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綾小路上げの構図を鮮明に描く――ライトノベル『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編10』感想

2023年10月25日に発売されましたライトノベルようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編10』を読了しました。



2年生編と記載の通り、本作は1年生編が存在し全13巻で完結。そして続きの2年生編も12巻目となりました(ナンバリングと巻数がずれているのは、7.5巻のような閑話巻があるため)。
実質的に25巻続いているわけですが、ライトノベルで25巻続くのは相当な偉業だと思います。

25巻以上読んだことがあるラノベとなると『魔法科高校の劣等生』シリーズぐらいかもしれません。『とある魔術の禁書目録』もすぐに思い浮かびましたが、途中で脱落してしまったので。『ソードアート・オンライン』シリーズもそうです。そういえば『Re:ゼロから始める異世界生活』も15巻ぐらいで止まっていることを思い出しました。

ちなみに25回以上読んだラノベだと、片山憲太郎さんの『電波的な彼女』シリーズは間違いなく25回以上読んでいます。
大学受験時代に、勉強の辛さを読書で紛らわしていました。その節は大変お世話になりました。


さて、2年生編もいよいよ3学期に入り物語も終盤に入りつつある本作品ですが、簡易的な感想を残しておきたいと思います。
ネタバレを含みますので、その点ご留意ください。

綾小路清隆の向かう先

今更ですが、本作品は主人公の綾小路清隆を眺める作品だと思って読み進めていて、それは初期からずっと変わっていません。
チートキャラまではいかないまでも、あらゆる盤面を自分の想定通りに動かして操る姿からは負ける姿がなかなか見えず、安心してみていられる系主人公と言えるでしょうか。

このレベルのつよつよキャラはバランスをとるのが難しいのですが、主人公にも知らない感情がたくさんあるなど、人間らしい側面があることが絶妙なバランスを取る要因になっていると思います。

完璧な人間を作るという名目でホワイトルームで作られた綾小路清隆が、学校という教育現場で、関わる人間を成長させ最高のポテンシャルを発揮させる実験をしているのが興味深いです。特に2年生編はそれが顕著ですよね。

その対象が坂柳有栖にまで露骨に広がったのは、本巻のクライマックスだったと言えるでしょうか。ともすれば坂柳有栖の安売りにもなりかねない状況でしたが、一方で彼女も一人の人間だということを改めて感じられたところもあり、これまで以上に綾小路上げの構図を鮮明に描こうとする意図が見えます。


最終ページの綾小路清隆のセリフにもある通り、いよいよ準備が整いつつある状況です。
綾小路の最終目的は入学当時からは徐々に変わりつつあると思うのですが、現状は、人間がどこまで限界を発揮し成長できるかを試すことになっていると思います。
完璧な人間を作ることがホワイトルームそして父親の目的なのだとしたら、完璧ではない人間を完璧に近づけていくのが綾小路の目的のようにも感じます。
思春期の息子が父親に逆らっているような、壮大な親子喧嘩が描かれているという解釈もできなくはないのですが。


そんな綾小路は10巻の最後で以下のように言っています。

残された学校生活、周囲の記憶に残る存在になるための行動を始める。

ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編10』 pp325より引用

まず、このセリフ自体は、綾小路がひっそりと過ごして卒業しようとしていた当初とは正反対のことを言っているところがエモいという点で素晴らしいセリフです。
ここまで露骨に記載されたのは初めてだと記憶していて、冒頭にも記載した通り「終盤に入りつつある」と感じた理由でもあります。


もう1つは「記憶に残る存在になるための行動」という言葉です。
ただAクラスで卒業することは「周囲の記憶に残る存在」ではないと思います。なので「記憶に残る存在になるため」は、綾小路の本来の目的もしくはその目的のために必要なことだと推察されます。

記録じゃなくて記憶、なので定量的な数字で見えるようなものではなく、思い出のような心の中に残り続ける何かを目指していると推察はできます。
私はガチ考察勢ではないので、読み返すかもう少し時間をかけないとこれ以上の答えは出ないのが悔しいところではありますが、今回の記事ではこのあたりでやめておきたいと思います。

関係ないですが、1つの作品に対して、何も考えずに時間を投入しようと考えたときにふと立ち止まってしまうことが最近増えたのは年を取ったなと思うところです。

終わりに

よう実シリーズは紙媒体で読み続けている現状唯一のラノベなので、発売されると本当に嬉しいのですが同時にすぐに読み終わってしまって悲しくなります。
発売を継続的にしてくれるだけでも喜ばないといけないことは分かっているものの。


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