隠れてていいよ

主にアニメや漫画の感想を書いています

『鏡のなかの鏡』 読了

ミヒャエル エンデが書いた作品『鏡のなかの鏡』を読了しました。
詳しい感想などはまた別途書くとして、まずは読み終わっての最初の気持ちを書き残しておきたいと思います。

エンデとの出会い

エンデの作品との出会いは、中学生の頃にある習い事の先生から勧めてもらった『はてしない物語』でした。
ハードカバーのあの特徴的な装丁には、中学生ながらにワクワク感を持ちながら読んだものでした。
ファンタジーが好きだった私にとっては大好物で、当時どこまで理解できていたか分かりませんが中々のペースで読み終えた記憶があります。

その後、高校生か大学生の時に『モモ』を読みました。何故読み始めたのか記憶は定かではありません。
詳細は忘れてしまったものの、心に残っている作品で、人に勧めることもあります
(詳細を覚えていないのにと思われるかもしれませんが、気に入った本でも案外そういうことあります。心に残っているのですよね)。

さて、当初は私にとってエンデは小説家であり児童文学作家であったのですが、私にいろんな意味で強く影響を与えてくれたとある人の影響で、エンデは哲学者というイメージに変わりました。
作品にはエンデの強い思想が現れている、というようなことをおぼろげながら理解していったように思いました。
お金・貨幣・金融システムといったようなものがとりわけ自分の中では印象に残っていて、エンデをきっかけに貨幣の本をそれなりに読んだ記憶があります。

そんなこんなでエンデのことは知っていて、他にどんな作品を書いているのだろうと調べたことも当然あって、その際に『鏡のなかの鏡』も知りました。
ただ、今になって読了したことから分かるようにずっと手を出してはいませんでした。おそらく特に深い意図はなかったと思います。

そして作品を知ってから10年以上経って、ひょんなことから本作品を薦められる機会があり、改めて読み始めて読了したに至ります。
本との出会いは、この作品に限らずですが思いがけないめぐり合わせの連続だなと思います。

『鏡のなかの鏡』

本作品は原文が日本語ではありませんから当然翻訳されているのですが、そのせいもあってとても読みにくいというのが正直な最初の感想でした。
技術書のオライリー本の翻訳が苦手な私ですが、翻訳の独特の固さというか繋がりが見えにくい感じが慣れないのです(全ての翻訳本が苦手というわけではありません)。
昔より読書力的なものは向上しているという自負はありましたので、読み進めることはできましたが、それでも頭を痛めながら読んでいました。

翻訳の難しさは抜きにしても『鏡のなかの鏡』という作品は、1つ1つの短編の内容が示唆的で頭を使います。示唆的というのは何を訴えたいのかという思想的な部分だけではなく、描写が重厚だけどシンプルで想像を働かせるのが難しいという意味もあります。

本を読む際に、どこまで想像してどこまで理解して読み進めるかは人によって違うと思いますが、私の場合、逐一全てを想像するわけではないものの、ある程度の理解はして進めたいと思っています。
もちろんすべてを理解する必要はないと思っていて、それこそ眺めるように読むこともあります。
とは言え、それは最低限理解ができているという前提があるわけで、何が言いたいかというと本作品はとても想像がしにくいのです。

舞台は当然現代ではありませんし現実でもありません。空想的なところに作り上げられた世界観が一気に押し寄せてくるのです。
その場所にはそういうルールが存在しているから、当然そういうふうに進んでいくでしょ、と言わんばかりにガリガリと描写が進んで行くので面食らいます。

でも読んでいると、なんとなく言わんとしようとしていることが分かることがあったり、表現の面白さに驚いたり、こんな作品の進め方って良いんだという感動があったりするのです。
新しい読書体験といいますか、そういう点に強く惹かれていました。

正直、1回通して読んだだけでは殆ど理解できませんでした。ただし「全てを理解できないけれども、何かが理解できた気もする」という不思議な読後感があるんです。
スラスラ読み進められない本をカロリーが高い本と表現することが多いのですが、本作もまさにそれで、一気に読み進めることができず、寝る前に少しずつ少しずつ読み進めていました。
ただ、今日最後の数章を読んでいたらページをめくるのが止まらなくなり、一気に読み切ってしまいました。

本は、本当に興味深いですね。カロリーが高くても急に読むのが止まらなくなることがあるんです。それほど本には強い魅力があるし、本作品もそうだったと思います。
繰り返しになりますが、特に今結論が出ているような感想が無くて、とにかく不思議な読後感を文章にしておきたかったのです。

終わりに

誤解を恐れず言えば、これまでの人生では比較的カロリーが控えめの本を読む事が多かったのですが、この半年くらいでカロリー高めの本を読む機会が多く
改めてその面白さというか楽しみ方の片鱗を垣間見れたような気がします。

最近久々に図書館に行って、海外小説も多く借りました。年末年始は久々に読書もしっかりしようと思います。