しきれない部分がある、感情的な部分の弱さが常に露呈していたことはここ数巻で描かれたとおりかと思います。

坂柳覚醒ルートも残っているとは思いますが、やはり坂柳が勝って龍園が負ける姿がほとんど見えないというのが今の私の思うところではあります。
坂柳は、綾小路が理想とする状態を崩すかもしれないというような心配をしている時点で勝負の前から負けている気がするのです。

とはいえ、勝負は盛り上がるでしょうからワクワクして待っているのは事実で、相変わらずこの長編になってきても次巻を楽しみにさせてくれることが素晴らしいを思います。
願わくは、後書きに書いてありましたとおり、衣笠先生には健康にお気をつけていただいて、執筆活動いただけたらと思っております。

我々読者からすると待つことが仕事のひとつですので、まずはしっかり休んでいただいて、その後に、続きを書いていただければと。
数年単位で待たされることに訓練されている読者より。